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地方で出版社をつくる【其の三】取次会社のこと

ここ朝霧高原(富士宮市)での田舎暮らしの満足度はかなり高い。だけれど、数少ない不満点は書店が身近にないことだ。特に個性的な書店。本ならばいつでもネットで買えばいい、都会から移住した当初はそう思っていた。が、身近に書店がなくなってから、本との出会いはほとんど書店の棚だったんだと初めて気づいた。

そのこともあり、本を出したら書店に置いてもらいたいと思った。今なら全国各地にある個性的な書店と直接交渉して委託販売で扱ってもらうという方法ももちろんある。が、わたしは取次会社と契約する道を選んだ。そこで、虹霓社のような小さい版元と契約してくれる取次はあるのか調べたところ4社ほど見つかった。JRC(人文・社会科学書流通センター)地方・小出版流通センタートランスビュー、そしてツバメ出版流通だ。

結果的に虹霓社はツバメ出版流通と契約したのだが、これは他の3社がどうというより、同社に縁を感じたからだ。というのも、弊社のメインジャンルでもある芸術・思想・文学が中心の取次と明記してあったし、同社は並行して夜光社という小さな版元も運営していて、そのこと自体や同社からわたしも少しだけ関わった本(現代企画室『アナキストサッカーマニュアル』)の著者ガブリエル・クーンの『海賊旗を掲げて』、毎回気になっていた『HAPAX』などを刊行していたのが決め手になった。(スリップの丸「ツ」がかわいい=見出し画像)

新規取引希望のメールで送ったところすぐにご返信いただき、契約前に一度東京で会うことになった。当日、トランスビューなど他社さんときちんと比較した上で最終決定されるのが良いのでは、とアドバイスいただいたが、会う前からすでに決めていたので、その場で正式に契約したい旨を伝えた。これはあくまで一例であり、それぞれの会社の特徴や自分の刊行するジャンル、またトランスビューの取引代行(取次ではなく)などもきちんと比較して決める方が良いとは思う。

そのツバメ出版流通の川人さんが取次について語ったエッセイを寄せている『本を贈る』は、版元めざさなくとも本好きなら造本も含めて愛おしくなる本。

トランスビューについて詳しく書かれた『まっ直ぐに本を売る』は、出版未経験のわたしなどからしたらとてもとても勉強になった本。

上記はかなり詳しい本なので、もっとざっくりトランスビュー方式を知りたいなと言う方にはこんなページも。

あと、この『これからの本屋読本』。版元側からではなく、売る側(書店)について書かれた本なのだけど、この中の「別冊 本の仕入れ方大全」がとても参考になる。そして何よりもこの本自体がとっても面白い。なんとnoteで全文読めるので、ぜひ出版未経験で版元をやってみたい方にはぜひ一読をおすすめしたい。わたしは図書館で借りて読んだらあまりにも面白くて、noteの全文公開を知っていたにもかかわらず、手元に置いておきたくて書籍版を購入してしまった。困ったのは、この本を読んだらわたしも売る側になりたくなってしまったことだ。


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