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【ひとり旅・一気読み】第5次本州紀行~小樽→新潟→酒田→青森→北海道 ※ホテル禁止


0.はじめに

※この記事は連載記事「第5次本州紀行」をまとめたものです。

船旅にも慣れてきたので、今回は日本海航路で本州の新潟を目指すことにしました。毎日運行ではないので、スケジュールが上手く噛み合った日を狙って計画を実行。本州滞在は1日で、ホテル泊は禁止。そのまま青森からフェリーで帰ってくる強行軍です。


1.北海道脱出編「消耗」

かつて「北のウォール街」と呼ばれた街がある。
町の名は、北海道小樽市。かつて北前船の寄港地として栄え、北海道最初の鉄道・手宮線が通った街だ。現在でも函館本線、札樽自動車道、後志方面へのバス、日本海航路が通る交通の要衝となっている。
今回の旅はそんな小樽から始まる。
出航は17:00だが、始発列車で小樽築港に向かう。
なぜかといえば、JR北海道のイベント「ヘルシーウォーキング」が開催されるためである。
街を歩いてポイントを貯め、プレゼントに応募できる企画で、JR東日本の駅からハイキングのようなイベントだ。
このイベントについては別の記事で語るとして、時計の針を出港直前まで進めることにしよう。

小樽築港駅。ウィングベイ小樽のすぐそばにある。

ウォーキングコースは傾斜がきつく、体力を消耗した。
港付近のマックスバリュで食料品を購入し、出航手続きまで待機する。
フェリーターミナルは意外と静かだ。まあ、3会社が乗り入れている苫小牧よりは人が少ないのだろう。

44.7
小樽と新潟を結ぶ新日本海フェリーは「e乗船チケット」を事前に印刷しておくと、乗船手続きなしですぐに乗ることができる。このチケットがない場合、ネット予約していても乗船手続きが必要になるので注意が必要だ。
観光パンフを読んでいると、あっという間に乗船時間がやってきた。
乗船口には水平の歩くエスカレーターがあり、なかなか近未来的だ。
船内は太平洋フェリーほどではないものの、かなり上質だ。新聞も置いてある。「きそ」「いしかり」にはなかったルームランナーもあるようだ。
これから16時間の船旅が始まる…。


2.本州上陸編

(1)日本海~新潟駅「迷走」

出航早々、強風によってデッキが閉鎖されてしまった…と思いきや、開いているデッキもあるようだ。最上階のデッキでは「プロジェクトX」や「ヨーロッパ トラムの旅」が放送されていた。プロジェクトXは黒四ダムの建設にフォーカスした番組だった。
食事はバイキング形式ではなく、端末で入力して注文するスタイルらしい。ごはん、冷奴など日本食中心のメニューを頼んだ。

新潟港到着。フェリーターミナルは簡素だった。バスも出ているらしいが、駅まで徒歩圏内なので歩いて向かう。

新潟フェリーターミナル


横向きの歩行者信号、「北海道航路」と書かれた青看板など、ご当地オブジェクト、表示が見受けられる。
国道113号を進み、新潟方面に向かうが、途中で歩道がなくなってしまう。危険なので迂回路を探していると、巨大な工業エリアに入り込んだ。
新潟駅はおろか、新潟の町並みも全く見えない。
…少し不安になってきた。
事前に購入しておいた青汁を飲み、水分を補給しながら進む。進行方向左手に線路が敷かれている。とりあえず、これをヒントにして進むか…。
交差点にぶつかる。まずい。どっちだ?!
ナビを起動させるも、進行方向がわからず、少し足止めを喰らう。
本来はナビに頼らず歩くべきなのだが、土地勘がないので結構厳しい。
一応、全国版の道路地図は所持しているが、新潟限定の地図も購入し、研究すべきかもしれない。観光用の地図も便利だが、まずは大局的に地理を把握し、地名や交差点の箇所、自身が進んでいる方向を調べないと、現地で迷うことは必至だ。おまけに、グーグルマップを起動するとバッテリーを著しく消費するため、緊急連絡時に支障をきたす恐れもある。
やはり、いくら方向音痴とはいえ、大局的な地図はしっかり頭に入れておいたほうが賢明なのだろう。

