「束縛」嫌う旅ブロガー医師が「定職」!? なぜ辞めぬか & 見切りをつけて辞めるとしたらどういった条件か
2019年より連載を2本もたせていただいております「m3.comメンバーズメディア」新着記事!
医師としてのキャリアとブロガー&毒舌コラムニストとしてのキャリアについて、毒を交えながら展開いたしておりますが、
今回、医師会員に限定公開している内容をそっくりそのままお届けします!
このところ、若い医師の間で、曜日や時間にとらわれない働き方が増えているとうかがいました。
常勤・定期非常勤ではなく、スポット(=日雇い)勤務のみで生計を立てる、それがいいじゃんという考えが注目されてきているとのこと。
かくいう私も、以前、いずれ医業を辞めてフルリモートで働くべく、その道を模索していること、今、月~水にレギュラーで働いているところも、夢の「ノマドワーク」実現に向けてそろそろ見直しにかかろうかなとすら思っていること、それに加えて、その月~水の定期非常勤をゼロにし、全てスポット勤務としてしまうのも良さそうだ、といったことを書かせていただきました(※1)。(※1 該当記事は文末のリンク参照)
が、結論から申し上げると、週2.5日の定期非常勤について、見直してみた結果、私自身はまだ辞める時期ではないな、という考えに至りました。ここがなくなれば「旅する生活」に一切の「足かせ」がなくなるのに、どうしてなのでしょうか。
そして、
医師免許があるんですから、職場にしがみつく必要ナッシング。
ここで線引きをする、という基準を設けており、実際、今の勤め先のクリニックで経営者が変わった時、そこに当てはめて様子を見させていただいていたことは事実でございます。
この定期非常勤がなくなれば「旅する生活」に一切の「足かせ」がなくなるところですが、そこで得られた長年の信頼や実績はなくなり、また一から始めなければならなくなるわけですから、大事な決断です。
さて、どこで線引きをするのか。
今日はその2点を書き進めていきたいと思います。
定期非常勤をベースとした「旅ブロガー複業」の現況
現在の「定期」非常勤、つまり、有給休暇を除いて、毎週必ず同じ時間に出勤せねばならない時間というのが月火水の週2.5日、ということですが、正確に申し上げると、職場は1ヶ所のみ、月曜は午後勤務のみ、火曜・水曜は午前・午後1日勤務の週2.5日。午前・午後1コマ3時間ですので、週あたりの実働時間は3×5コマ=実働15時間です。
ブロガー副業が軌道に乗るまでは、月火水で勤務しているこのクリニックに加え、木曜日に別のクリニックでもう7時間働いていたわけです。が、2020年の12月、木曜の職場を「クビ」になりました(※2)。(※2 クビ騒動の詳細は末尾にリンクあります)
そこから今まで木曜にしていた定期非常勤のお仕事に対して、補充は「しておりません」。「収入が減っても困らなかった」「自由な時間が増えるということのほうが、メリットが大きかった」ためです。よって、その頃から今まで、医業としての年収は3割減のままでございます。
一方、2019年1月に開業届を出した「ブロガー複業」における「事業収入」はじわじわ増え、昨年とうとう「パート主婦」の平均年収(約120万)を上回りました。
ブロガー複業の収入源はm3.com・メンバーズメディアさんの連載における原稿収入、医師ブロガーという立場を利用した商品の監修・PR、最近またハマりはじめた「韓流」がらみのコラムライティング、そして最近お声がけいただいたアメブロ運用代行ビジネスなどが該当いたします。ただ、これだけ「複業」していても、まだ「クビになった週1回分に該当する医業(給与)収入額には達していない」です。
これまた以前、記事ででお伝えしましたが(※3)、私のモチベーションやエネルギーの大部分はこのブロガー複業に注がれているものであり、「主収入」である医業に対するモチベーションとは比べ物になりません。(※3 詳しくは文末のリンク参照)
日頃から「医業を副業にしたい」とほざいておりますが、モチベーションが低い地点ですでに医業は副業となっているのかもわかりません。
こうした前提のもと、仮に月火水の週15時間勤務をなくし、同じくらいの額を好きなところでスポット勤務をしてお金を稼ぐことができれば、好きなところで、好きなだけ働ける環境が整うというのに、なぜしないのか。
皆様、いろいろ想像されるでしょうが、
実は、その理由を編集部の皆様にシェアしたら、こう指摘されたんですよ。
「金銭面の話がほぼないのが印象的ですね」
と。
定期非常勤、なぜ辞めぬか
先に書きました「私のお財布事情」を知れば、ここで月火水の仕事辞めたら、どう考えたって「旅する女医」生活、ままならなくなりますやん!?
