見出し画像

還り矢 天照大御神さまの言よさし⑤ 神様も“失敗”して成長した 其の百二九

雉の鳴女の死


おはようございます。七夕の朝、雲の間から晴れ間がのぞきます。大雨の被害が、最小でありますように! 皆さんの願いが叶いますように! 織姫・彦星が、今年の七夕の夜は会えますように!
と、祈りながら「ことの葉綴り。」に向かいます。

画像1

神さまも“失敗”を経験されて成長されていく神話。
「地上の豊葦原の水穂國は、我が御子が治めるべき国」と、言向けをされた天照大御神さま。

葦原中つ国へ、最初に派遣した、天照大御神さまの第二子・天菩比神(あめのほひのかみ)は、3年過ぎても音沙汰なし!

次に遣わせた、天若日子(あめのわかひこ)も、大国主神さまの娘の下照比売(したてるひめ)を嫁にもらい、すっかり大国主神さまにとりこまれてしまい、いずれは我がこの地上の王にと野心を持ってしまいました。
そして、8年間なしのつぶて……。

大国主神さまのおつくりになった葦原中つ国は、
神々も幸せに暮らせる素晴らしい国となっていたのでしょう。

画像2

天照大御神さまと、高御産巣日神さまは、
雉の鳴女(きざしのなきめ)を地上に遣わせました
美しい声の雉の鳴女は、天若日子の家の桂の木に止まり、
天照大御神さまからの伝言を何度も繰り返しました。

地上で、天若日子に仕えている、巫女の天佐具売は、
雉の鳴女の声に、苛立ち、「不吉な雉め」と、
天若日子さまに、「射殺してください」と叫びます。

豊葦原の水穂のこの美しい国は、やがて我がものに!
と、野心の固まりとなっていた、天若日子さまには
天界からの伝令の雉は、“邪魔者”でしかありません。

天若日子さまは、天佐具売のいう言葉をそのまま受け取り、
なんと天照大御神さまから授けられた
櫨(はじ)という木で作った天之波土弓(あめのはじゆみ)と、
天之加久矢(あめのかくや)を持ち出してきて
……。

なんと、桂の木の枝に止まる雉の鳴女に向けて的を絞ると
天照大御神さまから賜った弓矢を放ち、
射殺してしまったのです!!!

画像3


放たれた矢は、ものすごい勢いで桂の木で
言向けしていた、雉の鳴女に命中!


バサっ……

声を出す間もなく、雉の鳴女は、木の枝から落下し
雉の鳴女は、そのまま命を落としてしまいました

天若日子さまの放った矢は、
雉の鳴女の胸を突き抜けて
さらに空の彼方へと飛んでいき、天高く舞い上がっていきます

やがて地上から見えなくなってしまいました

画像4


還し矢恐るべし

雉の鳴女を射殺した矢は、なんと、雲を突き抜けて
高天原の天の安の河の河原にいらっしゃった
天照大御神さまと、高木神のもとまで
飛んでいったのでした……

高木神とは、高御産巣日神さまの別のお名前です。

高木神は、飛んできた矢を手に取りてみて、
驚き息を呑みました。

矢の羽には、血がついています

こ、これは……この矢は、天照大御神さまが
地上へ遣わせた天若日子にお授けになった矢ではないか!
なんということか……。


天照大御神さまも、その矢をご覧になり、
天若日子は、裏切ったのか?
どういうことなのだろう?
雉の鳴女は、無事なのか?
驚きとともに、困惑、嘆き、失望、様々なお気持ちが沸き上がられます。

高木神は、八百万の神々にも、この血のついた矢をお見せになり
そして、祈りを込められると、皆にむけてこう宣言されました

もし、天若日子が、悪い神を射た矢であるならば、天若日子の身には当たることなくあれ。
けれど、もし天若日子が、邪な心を抱いているのであれば、この矢が当たり、天若日子が死んでしまうがよいっ!!!


そう唱えると、血のついた矢を手にして、
地上からこの矢が飛んできたことで、あいた雲の間の穴から、
この矢を、地上へと射返しました

画像5

ヒューッ……

血の付いた返り矢は、ものすごい早さで
そのまま豊葦原中つ国の出雲の
天若日子が、まだ寝床で、朝寝していた天若日子の胸に
まっすぐに突き刺さりました

天若日子は、絶命したのでした

このことから、射返された矢、還し矢と呼ばれ、
還し矢は、必ず命中する「還し矢恐るべし」
という言葉が生まれたそうです。

また、雉の鳴女は、犠牲となり還ってくることができませんでした。
そこから、「雉の頓使」(きざしのひたづかい)という、
行ったきりで帰ってこないお使い”という諺の元になったと伝わっています。
今でいう、「梨のつぶて」ですね。

神話は今も生きている……。

天界と地上の関係……どうなるのでしょうか?

画像6

―次回へ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?