狭い生活道路を抜けると、神社が見えた。しかし、駅に着くまでは安心できないので、参拝は見送る。焦らず小休止するのも悪くないが、土地勘がないとどうしても先を急いでしまう。
国道7号を横切って駅前通りに向かう。青森県から延々と続いてきた7号線はここ新潟が終点となり、ここから先は京都方面まで国道8号が繋いでいる。
今回はこの国道7号に概ね沿っている「羽越本線」を北上して青森に向かう手筈になっている。
「万代シティ」行のバスに追い抜かれる。今回訪問するブックオフも万代にある。名前から察するに、新興のショッピングセンター街だろう。
さすが日本海側の大都会だけあって、アニメイト、メロンブックスなんかもある。
大きな歩道橋が見えたところで左折し、駅前通りへと歩を進める。さすがに中心部なので、人通りは多くにぎやかだ。
駅前には謎の行列があった。バスかタクシーを待っているのだろうか。

再開発中のため、少し迂回して新潟駅に入る。

新潟駅


謎のカフェに謎の人だかりができている。よくわからんが、話題のお菓子でも売られているのだろうか。
新幹線接続駅のため駅は大きいが、地下鉄はないので仙台ほどのダンジョン感はない。上野はさすがに迷ったが、このくらいなら迷わずホームに行くことができそうだ。
路線図とホーム番号を確認し、万代方面へ足を伸ばす。
ブックオフ万代店はスーパーが併結されている。食料補給も同時に行えるのはありがたい。
肝心のブックオフだが、CD、書籍が強い。トルストイの『戦争と平和』が新潮文庫、光文社古典新訳文庫、両方置いてある。これは珍しい。
反面、ゲームソフトは弱い。PS2は少なく、ドリキャスは全く無かった。ただレアソフトもあり、PS1の『トワイライトシンドローム』が目玉だった。
森山大道『路上スナップのススメ』などいくつかの本を購入し、1階の食料品店で補給する。
情報によると、この先の酒田ではあまり補給路が用意されていないらしく、新潟を出る前にある程度確保しておかなければならない。酒田以北も乗り継ぎ時間が少ないため、ここが実質最後の補給場所となっている。

駅に戻る。まだ時間があるので食事タイムだ。
暑い中歩いてきたので腹が減っており、食事はスムーズに進む。
駅で時刻表を見ると、見慣れない行き先がたくさん書かれている。巻行、吉田行、柏崎行…いろいろある。
直江津行の特急「しらゆき」は意外と本数が少なかった。やはり、日本海側の列車本数は少ないのか…?
この度乗る列車は特急いなほ号・秋田行だ。本来は酒田までしか運転されないが、GW中ということで秋田まで延長運転されるとのこと。
いなほは酒田までの運転も多く、秋田直行便は多くない。やはり仙台に一極集中しているせいで、新潟-秋田の流動が少ないのだろう。
ホームへの階段を昇ると、越後線の普通列車が発車準備をしていた。乗客はそこまで多くなさそうで、ローカルムードが漂っていた。
いなほのホームでは「自由席はこちら」と書かれた旗を持った女性駅員がおり、すれ違いざま「こんにちは」と挨拶されたので、私も返す。
前回上野で無愛想かつ冷たい駅員に出くわしたので、多少嬉しくなる。
無愛想で事務的な対応しかしない女の人も世の中に多いが、元気な応対はとてもよいことだ。
階段下からは3人組の男性駅員が登ってくる。
「今日、忙しいんじゃね?」
「いや、指定席なら・・・」
とのこと。
さあ、どうなるか…。

