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映画『ニトラム』を観て

 社会に馴染めない者を扱った作品には、昔から否応なく惹き付けられる。それは自分が社会の一員であるということを胸を張って言えない種類の人間であることに起因している。

 自分に自信がないのは然ることながら、実際、同世代における社会的地位や身分、人脈、収入などを比較してみると、私は圧倒的に落伍者である。(「比べる」ということさえ適当ではないほどに、私が所有しているものはなにもないのだが)
 三十歳独身、リア友なし、高卒、特筆すべきスキルなし、仕事の経歴は比較的楽なバイトをいくつも転々としてきたフリーター。肉体的にも精神的にも病名が付くほどの病もなく、ごくごく平凡な人間だ。ただ脆弱なのは、社会への適応力と忍耐力が著しく低い、ということだ。
「今日は行きたくない」と思えば体調不良という嘘の理由で欠勤連絡。
「仕事に行くのがつらい」と思う回数が増えればそのうちすぐに即日退職するか、バックレる。バックレたあとの書類の提出や私物の回収をしに職場へ赴く気まずさは、何度学んでも懲りない。

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