読書感想文【世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド】村上春樹
ノーベル文学賞の季節になると
ハルキストの心をざわつかせるところまでが
風物詩であるので
秋になると思い出したように
手に取るようにしている村上作品
今年はその村上作品の中で最も好きな小説
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
を選んだ
もう何度読んだかわからない作品
それは私の人生の中で
「1番多く読んだ同じ作品部門」一位なのは
間違いないが
ここ5、6年は読んでなかったような気がする
まさにヤクルトの優勝間隔のようだ
ヘッダー写真に使ったが
私の本棚にはボロボロになった小説と
なぜか上巻が2冊あった
本好きあるあるよねー
世の中に村上春樹が好きな人はたくさんいるし
この作品なんて言うまでもなく
大人気作品だと思うので
私の感想文も今更ジローだが
本ってさ
何度読んでも読み手の経験値とか社会的立場とか
その日の気分とかそんなんで印象変わったり
響く箇所が違ったりするので
40代のハルキストの観点がそこにはあるので
書いてみようと思う
ちょうどプロの書評家が炎上しているしね
それはまた別の機会に記事に。
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす<僕>の物語、【世界の終わり】。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた<私>が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する【ハードボイルド・ワンダーランド】。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。<上巻>
<私>の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した<私>は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。<私>の行く先は永遠の生か、それとも死か?そして又、【世界の終わり】の街から<僕>は脱出できるのか?同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか?<下巻>
昭和63年の作品
この前の年にあの「ノルウェーの森」が大ヒットしていた
私は小学生だったので
なんとなく村上春樹って名前の作家の
ノルウェーの森って作品が大ヒットしている
と発信するテレビの情報番組の情景を
ぼんやりと覚えているが
子供が読むような作品でもないし(のちに判明)
ベストセラーの時期に村上作品に触れることはなかった
私が始めてこの小説を読んだのは
確か高校生の頃だったか
大学生の頃だったか
きっかけも思い出せないし
なんとなく村上春樹を好きになって
(どの作品が最初だったかも覚えていない)
「ねじまき鳥クロニクル」に感動したのは覚えているので
他の作品も読んでみようと思ったのかもしれない
でも正直「ノルウェーの森」は
今はあらすじも言えないし
面白かったと感じたのかもわからない
また読んでみようかね
なんだか全くキッカケなんて思い出せないが
この作品を読んだ時の衝撃だけは忘れられない
今よりも断然読書量は劣るし
小説の読み方も浅いし
なんと言っても人生がまだ短かった
世の中にこんな面白い小説書く人がいるんだ!
と感動したし
話の内容もさることながら
組み立て方に大感激したのだ
それまでの私は
パラレルワールドタイプの作品を
読んだことがなかったので
二つの物語が同時進行で進んでいき
最後にピッタリ合うことにいたく感動し
それから何度も何度もその感動を味わっている
あれから20年以上がたち
他の作家さんでも
パラレルワールド的作品を読む機会も
何度かあったが
その度にこの「世界の終わり」を思い出し
やはり秀逸だなぁと春樹作品に心を奪われるのだ
久しぶりに読み返すと
私の人生が幾分長くなっているので
また新しい発見や感じ方がある
大きな違いは
私が素人ながらも<書く>側の視点をもったので
この作品を<書く>に至る
キッカケのコアのような箇所を
勝手ながらいくつか発見できた
「きっとこの箇所は初期段階にあったな」とか
「このテーマとこのテーマを持ってたのかな」とか
遠藤周作やグレアムグリーンなども
小説家は小説を書くコアを温めている
というようなことを言ってたが
小説を書くことって
そういうコアというか思想を温めておいて
何かのキッカケでひとつにまとめていく
パズルのような作業な気もしていて
そんなことを感じながら読んだのは
もちろん今回が初めてであり
新しい私なりの読み方だったかなと思う
改めて読むと
私が好きな作家たちがたくさん出てくるのだ
フローベールやグレアムグリーン
サマセットモームにバルザックやツルゲーネフや
スタンダールなど
私の読書の方向性は
もしかしたら(無意識に)
村上作品に影響しているのかもしれない
とも思ったが
先に挙がった作家たちは
世界的に有名な大小説家なので
まぁ、だれの影響を受けようが受けなかろうが
どの小説家を通りすぎても
誰もが行き着くところなので
関係ないのかもしれない
全く読書感想文の程をなさなかったが
とにかく色褪せない作品
世界の名作にかたを並べる小説は
このような作品なのだろうと思った
私はちゃんと著者のメッセージを受信できているのか
次に読む時はメッセージの受信に重きをおこう
ということで長くなりましたが
最後に好きな文章をいくつか紹介して終わります
私はつねづねソファー選びにはその人間の品位がにじみ出るものだとーまたこれはたぶん偏見だと思うがー確信している。
ソファーというものは犯すことのできない確固としたひとつの世界なのだ。しかしこれは良いソファーに座って育った人間にしかわからない。良い本を読んで育ったり、良い音楽を聴いて育ったりするのと同じだ。ひとつの良いソファーはもうひとつの良いソファーを生み、悪いソファーはもうひとつの悪いソファーを生む。そういうものなのだ。
アイデンティティーとは何か?一人ひとりの人間の過去の体験の記憶の集積によってもたらされた思考システムの独自性のことです。もっと簡単に心と呼んでもよろしい。
「ツルゲーネフなんてそんなたいした作家じゃないわ。時代遅れだし」
「そうかもしれない」と私は言った。「でも好きなんだ。フローベールとトマスハーディーも良いけど」
「新しいものは読まないの?」
「サマセット・モームならときどき読むね」
「サマセット・モームを新しい作家だなんていう人今どきあんまりいないわよ」と彼女はワインのグラスを傾けながら言った。
「ジュークボックスにベニー・グッドマンのレコードが入ってないのと同じよ」
震えるよねー
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