いなほ号入線。大混雑を予想していたが、そうでもない。
まあ一応念には念を入れ、指定席を確保していたので争奪戦に参加する苦役からは解放されている。自由席には旗を持った誘導員の後ろにそこそこの列が作られていた。
東日本の特急は初めてなので、アナウンスや乗り心地など、しっかり確認しておこう。
男性アナウンスは東日本専用だが、女性の英語アナウンスは北海道と同じだ。聞き馴染みがある。
さあ、発車だ。まだまだ先は長い。


(2)新潟駅~酒田駅「不快」

日本海を望める路線ということで、車窓に期待しつつ、列車は定刻通り新潟駅を発車する。日本屈指の米処であることから、都心を離れると田んぼが広大に広がる風景にめぐりあう。楽しめそうだ。
…と思ったのもつかの間、問題が発生する。
後ろに子連れの女性が乗ってきたのだが、この子どもが大声を出すわ、席を蹴ってくるわ、肘にぶつかってくるわ、と散々な迷惑行為を働いてきたのである。当の女性は、
「すみません…」
と聞こえるか聞こえないかレベルのか細い声で、私の目も見ずにつぶやくだけだった。
自由席なら即移動レベルの案件だが、今回は指定席だったので動くに動けない。まあ、1時間程度で子どもが寝てくれたおかげで被害は抑えられたが、その女性は降りるとき、私に謝罪もせずそそくさと降りていった。

モータリゼーションの弊害についてこのブログでは何度も言及しているが、こういうことがあるとやはり、マイカーによる移動を袋叩きにはできないな、と感じる。多くの人が乗る公共交通は不快になるリスクを常に抱えている。今回は運悪くそのリスクが顕在化してしまったわけだ。
もちろん、寛容の精神が重要なことは承知している。しかし、どこの誰かも知らない母子に優雅な旅路を邪魔されるのは、私としても気分の良いものでは決してない。
子連れが公共交通を使うのは自由だが、周りへの配慮もできないのはさすがに問題だ。「親が親なら子も子。子が子なら親も親」と言わざるをえない。

まあいい、車窓と沿線の話をしよう。不快な思い出も、紀行文に書き起こせば、それは一段高い思想を生み出し、やがては薄れてゆくことだろうから。

村上駅にて電源交換をした後、日本海がよく見える景勝区間に入る。トンネルも多いが、それなりに楽しめる。
しかし、乗り心地はいまいちで、首や肩が辛くなってきた。まあ、重い荷を背負って歩いてきたのも一因ではあろうが…。
村上以北は「川」駅名が多い。越後寒川、桑川、今川など、函館本線の砂川、滝川、深川…に通じる何かがある。
坂町で米坂線、余目で陸羽西線と接続するが、ともに災害で不通となっており、バス代行輸送になっている。自然の厳しさを改めて感じざるを得ない。
2時間ほどかけて酒田到着。ようやく自由になれた。
列車を見送ると、新潟駅で私に挨拶した女性が黙礼したので、私も返す。
無愛想な女性事務員は見習うが良い。
自動改札機を抜け、酒田の街に入る。


(3)酒田駅~秋田駅「平野」


酒田駅

事前情報に違わず、駅前は閑散としている。目視ではコンビニすら確認できない。駅直結の土産物屋で銘菓「オランダせんべい」を購入する。

オランダせんべい


駅前に観光案内所を兼ねた図書館がある。酒田といえば写真家の土門拳が有名で、私も記念館には行ってみたいのだが、今回は時間がないので見送る。新潟と秋田の中間にある酒田だが、北海道から来るとなると何気にアクセスが面倒だ。いっそのこと酒田航路を開拓してくれれば楽なのだが…。
駅に戻ると、初老?の男性駅員が若い女性駅員に飲み物をおごっていた。地方の駅らしい、のどかな風景ともいえるだろう。
駅内の張り紙に「スジ屋」の募集があった。私には無理そうだが、駅で募集しているとは驚きである。
跨線橋を渡り、秋田行の普通列車に乗る。ボックス席とロングシートの混合形態だ。

