2600年を経ても、やっぱり基本が一番大事(『春秋左氏伝』襄公二十四年)
今回取り上げるのは『春秋左氏伝』襄公二十四年からの言葉。
何事も基礎がしっかりしていれば失敗することはない、という意味。
春秋時代の著名な政治家、子産(しさん)の言葉です。
つまり、何事も基礎・基本が大事ということですね。
子産は、時期としては孔子の一世代前に活躍した人物で、孔子にも大きな影響を与えました。
孔子は以下のように子産について語っています。
孔子先生が子産を評価して仰った、「子産には君子に相応しい行いが四つある」と。
という意味。
具体的には以下の四つになります。
自身の行動の慎み方が厳粛である
目上の人に対する接し方が敬虔である
民衆への接し方に思いやりがある
民衆の用い方が公明正大である
どれも孔子が常日頃から大事にしている要素であり、孔子は子産を高く評価していたことがわかりますよね。
歴史上で見ても子産はとても優秀です。
子産は鄭(てい)という国の宰相として活躍するのですが、この鄭は晋・楚という春秋時代の二代強国に挟まれていました。
弱肉強食の春秋時代。
一瞬の油断が国の滅亡につながる状況で、子産は国内を良く統治し、優れた外交手腕を発揮して鄭の独立を維持しています。
子産を主人公にした歴史小説もありますので、気になった方はぜひ一読くださいませ。
古代中国を舞台にした歴史小説における大家、宮城谷昌光先生の本なので、とっても面白いです!
話を戻しましょう。
今回ご紹介している言葉は、孔子も高く評価し、歴史的に見ても優れた政治家であった子産のものになります。
春秋時代を代表する強国に挟まれ、風前の灯となっていた国家を見事に生き残らせたわけですから、その優秀さは計り知れません。
そんな子産が、何事も基礎・基本が大事、と言っているわけですね。
言葉の重みを感じます。
私たちは歴史を振り返るとき、偉人たちの残した輝かしい功績ばかりに目が眩み、彼らの才能や運に嫉妬や羨望の眼差しを向けることがあります。
「私にも劉備のような人徳があれば…」
「私にも織田信長のような才能とカリスマがあれば…」
ですが、彼らが名を残すことができたのは、才能があったり運が良かったからではありません。
どんなときでも諦めずに考え、努力し、行動し続けたからです。
劉備が蜀という一国の主になれたのは、何度敗走したとしても、決して諦めなかったからです。
織田信長が桶狭間の戦いで勝利を収めたのは、勝つことを諦めず、地道な情報収集を行い、部下の士気を可能な限り上げて戦いに臨んだからです。
他の人よりも試行錯誤し、努力し、行動したからこそ、彼らの才能や運が花開いたのだと思います。
決して特殊な才能ありきではありません。
彼らは誰でもできる基礎・基本のことを、人並み以上の熱意を持って取り組んだのです。
何度負けてもめげないメンタルや、情報収集に価値を見出すセンスなどは同時代の人よりも抜きん出ていたとは思いますが、だからといって、彼らの日々の努力を忘れてはいけません。
イチローや大谷翔平選手など、一流のスポーツ選手も基礎・基本を大事にしていますよね。
特別なことではなく、当たり前のことを徹底して行う、という意味で「凡事徹底」という言葉もあります。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんやパナソニック創業者の松下幸之助さんが座右の銘としていたことで有名です。
一流のスポーツ選手も一流の経営者も、名を残す人はだれもがみな、基礎・基本を大事にしています。
子産が活躍したのは今から約2600年前ですが、そこから2600年を経ても変わらない普遍的な教えなのだなと感じました。
本日は、何事も基礎・基本が大事、という言葉をご紹介しました。
基礎・基本を大事にする、という考え方は、割と現代日本に浸透していると思います。
その一方で、一般的に当たり前になっているからこそ、ふとしたときに気が緩み、思わず忘れてしまうこともあるでしょう。
私もそうです。
ですが、ここで今一度基礎・基本を大事にし、一歩ずつ足元を固めていこうと思います。
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