父の入院

普通に暮らしていて、少しずつ父の様子が変わっていって、最後には脳梗塞だと言われて驚いた話です。

頭がおかしい

認知症の父は日々歩けなくなっていく。バランスを取るのがたいへんだ。

テレビで父と認知症の特集を見ていたら「たいへんな病気やな」と感想を述べるので脱力する。

ところがある日、「なんか頭がおかしい」と言った。

やっとわかったか、と言って笑った。

これが脳梗塞の前触れだとは1ミリも思わなかった。

ギャーッ!!夜中に叫び声がした。

叫び声を聞いて、父の部屋に行くと、手すりを持ったまま父が動けなくなっていた。

脇を抱えてトイレまで行く。

認知症が進むと身体機能が落ちて、身体機能が落ちたら認知症も進む。

これが脳梗塞の発症とは全く考えなかった。

やる気がない

けたたましい母の声で目が覚める。

着替えようとしない父に母がキレている。

だが、キレ過ぎた母が倒れるのではないかと心配になる。

父のやる気のなさは日々ひどくなる。

これが脳梗塞の症状だとは全くわからなかった。

トイレのドアを外してもらう

なかなか動けなくなってきた父の様子をケアマネさんに見てもらうことにした。

以前より動けなくなってきたねー、お風呂はデイサービスで入ってもらってくださいねー、と言ってくれる。

トイレに入りやすいようにとドアを外してもらう。

他人も巻き込んで申し訳ないと母が言う。

これが脳梗塞の症状だとはやはり誰も思わなかった。

ころりと転げる

夕食の時に、お箸でおかずを食べている父の身体が傾いていく。

座っていても、時々バランスを崩してころりと転げる。

お箸を持ったまま寝るなー、とわたしが言って起こす。

転げるのでクッションで足を支えて食事を続ける。

いつもなら残すおかずも父はきれいに平らげる。

これが脳梗塞の進行だとはもちろん夢にも思わなかった。

夜中のトイレがなくなる

毎晩3回はトイレに起きる父が、この日は1度しか起きなかった。

しかも自分の部屋から出られず、「助けて」と言う。

部屋に戻ってきたら倒れ込むように布団に転がる。

こんなにどんどん悪くなるものなのかなと不思議なくらいだ。

父が通う内科の主治医に電話で聞いてみると整形外科に行ってくれと言われる。

予約を取って診察に行くことにする。

これが脳梗塞の症状だとはまだ想像もしなかった。

布団に世界地図

朝、起きると、父が起きてこない。

様子を見に行くと、動けず失禁している父を見て驚く。

着替えさせて、介護用シーツを洗濯する。

ケアマネさんに電話して介護タクシーについて相談する。

するとすぐにケアマネさんが家に飛んできてくれた。

見るからに状態がこの間と違うから救急車を呼んだ方がいいと言われる。

けれど、マンションの人に迷惑をかけたくないと母が拒む。

これが脳梗塞でも放置した家族の判断だった。

外来で診察に

介護タクシーで診察に向かう。

診察室に呼ばれて入って簡単に状況を話すと、

「これは外来ではどうしようもない、救急対応や!」と先生が叫んで、

たいへんなことになる。

髄膜炎か脳炎かと言われる。

これが脳梗塞だとは先生にもわからなかった。

検査の果てに

救急窓口に呼ばれて、これまでの経過を救急の先生に話す。

検査結果から見て、うちでは対応できないので他の病院を探していますと説明がある。

恐ろしく待たされて、また呼ばれる。

さっきまでの先生は消えて、初めてみる先生がいる。

「あのね、脳梗塞ですね」「え…。」

これが脳梗塞とわかった時だった。

やっと入院

「じゃあ、入院の準備もありますのでお待ちください」

脳梗塞だとこの病院に入院できるらしい。

良かった。

母に脳梗塞だったと話すとびっくり仰天された。

先生に、どうしてもっと早く連れてこなかったのかと言われたことは内緒にしておく。

これが脳梗塞を見逃したどころじゃない家族の後悔となる。

帰宅して

帰宅して、必要のある親類に連絡をする。

母は洗濯物を取り込んでいる。

遅い夕食を済ませると、わたしは1ミリも動けなくなった。

どうにかベッドにたどり着き、死んだように眠る。

父が死ななくてよかった。


世の中には、とんでもない家族がいるものだ。


素晴らしいフォロー

ところが、わたしの主治医にこの話をしたところ、脳梗塞は本当にわかりづらいらしく、歩いて病院に来る人もいるらしい。

これを聞いて、ものすごくラクになった。精神科医すごい。




シリーズ

【坂道を上ると次も坂道だった】

でした。



画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。

病院の帰り道には月が見えなかったので、この綺麗な月を見つけて嬉しかったです。

地味に生きておりますが、たまには電車に乗って出かけたいと思います。でもヘルパーさんの電車賃がかかるので、よかったらサポートお願いします。(とか書いておりますが気にしないで下さい。何か書いた方がいいと聞いたので)