発射するとまもなく田園地帯に入る。平野なので見晴らしが良い。さすがに県境付近では山越えのトンネルもあるが…。
南鳥海で男性が後部車両から降りようとするが、ワンマン列車のため、開かない。運転士が
「乗車口は前側の車両です。」
とアナウンスし、男性は小走りで駆けていった。
毎日使っている人なら仕様を知っているはずなので、たまにしか使わない、あるいは今回が初めての人だったのだろう。
ワンマン化せず、車掌を乗務させておけばこういうことにもならなかったはずだ。コストカットと称して、必要経費を削りすぎているのではないか?と疑問符がつく。
遊佐、仁賀保など特急停車駅は乗客も多少いるが、基本的にはローカル線の様相で、繁盛はしていない。やはり、太平洋側に人口が集中してしまっているのだろう。
羽後本荘駅でそこそこの乗車があり、車内にも活気がみなぎってきた。
秘境駅の「折渡」は残念ながら通過。ただし、車窓からでも充分秘境感は味わうことができた。次回は下車してみたいものだ。
夕日傾く日本海を横目に、下浜の工業団地を通過。秋田も近い。
普通列車だけで来るのは結構大変そうである。

秋田駅到着。第1回本州紀行で訪れているので、二度目の訪問となるが、すぐさま弘前行快速に乗り換えなければならないため、補給はできない。乗車率はそこそこ高めである。この列車も秘境駅の津軽湯の沢を通過する。秘境駅を訪問する場合は専用のスケジュールを組まないとなかなか厳しいようだ。
この列車は八郎潟まで各停、その先大館まで快速、大館からは各停という変化の激しい運用となっている。
本州脱出に向け、列車が走り出した。


(4)秋田駅~青森FT「男女」

停車駅ごとに人が降りていき、大館に着く頃には車内はだいぶ静かになっていた。花輪線から乗り換え客が多少入ってきたが、それでもそんなに多くない。
花輪線は第1回時点では災害不通の路線だったが、現在は復旧済みのようだ。
長い駅間と騒々しいジョイント音を感じながら、列車は弘前へ到着する。このまま対面乗り換えで青森方面へ向かう。接続はよいが、補給の時間はない。新潟で補給しなければかなりの苦労を強いられたことだろう。

船の出航まで時間があるため、途中下車することにした。
隣駅の撫牛子で下車。弘前の隣だが周りは住宅ばかりで何もないように見える。ここにも乗車駅証明書が設置されていた。やはり北海道より設備は多いのは間違いない。

撫牛子駅


軽食を摂り、鰺ヶ沢行列車に乗る。五能線の列車だが、次の川部まで行けるので問題ない。雰囲気は奥羽本線と全く違い、静かな感じだった
川部駅で下車し、次の列車を待つ。第2回で下車&探索をした駅だが、暗いので列車を待つしかない。分岐駅だけ合ってホーム上の椅子の数も多い。かつて有人駅だった頃の栄華を偲ぶことができる。

さて、もう一度途中下車することも不可能ではないが、待ち時間が長くなる上辺りが暗くて怖いので、目的地に直行することにした。
やってきた青森行列車にはカップルが何組か乗っており、うち2、3組は女性が男性にもたれかかる格好になっていた。読者に青森県民がいたらお尋ねしたいが、意外と羞恥心なくああいうことができるのだろうか?あまり見たことはないが…。
何となく気恥ずかしさを覚えながら、目的地を目指す。
ハキハキ話す女性車掌のアナウンスを聞きながら、目的地の津軽新城駅で下車。乗降は私だけのようだ。
津軽新城駅は私の本州紀行始まりの場所であり、思い出深い。訪問回数もこれで3回目で、現在本州で最も訪れた場所になっている。
観光地化されていないローカル駅という風情が非常に良い。
さすがに3回も訪問すると足取りは軽い。地理を身体が覚えているからだろう。体力が有り余っていた朝の新潟よりもスムーズに足運びができた。やはり、知っている場所を歩くのと、未知の領域を歩くのでは、精神的な負担が全く違うらしい。まだ3回しか来ていないというのに、ホームグラウンドに帰ってきたような安心感を覚える。

