他でもない自分自身で
もうどれくらい進んだだろう?
果てしなく続く熊野古道の途中、息を切らしながら私は立ち止まった。
歩き始めた時は凍えそうなくらいだったのに、今はもう汗ばんでいる。
振り返ってみると、今まで登ってきた道が延々と続いていた。
ある程度整備はされているが、結局は山道。
少しでも余計なことを考えていると、あっという間につまづきそうになる。
ひたすら次の一歩に集中して、そしてここまで来た。
これだけ登ったのか。
少しの達成感を感じつつ、先に目を向けると、これまたどこまでも道が続いている。
もう引き返そうか…。
心が折れそうになりながら、一人考える。
名所といえど、大晦日目前の山奥だ。
さっきからほとんど誰ともすれ違っていない。
しばし立ち止まったあと、私はまた進むことに決めた。
ただ、進む。それ以外は考えずに。
この選択が報われるかどうかなんてわからないけれど。
自分で決めて、自分の足で歩くこと。きっとそれ自体に意味があるから。
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。