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母の記憶(4)~抵抗する認知症の母に追い詰められていくわたし~

イラストは「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。内容とは関係ないのですが、あまりにも愛らしく美味しそうで選びました。美味しそうという感覚は生きるために必須ですよね。

ひとりで行ける、ヘルパーいらん!

すぐキレるようになってきた

他人のことのような見出しですが、

本当のところ、わたしもすぐキレます。

ただ、おばさんになって、

キレても、キレた感情が、

長続きしないんですよ。

これは大発見です。

すぐキレて、すぐ忘れる。

ん?

これは今の母です。

ありがちな患者になってきた

いろいろ、

読んだり聞いたりしていると、

認知症の人って、

キレやすいそうです。

というか、すぐ興奮するというか。

どっちにしろ、

いい結果にはなりません。

と、冷静に思えるようになるまで、

かなり時間がかかりました。

「Aさんと孫事件」という、

書き出したら連載になる長い話が、

母のキレる原因だと、

どこかで思っていたのです。

でも、実際には病気のせいでした。

このままでは危険と思えてきた

もちろん母の病気にもですが、

この生活はわたしの病気にも響きます。

キレる母を相手にし続けると、

おそろしく消耗します。

友達に、

とにかく物理的距離を取れと、

言われているのですが、

これが難しい。

デイサービスはダメだった。

とても残念でしたが、

行かないと言われました。

ある日、買い物から帰ってきて、

もうアカン、

ひとりで買い物できへんわ、

などと言ったので、

わかった!ヘルパーさん頼もう!

と、すぐに手配をしました。

頼んだ後で、

ヘルパーさんは1回か2回でいい、

つぶやいた母に叫びたくなり、

我慢して離れたところでわたしは、

自分の頭をバシバシ叩きました。

友達に電話して、

「限界が来ました」と言いました。

友達は母を施設にいれるべきだ、と、

最初から言い続けていました。

とにかく目の前のヘルパーさんです。

一度でいい、一度でいいから

こうなると泣き落としで

もうわたしの言葉など届きません。

母は日本語がわからないかのように、

するするとわたしの言葉を、

右から左へ聞き流します。

病気のせいで記憶できないのもあり、

聞く気がなくて無視するのもあり。

やむなくわたしが、

泣き叫ぶことになります。

すると、

「なにを泣いてるのん!!

しっかりせんか!!」

怒鳴り始めます。

かつてわたしが、

精神病だとわからなくて、

一日中布団の中にこもっていて、

母に怒鳴られた時の声が、

蘇ってきます。

母が言います。

泣くのをやめたら、

1回だけゆうこときいたる。

条件を出してくるとは、

本当に認知症なのかと、

疑います。

それでも契約してくれるので

結局、契約をして、

とにかく1回だけ来ます、と、

ケアマネさんとヘルパーさんが、

強く言ってくれました。

1回だけでもいいから、

ヘルパーさんと買い物に行って、

悪くないと思ってほしい。

これまでの人生で、

一番強く願ったかもしれません。

重いもの書いといてねー

主治医は一応プロだった

いつもわたしの主治医が言います。

家族より専門職の人の方が、

対応力がありますからね、

身内の介護が一番難しいんです、

過去のいろいろがあるから、

冷静になれません、と。

はー、そういうもんですか、

などと言ったものです。

もっとちゃんと聞けばよかった。

主治医の言葉は真実でした。

買い物から帰ってきた母は、

ごきげんでした。

うそのように楽しそうに。

ヘルパーさんの言葉は魔法だった

いろいろ買ったものを、

テーブルの上に並べて、

母とわたしで置くべき場所に置き、

ヘルパーさんは書類を書いて、

また来週と去っていきます。

「重い物、書いといてねー」

この言葉を母は、

1週間で何度言ったことか。

あの人、重いもの書いといて、

やって。

重いものでも持ってもらうしか、

やってもらうことないわ。

減らず口を叩きながら、

いつのまにかメモを取り、

重いものを並べ始めました。

すごい。

母の行動を一言で変えた。

ヘルパーさんの問題処理能力に、

今はただひたすらに、

感謝しています。


ヘルパーいらん、こともなし

母の安定した生活が始まり、

当然わたしの気持ちも安定して。

こんな風になるなんて、

あの日には想像できませんでした。

何がどうなるかわからない。

あと少し、生きていよう。




と、思ったものの、

半月ももちませんでした。

ヘルパーいらん!という母と、

大喧嘩して冷戦中です。










地味に生きておりますが、たまには電車に乗って出かけたいと思います。でもヘルパーさんの電車賃がかかるので、よかったらサポートお願いします。(とか書いておりますが気にしないで下さい。何か書いた方がいいと聞いたので)