まずは国道7号を目指さなければならないのだが、そこそこ距離がある。新青森駅を過ぎ、アンダーパスをくぐって国道7号へ。まあ、この国道からも遠いのだが…。
面白みのない国道を横切り、青森フェリーターミナルへ到着する。
出航まではまだ時間があるので、待合室で休む。
さすがに眠気は抑え難く、うつらうつらと夢の世界へ片足を突っ込む。
出航が近づくと、乗込口への送迎バスがやってきた。前回は見かけなかったバスだ。別に歩けるのだが、せっかくだから乗ってみよう。
家族連れ、男女ペアもいるが、深夜便なので騒がしさはない。
第2回と同じく、2:40出航のビューシートに乗る。ちなみに外は真っ暗な上、カーテンは閉めっぱなしなので景色は全く見えない。まあいいや。寝るだけだし。
乗船後、冷凍クレープを食べる。ひんやりしていて美味い。
さあ、眠ろう。ふるさと目指して。


3.北海道帰還編

(1)青森FT~函館FT~長万部駅「寄道」

目が覚めるとそこは函館港だった…という第2回と全く同じ結末を迎え、北海道に帰還する。
すかさず七重浜駅でいさりび線に乗り、五稜郭に向かう。
ここで食糧を補給し、自宅までの備えとする。
今回は少し途中下車しつつ帰ろうと思う。北斗で直行するのはあまりにも無粋だからだ。
まずは桔梗駅に途中下車。今回新たにICカード利用可能エリアになったが、駅は無人化されてしまった。

桔梗駅


国道5号が近く、秘境感はない。よくある都市近郊型の駅である。
続いてはこだてライナーに乗車。コナン仕様のラッピングが施されている。映画とのコラボだろう。珍しいものが見れた。今回の映画は函館が舞台になっているようで、聖地巡礼に来るファンも多いらしい。
大中山駅で下車。こちらも国道が近いので秘境感はない。

大中山駅


金属音が響く錆びた階段を昇り、駅舎へ向かうが駅ノートはない。
駅付近の商店でアイスとそばを買い、商店のおじさんと少し話して駅に戻る。

まだまだ途中下車したい気持ちでいっぱいだが、次の長万部行を逃すと面倒なので、これを終点まで乗り通す。
乗客がかなりいたが、函館北斗、大沼公園で大半が降り、車内は一気にローカルムードに様変わりした。
外国人兄貴もボックス席を豪快に使っている。
森駅に到着。ここから先は眺めの良い区間だが、ロクに寝ていないため、夢の世界へと旅立つ。
最近廃止となった本石倉、中ノ沢などの駅を通過する。案内はないが、車窓からもう列車が来ることのない駅を眺めるのは寂しいものがある。

長万部駅に到着。普通列車のためか、ご当地キャラ「まんべくん」のお出迎えはなかった。
途中下車し、リフレッシュしてから特急北斗に乗る。
普通列車のみで帰りたい場合は倶知安行一択だが、客が多く面倒な路線なので、特急ワープを使って先に進む。


(2)長万部駅~苫小牧駅「海辺」

てっきり大混雑かと思いきや、意外と余裕がある。
コナンによる期間限定の車内アナウンスが流れ、映画とイベントの告知がなされた。今回結構ツイてるな。苦あれば楽あり、か。
伊達紋別駅で下車。バスで通ったことはあるが、鉄道で下車するのは今回が初めてということで、楽しみだ。

伊達紋別駅


旧国道と思しき道を一人静かに歩いていく。沿道のラーメン屋は休日の昼間ということもあり、そこそこ繁盛しているようだ。
道沿いの小さな神社に参拝し、先へ進む。
道に自信がなくなったので、ナビを起動する。やはり、地図をもっと読み込んで研究しないとダメだな、と今にして思う。

