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適切なゴール設定の極意: 致命的な5つの設計ミスとその回避法

こんにちは @kossmori です。アメリカのスタートアップでプロダクトマネージャーをしています (アメリカ市場のグロースを担当)。普段からクオーター毎に組織のゴール設定をしてるのですが、相談を受ける機会が増えてきたので、ゴール設定の極意について書いてみようと思った次第です。テンプレに関しては最後のほうに記載してます。

ゴール設定は成功への設計図

適切なゴール設定はスタートアップの成功に不可欠です。ハイパフォーマンスなチームやスタートアップの絶対条件であり、成功に近づくための取り組みをまとめた設計図なんです。

レシピと食材と実行できる環境が無ければ料理が作れないのと同じで、正しいゴール設定には正しい材料が必要です。

適切なゴール設定の3つの要素

適切なゴール設定とは、大きく分けると以下の3つが満たされている状態です。

・適切だが野心的な目標を設定することができていること (Objective)
・目標に対する実行プランを描き、行動に移せること (Milestone)
・それを達成する能力、リソースを用意できていること (Feasibility)

要は SMART ゴールですが、シンプルなはずなのに機能しないのは、どれか1つでも設計が不十分だと全てが成立しなくなるからなんです。

設計ミスの5つの要因

設計ミスの原因は、ほとんどの場合以下の5つのどれかが欠けていることによります。

・自身でコントロールできる出来事と、外的要因に左右される出来事の区別
・先行指標 (Leading Indicator) と遅行指標 (Lagging indicator) の区別
・明確な基準値 (Baseline) の設定
・途中経過が測定できる仕組み
・優先順位づけと、トレードオフ

これが何を意味するのか、ダイエットに例えて説明してみようと思います。

「10キロ痩せる!」

これを正しいゴール設定の視点で深堀りしてみると、かなりの間違いが見つかります。

ゴール設定の間違い その1:

自身でコントロールできる出来事と、外的要因に左右される出来事を区別できていない

人間の体は、水分、脂肪、骨、筋肉などで構成されています。まず、「10キロ痩せる!」という宣言は、4つの構成要素に対して何をどうしようとしているのかが分かりません。骨を10キロ減らしても、水分量を10キロ減らしてもゴール達成ですが、多分死にます。そうなると、脂肪を減らすか、筋肉を減らすかのどちらかになりますが、実はどちらもあなたが直接コントロールできる出来事ではありません。なぜでしょうか。

「体重が落ちた」という出来事は、日々起こしたアクションの結果なのです。脂肪1キロはだいたい7700キロカロリーなので、10キロの脂肪を燃焼するには消費カロリーが摂取カロリーを77000キロカロリー上回る必要があります。あなたが直接的にコントロールできる出来事に近い指標は、消費カロリー (運動と基礎代謝) 及び摂取カロリー (食事) であり、脂肪や筋肉量ではないんです。

体内の水分量や体重計に乗るタイミング次第で体重が1-2キロ変わるのは当たり前。更にいうと、基礎代謝を上げることと運動量を増やすことは、筋肉量を増やすこととほぼ同義で、筋肉は脂肪よりも密度が高く同体積あたりの重量が重い組織なので、7700カロリーを消費しても1キロ体重が落ちるとは限りません。

「10キロ痩せる」という宣言そのものが、様々な外的要因に影響をうける不安定なゴールだと言うことがわかるかと思います。

ゴール設定の間違い その2:

先行指標 (Leading Indicator) と遅行指標 (Lagging indicator) が区別できてない

あなたが直接コントロールできるのは、先行指標のみです。遅行指標は、先行指標に何か変化を加えた結果、数日、数週間、数ヶ月遅れて結果として現れてくる数値のこと。

体重と消費カロリー、摂取カロリーの関係性においては、体重は遅行指標 、消費カロリーと摂取カロリーに直接関わるものが先行指標 です。

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この因果関係を理解していないままどんなに遅行指標 (ビジネスで言えば売上、リテンションなど) を改善しようとしても、なにも生まれません。

ゴール設定の間違い その3:

明確な基準値 (Baseline) がない

遅行指標を「改善」するためには、あなたの指標の現状 ( 基準値: Baseline ) と、そこにどんな変化を加えれば遅行指標が動くのかを理解していなければいけません。