普通はそう想像されるでしょうか。が、編集担当さんからのご指摘通り「金銭面の話がほぼなし」ということは、お金に困るから、という理由ではないということ。実際、金額だけを考えるなら、日雇いだけでも賄えると思っていますので、お金が理由ではございません。ではなんなのか?
一言でいうと、「金銭以外の部分」で辞めることにおけるデメリットが、「時間に制約がなくなる」メリットを上回る、と判断したからです。
編集部の皆様宛てに書き出したもの、ほぼそのままお披露目いたしますとこんな感じでございます。
まずは仕事面。
・今の病院にはブログを始めた年月と同じだけ勤めていて、縁を感じる
・看護師や事務スタッフの離職率が低く、勤務開始時からスタッフの出入りが少ないため、「なじみの皆さん」と、お互い「ツーカー」で働けている
・1年前、経営者が変わったのだが、前院長→現院長ともに変わらず、自分の専門分野や旅する生き方をリスペクトしてくださっており、難しく、やりがいのある症例をお任せいただけていると感じる
「超ホワイト経営」
・経営者が社労士さんの指導のもと「労働基準法」をきちんと理解されており、遵守する必要性をしっかりご理解いただいている
・それに従い、有給休暇は問題なく取得できる
・勤務年数が長いため、有給休暇取得日数が多い
あと、皮膚科・美容皮膚科に勤めることで得られるメリットも見逃せません。
・クリニック限定コスメや飲む日焼け止めを納入価でお分けいただける
・レーザーも打たせていただいております(これは自分で自分に打ってますけど)
ね、
「金銭面の話がほぼないのが印象的ですね」
でしょw
そして、スポット勤務では享受できないメリットばかりですよね。
アタリマエです。
仕事というのは「同じところで長く勤める」からこそ信頼感というものが蓄積され、「同じところで長く勤める」からこそ得られるメリットという部分があります。そこを忘れてはならぬのです。
「お金」は目標であって、目的ではないのです
勤務医としてなら、年収600万~1800万のラインは、やり方次第でどうとでもなる金額です。私自身は大学病院時代から「収入が一律」だったことはほとんどないですので、常勤で固定給云々、という感覚も、考えもなく、このあたりの年収であれば、定期非常勤とスポット勤務で「調整していく」ことは慣れっこです。
ゆえに、定期非常勤にするか、スポット勤務にするか、そこは金額で決めるのではなく「金額以外の要素」で決めているのです。
仕事というのは、いきなり「やりたいことばかり」舞い込んでくるわけではありません。むしろ、当初の目的ではない仕事内容でも、長年続けて信頼関係を築くことで、本当にやりたい仕事を任せてもらえる、ということもあります。これはなにも医業に限ったことではございません。
実は私、スポット勤務に至っても、最近は「昔スポット勤務をしたことがあるところ」のオファーのみ見ているし、お引き受けしてたりします。「お互い知った仲」での契約というのは、それだけで時間のロスやストレスが軽減されますから。
じゃあ「お金」はいらないの?
