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【小説】案山子 第6話
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▼第1話
日が昇って報告を受けた天使達は機嫌を損ねていた。
「神聖なる神の花をあなた個人の感傷のために貶めるなど、決してあってはなりません」
ホウコはひれ伏し、「申し訳ありません」と声を震わせる。
「あなたには期待していたのに。これは最悪の裏切りです。ああ、しかし、慈悲深い御神はお許しになるでしょう。ただし、嘘吐きの背信者が愛の花の苗床に相応しいかどうかは我々には判断できません。悔い改め、愛の花の裁きを待ちなさい」
申し訳ありません、申し訳ありませんとホウコは天使がその場を去るまで繰り返した。やっと上げた顔は涙で真っ赤だった。
ホウコはそれまで以上に書写に励んだ。歯を食いしばって自分に割り当てられた務めを早く終わらせ、筆の進みの悪い仲間の分までどんどんやった。
時折天使がやって来て声を掛ける。
「その程度のことでは償いになりませんよ」
「姿勢が悪いですよ。愛の花のために健康を保ちなさい」
「あなたのような人に託された株が一番の悲劇ですね」
「あなたを愛しておられた御神がどれだけ心を痛めていらっしゃるか……」
他の住人達は気の毒そうな視線をちらちらとホウコに送る。誰も何も言わない。天使の言うことは正しいから。いつだって。
▼最終話
▼短編集
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