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現状がわかって初めて、先行指標のどこにどれくらいの変化をつければよいか分かります。週7で運動をしている人が運動量を2倍にすることと、週1で運動をしている人が運動量を2倍にすることは、現実可否も含めアプローチが全く異なるからです。これが無いと行き着く先はがむしゃらに頑張ったあとのバーンアウト (燃え尽き症候群) です。逆に達成の可能性を感じれる目標はモチベーション維持に繋がります。

例えば:

・運動量を 20% 増やす ( 1万歩/日 → 1.2万歩/日)
・強度と頻度を 200% 増やす ( 1筋トレ/週 → 3筋トレ/週)
・日々の消費カロリーを13% 向上する (2200kcal/日 → 2500kcal/日)
・摂取カロリーを10%減らす (2200kcal/日 → 2000kcal/日)

こうすることで毎日の摂取カロリーが消費カロリーを 500kcal 下回ることができるため、5ヶ月間毎日毎週これを続けることで、77000kcal 余分に消費できる。そうすれば約10キロの脂肪燃焼が期待でき、体重または外見に変化を生むことができるはずです。

ようやく、少なくともアクションが取れそうなゴールに変わってきました。

ゴール設定の間違い その4:

途中経過が測定できる仕組みが無い

継続的に改善を続ける、もしくはゴールに向かって前に進むためには、経過観測できる必要があります。これがマイルストーンです。

マイルストーンを達成することで、定めた目標に高確率でたどり着けるようにデザインされていなければ、正しいゴール設定ではありません。

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週3ではなく週2の筋トレが続いていたら、消費カロリーが目標に届いていないかもしれません。2500kcal 摂取の日々が続いていたら、遅行指標への変化はきっと無いでしょう。

もちろん現実においては、マイルストーンを 100% 達成しても、定めた KPI や目標を達成できないことはあります。もちろんその逆もありますが、経過測定可能なマイルストーンは、目標に対してのアクションが取れているのかいないのか、軌道修正が必要なのかどうかを明確にすることができます。

ゴール設定の間違い その5:

優先順位づけからくる、トレードオフが考慮されていない

ここまでで描いたゴールは、なんとか現実の範囲内に収まってはいそうです。しかし、何を引き換えにこの目標に立ち向かうのでしょうか?リスクは何でしょうか?

トレーニングを週1から週3に増やすためには、日々の何かを犠牲に (トレードオフ) しない限り、そのリソースを確保することはできません。それは仕事なのか、睡眠なのか、家族の時間なのか、飲み会なのか、リラックスの時間なのか、お金なのか。
何かを優先するときは、必ずトレードオフが発生します。

そのトレードオフは本当に可能なのか、持続的なのか、冷静に見極めなければいけません。そして、それらはあなたが自分の力でコントロールできる出来事の範囲内に収まっているのでしょうか。

「頑張る」は解決策ではありませんよ。トレードオフ無しに頑張った先にはバーンアウト (燃え尽き症候群) が待っています。

トレードオフの難しさ次第では、5ヶ月プランではなく、7ヶ月プランが野心的かつ現実的なゴールなのかものかもしれません。

適切なゴール設定の例

ダイエットという1人で実行できるプロジェクトでも、正しくゴール設定をするためにはここまで要素分解が必要になります。

ダイエットを例とした 適切なゴール設定を以下にまとめてみます。

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これをやりすぎと感じますか?それとも適切と感じますか? 組織のゴール設定も思想は全く同じです。ただし、複雑さは指数関数的に増えます。

本当の目標設定は、がむしゃらに努力することでも、馬力でなんとかすることでもありません。残念ながらそれらはゴールに向かって前に進むための大前提で、成功への設計図とは根本的に異なるものです。

ゴール設定テンプレートの入手の方法

ここまで読んでいただきありがとうございます。本当にお疲れさまでした!!テンプレが欲しい方は、Twitterでご連絡ください。このNoteのリンクを張って @kossmori テンプレ気になる や、テンプレ欲しい と投稿いただけたらすぐ気づけます

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あなたの組織は SMART ゴールを設定できていますか?

最後に、ゴール設定に関わる僕のお気に入りの引用句をお教えします。

“If you don’t know where you are going, any road will get you there”
- ルイス・キャロル (不思議の国のアリス)

“A goal without a plan is just a wish”
- サン=テグジュペリ (星の王子さま)

終わりに

ゴール設定はとても難しく奥が深いですが、毎クオーター繰り返していると、ある程度の精度で短い時間で設計できるようになっていきます。まずは諦めず、数回試して見てください。

今後も内容の濃くクオリティ高めのものを投稿しますので Twitter チェックしてみてください

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