いやいやw だからこそブロガー複業始めたのですよ。
ここから先、年収3000万、5000万となったとき、勤務医を超える領域、となるわけです。開業医となった場合、院長を雇って経営に専念するとかでなければ、皆様、年末とGWとお盆しか休めない生活。
これ、自分の理想ではありません。
自分の理想はあくまで時間の制約を受けず、この年収を目指すことです。
正確にいえばこの年収自体が目標なわけではなくて、この年収をもって、次にやりたいこと(飛鳥IIで世界一周、不動産投資など)があって、そこが本来の目標です。(もちろん、究極の目標は世界征服です笑笑)
が、これも「お金を稼ぐこと」が主たる目標ではないです。
「目標の年収」とは言いますが、結局は、
その額を稼げるようになってしまうまでの「過程」が楽しい
ということなのでしょう。
「年収」を目標にしてしまったことで、その額を稼げるようになった地点で目標を失い、かえって不幸になってしまう「お金持ち」は、たくさんいらっしゃいます。
目標を達成したところで、そうなってしまうのでは意味をなさないですし、
今世でその目標年収を達成できなかったとしても、それはそれで「来世以降のお楽しみ」なんです。
とはいえ、以前、起業するのであれば「失敗」を恐れないマインドは必要であると書いたところでした(※4)けれども、そうは言っても、失敗するリスクを最小限にする努力もせずに、無謀な挑戦をするのもダメです。(※4 詳しくは文末のリンク参照)
今の定期非常勤クリニックを辞めることはいつでもできる。しかし、起業がうまく行かなくなったとき、「同じ条件での再就職」はほぼ不可能です。ならば、「安定収入」を得ながらゆる~く起業に挑戦すべきだと私は考えます。
が、定期で働くメリットが、スポットで働くデメリットを下回った場合は、その限りではございません。医師免許があるんですから、職場にしがみつく必要ナッシング。実は私自身も、ここで線引きをする、という基準を設けており、実際、今の勤め先のクリニックで経営者が変わった時、そこに当てはめて様子を見させていただいていたことは事実でございます。
上司もしくは経営者が「やる気のある無能」であったとき
かのナポレオンは戦力を、
・やる気のない有能
・やる気のある有能
・やる気のない無能
・やる気のある無能
の4つに分類し、
やる気のない有能は、幹部や軍司などに
やる気のある有能は、前線の指揮官や軍曹に
やる気のない無能は、前線に送り込み
やる気のある無能は、「今すぐ殺せ」
と説いたと言います。
このナポレオンの見解をもとに、医師として、起業家として、一緒に「組む」ことでプラスになる人とそうでない人を考察してみましょう。
自分よりポジションが下の人間で代表的なタイプというと、血気盛んな研修医や若手医師が該当するでありましょう。そこはなんとかコントロールできそうなものですが、問題は自分の上司あるいは雇い主の場合。具体例としてはこんな感じの人たちがいた場合です。
・自分は「やる気に満ち溢れている」が、能力がない→社員や部下に同じ「熱意」で働くことを「強要」する
・自分の能力を把握していない→自分にはできない仕事を引き受けて、案の定ミスを犯す
・きちんと指導できない(=パワハラ)
・その割に成果があがらない
・そのしわ寄せが下にいく→賃金があがらない、ボーナスが出ない、残業が増える、休みがとれない、妊娠や出産しづらい雰囲気、産休がとれない、などなど
結果、すさまじいブラック企業が出来上がるか、経営者(院長)ですと、事業が潰れます。
今のご時世、経営者たるもの労働基準法=労働者の権利を順守しながら黒字を出せることが能力として当たり前に求められるので、雇われの身としては経営者さん、タイヘンねーてな感じですけどね。あ、自分もまかり間違えば経営者になるかもしれないのでした笑笑
無能力な人間は無能力ゆえ、自分の実力を客観的に把握できていない、もしくは大概は過大評価してるので、自分が診られない患者を引き受けて、半ば医療ミスと言ってもいいくらいの事態なのに、それがわかっておらず、気づいたらその患者さん、エラいことになってる、なんてケース、医者をやってれば一度や二度は経験あるじゃないですか? まさにそれです。
若手がそうなりそうなら、指導者としてストップせにゃならんし、上がそのような場合は、さっさと逃げないと尻拭いさせられかねません。
今の私に「やる気のある無能」を殺害する権限はないですが、自分の中でいち早く抹殺する、あるいは亡きものにする術は身につけております。「医師免許」です。これがあることで、今の勤め先にこだわることなく「やる気のある無能」との関わりを断ち、自分の中でそいつはいなかったことにできる、最強カードです。
本当に能力のある人間というのは「これは自分の得意分野ではない」と、卑屈になることなくはっきりと言えるものです。そのうえ、格下の私相手であっても「えりお先生、代わりにこの患者さんを診てもらえないだろうか」と堂々とお願いされます。これができる上司や経営者であれば、しばらくそこを辞めずに、面倒みてもらう or 雇ってもらっておくのも吉です。
「仕事を任せてもらえない」と言う前に
自身が「やる気のある無能」化してない?
「やりたい仕事を任せてもらえない」「望まぬ部署に飛ばされた」といった理由で辞めようとするケースもあるかと思います。が、そんなとき、ケツをまくる前に、まず見直したいのが「自分の能力を客観視できていない可能性の有無」です。
仕事を任せてもらえないのは、本当に不当な措置なのか、それとも、自分に相応の実力がないと周りが判断した結果なのか?
