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小説

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2022年2月の記事一覧

【小説】恋の病

 恋煩い、という言葉が浮かんだ。  恋というもの、それ自体が病気なのだ。  恋に罹患した者…

【小説】孝行者

 磨き上げられた上品な木目の上で、金の天秤が鈍い光を返す。  蒼い血管の浮いた手が白銅の…

 檻にいる。  僕は熊だから。  凶暴で、残忍な。  君を傷付けた、怪物だから。  檻の中…

死角

 見られている。  視線を感じる。歯磨きしていても、授業中のノートに落書きしていても、眠…

【小説】案山子 最終話

▼前の話 ▼第1話  ホウコはずっと書写をしていた。月が出てからも机に覆いかぶさるように…

【小説】案山子 第6話

▼前の話 ▼第1話  日が昇って報告を受けた天使達は機嫌を損ねていた。 「神聖なる神の花…

【小説】案山子 第5話

▼前の話 ▼第1話 「今日も疲れたな」  案山子をするぼくの足元で老人が言う。 「読めない文字を写すなんぞ、絵を描くのと同じだね。あたしゃ絵心がないんだ」  もう一人の老人が答える。 「しかも唯一の楽しみがあの食事じゃあな。二十年前に食べたきりのステーキが忘れられない」 「しっ、天使様のご厚意にそんなこと言うもんじゃない。天使様は食べ物を召し上がらないから仕方ないのさ」 「料理くらいさせてくれりゃあな……」 「刃物も火も危ないからね」  オオアカさんが老人

【小説】案山子 第4話

▼前の話 ▼第1話 「なあ、本当にこんなとこにいんのかよ」 「いるって。入ってくの見たも…

【小説】案山子 第3話

▼前の話 ▼第1話  日暮れ間近は水遣りの時間だ。  昼間の太陽で温まった水を、天井付近…

【詩】世界を潜る

 表層で溺れる日常を抜け出して  深いところへ降りて行きたい  世界の底へ潜水したい  世…

【小説】知ってるよ

 うちの子、手がかかって仕方ないの。  うちもよ。懐かないし、どこかおかしいんじゃないか…

【小説】案山子 第2話

▼前の話  祈りの声で目が覚めた。  重なり絡み合う数十の声。老人は低く、男は太く、女は…

【小説】案山子 第1話

 真っ暗な空に小鳥が飛んでいる。  一羽や二羽ではない。何十羽もの白い小鳥が蛾のように、…