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NYへ音楽留学したかった貧乏な僕。

僕は若い頃、何故か猛烈にNYに憧れていた時期がありました。まだ9月11日の同時多発テロが発生する遥か昔。90年代初頭のお話です。

きっかけは何だったのでしょう。当時はとにかく日本から出たかったのです。村上龍さんと坂本龍一さんの対談や、村上春樹さんの海外生活のエッセイや、もしかしたら田村正和さん主演のドラマ"ニューヨーク恋物語"にも影響を受けたのかもしれません。とにかくNYに暮らしたかったのです。若いっていいですね。

そんなこんなで僕は調べました。流石に不法移民にはなれないので、合法的に移住するにはどんな方法があるのかを。

そこで判明した事は…。

ビザを取得する必要があるらしい。
アメリカの場合ビザ無しでの渡航で滞在出来るのは90日まで。もちろんその間の就労も不可。なので移住するには必ず何らかのビザを取得する必要がある。

ビザには様々な種類があるらしい。
一口にビザと言っても色々な種類があるらしく、学生向けとか、外交官向けとか、技術者向けとか、芸術家向けとか。僕は一応音楽関係を学びたかったので学生向けのビザか、もしくは抽選で当たるグリーンカードに応募するしか選択肢はない様にこの時点では思えました。

移住するには留学という形しかないらしい。
もしかしたら違うかもしれませんが当時の僕はビザ取得は大使館で申請するらしいと思って実際に赤坂のアメリカ大使館に行こうとしていました。しかし調べるにつれ、僕が取得出来るようなビザはどうやら存在しないらしい事が徐々にわかってきました。
まず芸術家向けに発行されるビザは世界的に有名な人向けなので僕なんかは全く話にならないですし、グリーンカードの抽選は応募するにも数万円の費用が発生し、しかも当選確率はかなり低い。全ての費用を自分で賄わなければならない僕にとっては現実的な手段ではない。となると残りは学生向けしかない訳です。

留学には音楽大学か語学教室があるらしい。
留学するって事は何処かしらの学校に入るって事で、まずどんな学校があるのかを調べました。僕の希望は音楽大学でしたが、語学教室もあると判明しました。音楽大学だと憧れはバークリー音楽大学でした。ボストンにあるんですけど、でも大学ってバークリーに限らず学費が高額なんです。僕にとってはですけど。なのでやむなく断念。とてもとても僕個人がせっせとアルバイトして貯めれる金額ではなかったです。
語学教室なら学費は比較的安いけど、滞在期間は半年から1年程。思い描いていた理想とは違うし何より音楽を学べない。でもとにかく移住出来るなら仕方ないかと思いました。

大きく立ちはだかる金銭の壁。
やむなく小さな語学教室への1年間の留学に的を絞って費用を調べました。先ず学費は年間120万円程。これは当時としてもかなり安い方だと思います。
あとはその教室から通える範囲の街の家賃などの物価の調査。
今、思い出しても我ながら馬鹿だなぁと思うのが、当時ロッキングオン社から創刊されたばかりの「H」って雑誌があって、それには読者の色々な投稿が載っていたのです。その中でNY在住の方がいて、その人に手紙を出したんですね。「H」に載っていた連絡先宛に。物価や治安を教えて下さいと。わざわざ返信用の封筒に国際郵便用の切手まで用意して。結局何の音沙汰も無かったですけど。
でもそんなこんなで判明した限りでは家賃、光熱費、食費等と学費を含め年間どんなに安く見積もっても300万円は必要。
300万なんて何のツテも無い20才の若者が簡単に用意出来る筈もなく、と言って誰かが気前よく出してくれる訳でももちろんなく、僕の身の程知らずのNY移住計画はあっけなく挫折したのでした。

今でもバークリー帰りの人と関わる事がたまにありめすが、その度に僕はちょっと切ない気持ちになるのでした。

今年で50才にもなるっていうのに、若い頃達成出来なかった事ってのは一生悔いが残るものですね。

なのでどこでも住めるとしたら…憧れのニューヨークですね。結局行った事すらないのですけれど。エヘヘ。でももう年だから伊豆高原とか熱海あたりでのんびり過ごす方がもう良いかな。

#どこでも住めるとしたら


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