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調弦したG線の上に弓を乗せ、ゆったりと滑らせる。 弦の振動が艶やかな木の空洞で花開き、…
ちょっとした冗談のつもりだった。 学生時代からの友人の美奈と飲みに行った帰り道。一緒…
恋煩い、という言葉が浮かんだ。 恋というもの、それ自体が病気なのだ。 恋に罹患した者…
磨き上げられた上品な木目の上で、金の天秤が鈍い光を返す。 蒼い血管の浮いた手が白銅の…
檻にいる。 僕は熊だから。 凶暴で、残忍な。 君を傷付けた、怪物だから。 檻の中…
見られている。 視線を感じる。歯磨きしていても、授業中のノートに落書きしていても、眠…
▼前の話 ▼第1話 ホウコはずっと書写をしていた。月が出てからも机に覆いかぶさるようにして続けた。 皆が寝静まり、小鳥の攻撃が止んだ夜明け前の静かな時、足を引きずり、身体を揺らしながらホウコはぼくのところにやって来た。 「オオアカさん、いますか?」 巣のところに声を掛けると、オオアカさんが細長い鼻を出す。 「オオアカさん、どうかわたくしを齧ってください。愛の花の根を傷付けないように、わたくしの肉を裂いて蔓を外してください。わたくしには愛の花のゆりかごとなる資
▼前の話 ▼第1話 日が昇って報告を受けた天使達は機嫌を損ねていた。 「神聖なる神の花…
▼前の話 ▼第1話 「今日も疲れたな」 案山子をするぼくの足元で老人が言う。 「読めな…
▼前の話 ▼第1話 「なあ、本当にこんなとこにいんのかよ」 「いるって。入ってくの見たも…
▼前の話 ▼第1話 日暮れ間近は水遣りの時間だ。 昼間の太陽で温まった水を、天井付近…
うちの子、手がかかって仕方ないの。 うちもよ。懐かないし、どこかおかしいんじゃないか…
▼前の話 祈りの声で目が覚めた。 重なり絡み合う数十の声。老人は低く、男は太く、女は…
真っ暗な空に小鳥が飛んでいる。 一羽や二羽ではない。何十羽もの白い小鳥が蛾のように、水晶板の天井に群がっている。 小鳥達はわずかに曇った透明な板を小さな嘴で叩く。氷の礫が降っているようなコツコツという音が温室に響く。満月の光を遮っていた小鳥に、ぼくは両手に一枚ずつ持った円形の鏡の片方を向ける。小鳥は鏡に映った自分自身の姿に驚いて、水晶に翼を打ち付ける。発光する鱗粉のような軌跡を残して小鳥は去っていく。そしてまた別の小鳥が現れる。その繰り返し。 「今夜は鳥が多いなぁ