広島の盆灯籠
今年の夏、祖父の初盆があるのですが、コロナウイルスの影響で帰省を断念しました。同じような人は多いのではないでしょうか。
祖父と祖母(健在)は広島県の江田島出身で、わたしも小さい頃は祖父母と両親と長期休みにはよく一緒に江田島に帰っていました。
広島のお盆はとても華やかで大好きでした。お盆が大好きというと変なふうに聞こえるかもしれませんが、本当に華やかなのです。
こどもの背丈くらいある竹の端を6本に割いて、その骨組みにカラフルな和紙を貼った手作りの盆灯籠がお墓に立てられます。
お墓参りに来た人が、持ってきた灯籠にマジックで自分の名前を書いて、後に来た人が「ああ、〇〇さんもきてくれたんじゃねえ」とわかるようにすることもあります。多い時は何本もの灯籠がお墓を囲みます。
盆灯篭は、お盆前になるとホームセンターやコンビニにたくさん売られるようになり、調べてみると一本800円〜1000円くらいするそうです。そしてみんながそれを持ってお墓参りに行く景色は、広島でも一部の地域だけだそう。知らないことばかりでした。
昨年亡くなった祖父は20代前半で同じく江田島出身の祖母と結婚し、船に乗る仕事をするため江田島を出て北九州の門司港に移り住みました。
身内も誰もいない場所で結婚生活をはじめ、一生懸命仕事をし、家族も増え、家を買いました。そんな祖父は10年ほど前から認知症を発症していて、ここ数年は特に地元の広島に帰りたがっていたそうです。
デイサービスの送迎バスに乗りたがらない祖父がなんとかバスに乗るようにと、バスの運転手が【秋月行き】と書いた紙を持って迎えに来てくれたところすんなりバスに乗った、というエピソードをのちに母から聞いたことがあります。
地元を離れる寂しさというのは、わたしも経験しました。
けれど、50年以上前の広島と福岡の距離はそれはそれは遠いもので、祖父も祖母も大変寂しい新婚生活じゃなかったのかなあと思います。だから故郷を思う気持ちは、とても強かったんじゃないかなあと。
初盆に帰省できないけれど、祖父になにかできないかと考えた時、あの広島のお盆の景色を思い出しました。じいちゃん喜んでくれるかな。
お墓に立てているあの高さのものしかみたことがないけれど、もしかしたらコンパクトなものがあるかも・・・と調べたけど出てこない。現地で買って送るなら帰省してるのと変わらんし(東京在住)。
考えた末、身近にあるもので自作することにしました。
100円ショップでなんとなく使えそうな巻き簾を発見し、折り紙や半紙も購入。竹を手に入れるのも加工する道具もないので、このまま巻き簾を使って、サイズは仏壇サイズですることに。作るならとことん再現したくて、ネットでいろいろ検索して真似してみました。
ので、細かい地元のルールはよくわからないけれど、祖父がよく知っているあの景色の雰囲気作り、気持ちを最優先にして挑戦してみました。
ああ、巻き簾さん、あなたはこんな使われた方するために生まれたわけではないのにごめんね・・・南無。
巻き簾を解いてバラバラにし、6本を合わせて筒状に組み合わせる。
8〜10cmのところで折って(頑丈なキッチンバサミで少し切れ目を入れました。手を切らないよう注意)、傘のように広げる。
残りの竹を同じく折ってそれぞれの先にくっつける。接着にはグルーガンを使用。
じいちゃんは初盆なので白い和紙を使用。各角につけている金色の紙は「つの」「みみ」、紐のようなものは「そうめん」というらしい。ただし地域、作り手により異なる。七夕飾りのような「かんざし」をつけて、最後は持ち手のところにぐるぐるを細い紙を巻きつける。作ったのは下まで貼ってしまったけれど、半分くらいまでがスタンダード?なようです。
できた!
意外と完成度高めで嬉しい。
灯籠は自立しないので、ちょっとアレンジして立つようにしてみました。
初めてなので試行錯誤。意外と安定しています。
六面あるうち一面は上だけ貼って開けているのは(画像正面)、昔ろうそくを灯す時に使ったという説をどこかのページで読みました。風通しの意味もあるとか。その名残で開けています。ここにハスのシールを貼ったり絵が描いてるのがこれまたスタンダード?みたいですね!なにかいいのないかなあ。
その後、来年のカラフルなバージョンどうしようかな、折り紙でもいいけど本物の紙が欲しいなと調べていると、広島県にあるスミレ印刷さん(https://itp.ne.jp/info/343823403111351690/)が盆灯籠の材料を製造販売していることを発見。
個人の購入ですが快く販売していただき、取り寄せることができました。本当に嬉しかったです。ありがとうございます。(骨組みにする竹も買えるようです)
初盆用はあまり作りたくないですもんね、と白は少なめにしていただきそのお心遣いも嬉しい。
和紙は雨にも強そうな少しつるっとした感じで、うっすら模様も入っています。
かわいい。
色の順番はあるようで、これもネットの画像をみて真似して制作。正面に濃い青がくるように貼ってみました。飾りに関しては作り手によってかなり様々なようなので独自の感覚で貼ってみた。
仏壇の画像すみません。
第一作目を祖母宅に送りました。早速仏壇に飾ってくれたようです。
祖父と同郷の祖母ももちろん知っている盆灯籠。
「箱を開けた時、涙が出た。」と電話の向こうで言っていました。
本当に嬉しかったです。
祖父母はもう80歳を超えています。
福岡から広島はたとえ新幹線で1時間でも、そこからフェリーに乗り、さらに島内の移動は車が必要で、お墓があるのは山の上。歳を取っていなくても大変な旅になります。
そして今年はコロナウイルスで帰省を控える人もいて、いろんな事情で地元に帰れない人は全国にいるかもしれません。
また、灯籠にろうそくの火が移って火事になったり廃棄の問題で年々減っているという話も聞きました。
墓地全体が灯籠で飾られるあの景色とは程遠いけど、地元の人が離れた自宅でも「ああ、お盆だなあ。あんな景色があったなぁ。」と思い出すきっかけが身近にあればいいなと思います。元々ある記憶を、頭の中に残し続けながら想うお盆なら、どこででも大切にできる気がするのです。