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わたしすら、わたしを知らない。

自分が何を考えているのか、それを言葉にするのは難しい。

そもそも言葉にできないということは、理解しきれていないのだ。

こうだと思っていたけれど、言葉にするとなんだかしっくりこない。そんなとき、言葉なんかじゃ気持ちを表せない!と匙を投げたくなるが、実際は分析が足りていないだけだったりする。

細かくいうと、完全に言葉に表し切るということは確かに不可能かもしれないが、よりしっくりくる説明は必ずある、という感じ。


これは、生活している中でもひしひし感じる。

「私って、将来役に立つかどうかでものを選んじゃうんだよね。だから勉強も頑張れるんだと思う。」と言った後に、絶対役に立つとわかっている外国語の授業を取りたくないと思う自分に気がつく。

そして、将来役に立つだけではなく、今楽しめるものじゃなきゃダメなんだと、さらに事実に近い説明を見つける。

この説明もいずれ、今私この説明と真逆の行動をしたよね?あれ?と疑問を生む。そうやって、少しずつ少しずつ、本当の自分を知っていくんだと思う。


クィア・アイというNetflixの番組がある。FAB5と呼ばれるゲイの5人組が、イケていない人を内面から生まれ変わらせるという内容。

シーズン3の第2話では、キャンプ場で熱心に働く中年男性・ジョイを変身させた。

ジョイは、キャンプ場で熱心に子供達を率いる一方、自分の服装や住まいにはお構いなし。最低限のものを詰め込んだキャンピングカーを寝床とし、お風呂も数日に一度はいるだけといった調子だった。

FAB5に会った当初、ジョイは「これが自分にとって最低限必要なもので、ただこれ以外いらないだけなんだ。おしゃれな服も似合わないし。」と話していた。

しかし、Fab5と一緒に新しい服を選び、髪型を変え、たくさんの温かい言葉をもらううちに、ジョイの中に自分を変えようという意識が見え始めた。

そして変身も終盤に差し掛かった頃、お披露目パーティーを目前にして不安がるジョイを、FAB5の一員・カラモが励ます。

カラモ:自分が主役になったことある?
ジョイ:今までに一度もない。
カ:それが今夜だ。君には、主役になる権利がある。僕と一緒にそう言ってくれるかい?
ジ:あー…えーっと。僕には…その価値がある…気がする。
カ:違う。「僕には、その価値がある」だよ。ほら!
ジ:僕には、その価値がある。
カ:最高!君を誇りに思うよ。

ただ繰り返すだけなのに、ジョイは「自分には主役になる価値がある」と言いきれなかった。

離婚も含め、さまざまな悲しい経験を通して、ジョイはいつの間にか、自分には幸せになる権利がないと思い込んでいたんだと思う。

暮らしや服装が粗末だったのは、当初ジョイが説明していたように、豪華なものや楽しいことが不必要だったわけではなくて、自分には権利がないと避けていただけなのだ。

きっとジョイは、嘘をついていたわけではなく、そのことに気がついてもいなかった。


私たちは、他人の気持ちがわからないと頭を悩ませる。理解ができない、と文句を言う。

でもみんな、ジョイのように、自分のことすら分かっていないのだ。本当の気持ちも、何がしたいのかも、何が心を動かすのかも。

でも、自分のホントを説明できるのは、自分だけだ。その事実に変わりはない。

だから、自分とは全く違う人との会話や、自分ってこうだなという思考を通して、少しずつ自分を知っていこう。

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