文明の利器を活用しながら、到着したのは北舟岡駅。北海道では釧網本線の北浜駅と並び、海に近い駅として有名だ。

北舟岡駅


ロケーションの良さから多くの旅人の憧れの的になり、駅の階段が整備されたり、駅ノートも充実するなど、無人駅ながら旅情あふれる素晴らしい駅となっている。
保線工事の人たちが連絡を取り合いながら線路の状態を確認していた。
駅ノートをじっくり読み、海を静かに眺めながら、やがて来た列車に乗って向かうは東室蘭だ。

この区間は特急・貨物街道ではあるが、普通列車の乗客はさほど多くなく、和やかな雰囲気に包まれている。稀府、黄金、崎守、本輪西、そして東室蘭へ到着。次の苫小牧行まで少し時間がある。となるとやはり、「あの場所」に行かねばなるまい…。
そう、「駿河屋」だ。第2回本州紀行においてはここで宮脇俊三の本を多数見つけるという僥倖に巡り合っている。今回も期待できそうだ。
やはりドリキャスソフトが結構充実している。室蘭は新潟よりはるかに人口が少ないが、どういうわけかゲームはなかなか多い。
だが、今回は書籍に的を絞ろう。
あった。今回も宮脇俊三本があった。旅路で見つけられるとは運がいい。
さあ、目的達成だ。駅へ戻ろう。

苫小牧行列車がやってきた。北海道内では人口が多い地域を通るので、乗客も結構多い。ダイヤ変更によって特急が値上げ・煩雑になったのも大きいだろう。アジア系外国人の方も少しいる。高校生が元気に談笑している。彼らもやがてはこの地を去り、クルマを手にし、列車に乗らなくなる日が来るのだろうか…。先行きは不安だが、公共交通の未来を考えるべき時に来ている。急かせかと新幹線など作っている場合ではない。やるべきことは他にあるのだ。
観光客は登別で下車。苫小牧まではそれなりに乗車した状態で終着となった。


(3)苫小牧駅~岩見沢駅「休眠」


駅隣接のコンビニ「ハマナス」で最後の食糧補給を行う。
貴重な札幌直通・ほしみ行普通列車が待ち構えているが、スルーだ。
今回も室蘭線・岩見沢経由で帰る。黄色線区の輸送密度に少しでも貢献だ。やはり乗客は少なかった。今後が心配である。
景色の良い路線でもあるのだが、やはり眠気には勝てない。長万部までに多少寝てはいるが、所詮は仮眠みたいなもので、充分な睡眠とは言い難い。ここでも眠らせてもらうことにしよう。
デクモ置き換えが進む中、国鉄型キハ40がまだ走っているこの区間は貴重だ。いつまで乗れるかわからないから、今のうちに乗っておくことにする。
輸送密度は少ないが、喧しい札幌圏をバイパスできる路線なので意外と重宝するし。
志文駅の名物カーブに差し掛かる頃には、私の眠気も多少取り除かれていた。終点は近い。岩見沢は旅の終着ではないが、ここまで来るともうすぐなので、実質終点のような感慨を覚える。

岩見沢駅到着。寝過ごしている客はおらず、全員無事に降りたようだ。一旦改札を出て駅前の夜景を眺める。懐かしき学生時代の淡い記憶がほんの一瞬脳裏を掠める。彼らとまた合う日はくるのだろうか。それとも、あの日が最後の時間だったのだろうか。答えは神のみぞ知る、ということなのだろう。感傷に浸りつつも、そのまま7番線へ向かい、札幌方面の列車に乗る。
長い長い旅が終わり、次の旅へのインターバルが始まる。
未知の世界への憧れと、日常から脱却したいという欲求。
そうした思いが消えない限り、私の旅も終わらない。
さあ、次はどこへ行こうか…。(完)

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