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ショートショート

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#短編小説

ショートショート 「妻の機嫌が悪いわけ」

妻の機嫌が悪い。 朝からずっとだ。 もっとも機嫌が悪いのは今日に限った話ではない。 半年ほ…

ことぶき寿
10か月前
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ショートショート 「余命を友に」

彼は瀕死の友に付き添っていた。 「やっと日の目を見たばかりだというのに、余りに殺生じゃな…

18

ショートショート 「Neet Neet Neet」

鈴木太郎、28歳。 彼は生まれてこのかた仕事をしたことがない。 親が資産家なので働かなくて…

34

ショートショート 「石橋の親子」

夕暮れ時、石橋のたもとに親子がいた。 ふたりの背丈がおなじに見えるのは父がしゃがんでいる…

12

ショートショート 「哀悼せよ」

火星出身のラッパーMCま~しゃんが、ドレミー音楽祭で新人賞を受賞した。 流暢な地球語で歌っ…

19

ショートショート 「自罰・イン・ザ・パーク」

ジョギングはいい趣味だ。 なんと言っても金が掛からない。 夜8時、俺は公園内のジョギングコ…

10

ショートショート 「薬に頼らない治療」

心療内科を訪れていた。 ここ最近、眠れなくて困っているのだ。 「とりあえず睡眠導入剤を出しておきましょうか」 「先生。私、薬が好きじゃないんです」 「あー。そうなんですか」 「すみません、わがままを言って」 「いえいえ。じゃあ、アレ試すか…」 「アレって?」 「いやね、よく効くのがあるんですよ」 「薬以外で?」 「はい。もちろん保険適用外になりますがね。税込15,070円です。高価ですが、そのぶん効果は抜群ですよ。あは、あははは…」 「…」 「失敬、失敬。まあ身体に合ったら

ショートショート 「逢えない訳」

土曜日の夜10時過ぎ。 女がふたり、駅前のファミリーレストランでコーヒーを飲んでいた。 ひ…

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ショートショート 「感謝の気持ち」

ここはテレビ局の収録スタジオ。 数分後に生放送を控えているため、空気がぴんと張り詰めてい…

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ショートショート 「覆面」

そろそろ日付が変わろうかという頃、インターホンが鳴った。 私はびっくりしてビールをこぼし…

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ショートショート 「かけなかった私」

私が初めて女性と外食をしたのは高校生の時のことでした。 学習塾の帰りに同じクラスの女生徒…

29

ショートショート 「要らないもの」

居間でタバコを吸いながらテレビを観ていると台所から母の声がした。 「仕事もしないで朝から…

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ショートショート 「J刑事」

張り込み開始。 「動きがねえな」 「...」 1分経過。 「ホシは俺たちが張ってることに気付…

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ショートショート 「ナマケモノの恩返し」

昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 ある春の日のこと。 おじいさんはゴルフ場へ芝刈りのアルバイトに、お婆さんはコインランドリーへ洗濯をしに行きました。 おじいさんはいつも国道を歩いて通勤していましたが、この日は一部区間が落石のため通行止めになっていました。 仕方なく並行して走る山道に入ったおじいさんは、その道中、木の根本でぶっ倒れているナマケモノに遭遇しました。 放っておけばいいものを、心優しいおじいさんは背後から両脇を抱え上げてナマケモノを木の幹