見出し画像

お帰りなさい。

バシっ!と手が出る。痛いし。

「寝ない!」「立たない!」そう言って、車椅子から体を離すことを拒否する。

お昼ご飯の後に、横になって体力つけて欲しいのだ。消化にエネルギーを使うためベットに横になって体力を回復して欲しい。あなたのことを想って、体を抱えようとしているだけよ。ベイベー。

その方は、二週間まえにコロナに感染した。

二週間まえ、高齢でありその時点で立つことが難しい状態であったため、コロナに感染し入院したと聞いて、もうお会いすることができないかもと覚悟をしていた。

二週間前のその人は。

手を出す。噛む。腕をチネる。ぺっ!とする。
「そんなんせんでもええ!」「がおぉ!」。

そのひとつひとつの行為が、その人。

憎めない。嫌いになれない。
どの行為も猫の甘噛みのような、相手の痛みを把握している力加減だから。そして、おだやかな時はだれよりも優しい声で優しいから。

退院してまもなく来所された。その時は、終日目を閉じたままリクライニングの車椅子から離れることができなかった。水分もご飯も、ほとんど食べられない状態だった。

それから二週間が経ち。

手を出す。噛む。腕をチネる。ぺっ!とする。
「そんなんせんでもええ!」「がおぉ!」。

お帰りなさい。
戻ってきた!。
戻ってきた!!。

元気な証拠。どんな表現でも構わない。

その人らしいなら、なんでもいいよ。

チネられた腕が、少し痛もうが。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。