【専門知識はどこまで必要?】ミステリ・警察・医療・時代小説で役立つ情報を得る方法(2018年12月号特集)
警察小説や医療小説などでは、ある程度の専門知識が必要になる。ここでは専門小説の入門編として、豆知識と参考資料を紹介する!
推理小説
有名なトリックは押さえておこう
推理小説には、謎を解くことを主眼とした本格推理と、広義のミステリーの2つがある。
広義のミステリーは「作者と読者の知恵比べ」という趣旨ではないが、謎やトリックはあり、だから有名なものは押さえておきたい。
名作とまったく同じトリックをそのまま使ったら即落選となるだけでなく、無知を笑われる。
ただし、大ネタを小ネタとして使ったり、有名なトリックを倒叙(最初に犯人を明かす形式)にしたりするアレンジは許される。
参考になるサイト
参考になる書籍
『60の奇妙な事件<4ページミステリーシリーズ>』(蒼井上鷹著・双葉文庫):ショート・ショートを60本収録。楽しくトリックを知ることができる。
『ミステリーの書き方』(日本推理作家協会・編著・幻冬舎文庫):推理小説作家43名によるミステリーの指南書。独自のノウハウを開陳。
警察小説
お仕事小説には専門知識が必須
推理小説の1つに警察小説がある。小説には多少の脚色はあっていいが、専門の職業ものの場合、明らかなウソ(というより無知)があると白けてしまう。
警察の制度や仕組み、階級などについては、人に説明できるぐらいの知識は得ておきたい。
捜査と逮捕 最低限の知識
警察庁と警視庁
警察庁は各都道府県警察の管理をする行政機関。国家公務員(キャリア)。警視庁は東京都の警察(ノンキャリア)。他県でいう県警。警察庁は管理をし、所轄署のような捜査はしない。
逮捕して終わり?
被疑者は警察署の留置所(刑務所ではない)に入れられ、48時間以内に検察に送られる。これを送検と言う。検察は24時間以内に捜査し、最大20日拘留。起訴が決まれば裁判に。
公安と警察
警察(刑事警察)は民間の事件を担当する。公安(警備警察)は政治犯やテロリストなどを取り締まる。公安は警察と敵対しているわけではないが、独立組織で、警察と情報を共有しない。
警察と送検
警察は捜査、逮捕の権限はあるが、起訴(訴えを起こすこと)はできない。検察は再度捜査し、起訴か不起訴か決める。検察も警察も罪を確定することはできず、それは裁判官の役目になる。
参考になるサイト
参考になる書籍
『そこが知りたい!日本の警察組織のしくみ』(古谷謙一監修・朝日新聞出版):組織や階級、部署による職務の違いや捜査手法などについて解説。
医療小説
医師や看護師の世界を詳しく調べておこう
医療小説も、映画やドラマではよく見るが、実際にディテールを書けとなると、医師や看護師が1日どのように過ごしているかよくわからず、器具や薬品などの名前も書けず筆が止まる。
リアリティーを出すためにも、仕組みや細部を知っておこう。
医師と医療 書くためのQ&A
卒業したら即医師?
大学を卒業し、国家試験に合格すれば医師。その後、研修医として指定病院で実地研修。期間は2年以上。内科・救急・地域医療の3科目が必修で、外科・麻酔科などから2科目選択。
大学病院って何?
普通の病院は診療をするが、医大(大学の医学部)に付設された大学病院では診療、研究、教育をする。だから教授回診を研修医が見学したりする。医大の医師は大学で講義や実習もする。
白衣は着ないとだめ?
白衣には長袖で丈の長いコート型と、丈が短くセパレートのケーシー型がある。看護師や研究者も着る。白衣の着用は法的には規制はないが、組織の中で義務化されていることが多い。
フリーの医師って?
医師は病院に雇用されるのが一般的だが、フリーランスの医師もいる。麻酔医に多く、時給で契約。雇用する側も必要に応じて依頼でき、医師側も拘束が少ないのが利点。近年は増加傾向。
参考になるサイト
参考になる本
『医療ドラマが100倍面白くなる医者の世界』(別冊宝島編集部編・宝島社):大学病院から研修医、救命医療など本音と実際の仕事を徹底取材で解説。
時代小説
その時代の風景が目に浮かべば本物
同じ日本でも150年さかのぼるとほとんど異国。学者でもよく知らないようなことはともかく、基本的なことは押さえておこう。
目をつぶると、その時代の風景が浮かび上がってくるようになれば本物。そうなれるよう、ある程度は資料を読み解いておこう。
時代小説の知識 初級編
江戸の長屋
長屋には木戸があり、どぶの両側に各部屋がある。間口九尺、奥行き二間が一般で、戸を開けると水がめ、流し、かまどがあり、畳部分は四畳半。奥に共同の便所、井戸、掃きだめがある。
同心と岡っ引き
同心は今でいう警察官。同心は御用聞き(岡っ引き)を使って捜査をする。幕府は資金がなく、蛇の道は蛇で、警備を庶民(やくざ)にやらせた。岡っ引きが親分と呼ばれるのはそのせい。
江戸の衣食住
朝はご飯を炊く。江戸は棒手振(ぼてふり)が盛んで、おかずはデリバリー。夜は朝の残りをお茶漬けで。庶民は敷布団しかなく、上着をかぶって寝る。かいまきに袖があるのはその名残。
大家さんと旅行
長屋の大家は監督者、保護者であり、「大家と言えば親も同然」だから旅行や結婚に際しても許可を得た。観光旅行は本来自由には行けないが、人々は参拝という大義名分で旅行に行った。
参考になるサイト
参考になる本
『考証要集 秘伝!NHK時代考証資料』(大森洋平著・文春文庫):時代考証を担当する著者が、間違いだらけの歴史の常識を丹念に覆す。
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※本記事は「公募ガイド2018年12月号」の記事を再掲載したものです。
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