そこを可能な限り、客観的に「見極める」必要があります。
「嫌がらせ」で仕事を任せなかったところで、それで回っていく仕事というのは、まずないわけですから、意外にも後者なことは多いです。
自分のやりたい仕事を任せてもらえない、というのは、まだその仕事に対する信頼が得られていないから。もし「自分に相応の実力がないからでは」、ということを感じられたら、そこは事実としてきちんと認める「謙虚さ」が必要です。これはむしろ、大きい組織で安定収入を得ているとき以上に、雇用形態がフレキシブルになればなるほど、必要になってきます。
私が大学病院、さらに詳しくは形成外科の医局をやめる前、主任教授に言われたのが「君のやってることは、代わりにできる者がいる」です。
この一言で、大学を辞めようと決めました。が、では、この教授の一言は果たして不当なものだったのでしょうか?
答えは「ノー」です。仕事というものはよほどのことがない限り、自分の代わりはいくらでも補充できます。現に、大学病院時代、自分が作った体制を、今でも後輩たちが維持している「らしい」ので、そういうことです。
では、そこで形成外科の医局に見切りをつけ、皮膚科非常勤のみで、大学でもらっていた給与以上の額をもらいながら「回せる」かどうか?
これは「イエス」です。別に自分の独りよがりでもなんでもなく、形成外科医局時代の師匠、すなわち直属の上司に辞意を伝えたところ「確かに今の君なら、どこに出ても恥ずかしくない実力があるし、食いぶちには困らないだろう。大変惜しいが、今が(旅するフリーランスを目指す)その時なのかもしれない」という一言をいただきましたし、皮膚科の師匠にも「今の君なら、皮膚科医としても十分やっていけるだろう」と、形成外科・皮膚科2方向からの「社交辞令抜きなお墨付き」をいただいております。
私は「教授からの言葉を不当なものと感じたから辞めた」のではなく、私がここで頑張ってる仕事は、所詮、他に代わりがきくものなのだ、と思ったから辞めたのです。なぜならば、代わりのきかない領域を目指したいから。
30代前半の若手の先生は、専門医をとるかとらないかの段階で「ブイブイ」になりがちです。
そもそも30代にそれがあってこそ、40代以降になって「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という領域に達するともいえますが、私はその頃、ブレーキをかけてくれる「師匠」がいてくれたからこそ、今自分をきちんと客観視し、律しながら、謙虚さを忘れずに旅ブロガー生活を続けられています。
が、もしその年代でブレーキ役の指導者がいない場合、自身の能力は過大評価しがちである、ということを常に心の片隅に置いて、「やる気のある無能」化せぬよう、日々心がけながら過ごすべきだと思います。
なんにせよ「辞める」のは「その先にプラス要因があること」が条件
仕事というのは、所詮は仕事なので、正社員にしろ、フリーランスにしろ、自分に相応の賃金を払う相手がいてこそ、のこと。相手がいる以上、自分の思い通りにならないことの一つや二つは当たり前です。
今の職場に不満があって辞めたとしても、また新たな場で多少の不満は生じます。ゆえに「不満があるから逃げ出す」辞め方では絶対成功しない。あくまで「新たな行き先のほうが、今よりプラス要因が多いから」でなくてはなりません。
そこと、先に申し上げた「自身が “やる気のある無能“化しないこと」が、おそらく、決断における2本柱となります。
私の場合に置き換えると、ブロガー副業で今の定期非常勤をはるかに上回る収入が得られるようになってしまった、ノマドワークもできる仕事のオファーが殺到して月火水に出勤するのが難しくなってしまった、くらいのことです。
もっとも、そのころになれば、全国に私の名前が知れ渡り、今の職場に出勤することがかえって先方にご迷惑になってしまう、くらいのレベルになってる可能性もありますが。
先ほど、成功するには「失敗」を恐れないマインドが必要であると書きました。
もしかすると失敗してみて初めて自分が「やる気のある無能」と化していることに気づくかもしれませんし、それはそれで大いに結構なことです。
が、そうは言っても、失敗するリスクを最小限にする努力もせずに、無謀な挑戦をするのもダメです。
今の職場を辞めることはいつでもできる。しかし、起業がうまく行かなくなったとき、「同じ条件での再就職」は不可能なことがほとんどです。そこを踏まえて、ゆっくり時間をかけて自分の置かれた状況、自分の現在の能力を客観視し、今の仕事を辞めて次のステージに行ったときに、今よりどれだけ明るい未来が見えてくるか、そこをゆっくり見極めてからでも遅くありません。
少なくとも私はもうしばらく今の月火水の定期非常勤を続けるつもりです。いざとなれば有給でぶち抜いて11連休とすればいいだけの話なので。
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