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旅先で映画を観ること

大学の頃は九州のミニシアターでアルバイトをしていた。そのおかげで本当に多くの作品に出会うことができ、映画そのものだけではなく、その場所に行って映画を楽しむことの素晴らしさを知った。卒論では、いくつかのミニシアターやドライブインシアターを調査し、地域と映画館の関わりについて書くことができた。その4年間を通じて、東京に引っ越した今は毎週末どこかの映画館に行くことが楽しみになるほどになった。

もちろん近くの映画館に毎週のように通う楽しさはあるが、たまに遠出をして映画を観るというワクワク感も好きだ。ある街まで足を運び、街の景色やそのときの出来事とともに、映画の余韻や初めての劇場に入るドキドキ感が思い出としてずっと心に残っている。

★そのいくつかの思い出★

シネマ尾道(広島県尾道市)

大学一年の春休みに尾道の宿で住み込みアルバイトをしてから、心落ち着く尾道の街や、そこで出会った人たちが本当に大好きになり、半年に1回は遊びに行くほど大好きな街だ(今はもう1年以上行けてない…)。

尾道は「映画のまち」として尾道三部作などのロケ地として知られていて、海辺にある尾道唯一の映画館「シネマ尾道」は、多くの映画人や映画好きが訪れている。映画祭も毎年賑わっていて、地域のこどもたちに向けたワークショップも多く、地域の人たちが文化を楽しむ場所となっていて、地方の街の大切な存在だと思う。

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友人と尾道旅の終わりに『さよならくちびる』(2019・塩田明彦監督)を観た後、帰りに2人で少し曲を口ずさみながら歩いた。

卒業前に同じ友人と訪れたときは、『おらおらでひとりいぐも』(2020・沖田修一監督)を観て、ユーモア溢れた温かい作品で、これからお互い引っ越して仕事を始める二人にまたまたぴったりで、何かの寂しさを感じながらも新しい街で自分の人生を楽しんでいこうという気持ちにさせてくれた。学生最後の旅を締めくくる映画だった。

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大阪でのライブとともに

大阪も学生のときはよく遊びに行っていて、旅行というよりは音楽やお笑いのライブを観に行くために格安交通機関を使って行ったという感じだ。

大好きなバントHomecomingsが主題歌を担当した『愛がなんだ』(2019・今泉力哉監督)は、ホムカミのライブで大阪に訪れたときに合わせてテアトル梅田で鑑賞した。

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人にはそれぞれの愛し方があることを感じ、4人の会話と自然な演技に引き込まれた。そして、大好きなホムカミの曲『Cakes』(2019)を映画館のエンドロールで聴けることも感慨深かった。

この日の夜のライブで、『Cakes』に込めたバンドの想いとともに生演奏を聴くことができ、温かさでいっぱいの一日だった。映像と音楽を一緒に楽しむ計画も最高だ。朝一の飛行機で大阪につき、ライブが終わったら夜行バスで帰るという、ライブと映画以外は、大阪だからこそのなにかをすることはなかったが、特に帰りのバスで一日の余韻に浸ることもセットで良い遠征だった。テアトル梅田の上映が始まる合図が学校のチャイムだったのも素敵だった。

静かな宿の大きなスクリーンで(熊本県山鹿市)

尾道にも一緒に行った本当に信頼できる友人と、大学4年の夏に就活や卒論の息抜きにと、山鹿の気にる宿へ。

1組限定の山奥にある宿で、岳間茶とお酒を呑んで女将さんとゆっくり話をしたり、たくさん並んでいる本を読みながら窓辺でのんびりしたりと、とにかく居心地がよく、心安らぎ、疲れをとることができた。

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ここでは、プロジェクターをレンタルすることができ、寝る前に『ハウルの動く城』(2004・宮崎駿監督)のDVDを観た。幻想的な景色と音楽はいつみても引き込まれる。外は真っ暗で静か。何にも邪魔をされず宿の素敵な照明でゆったり観ることは、山奥の宿ならではの楽しみ方で、このまま眠る幸福感がたまらなかった。次の日、宿泊セットであった近くのレストランでの朝食で、奇しくもベーコンと卵が登場!

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映画と自然と美味しい食事が合わさった、今思い出すとそのときの時間が本当に愛おしくなる旅だった。

就活で面接帰りに(東京・有楽町)

なかなかうまくいかず時間がかかった就職活動。

コロナでリモート対応がほとんどであったが、面接のため何回かは東京へ。面接が終わり、あとは数日後まで祈るしかない…という帰り道、まだまだ緊張感があり、でもせっかく終わったのだからと、近くの映画館を探すことに。するとヒューマントラスト有楽町で、アルバイトをしていた映画館でも上映中だがまだ観ることができていなかった、『ブックマート』(2019/オリヴィア・ワイルド監督)が上映されていることを知り、足が軽くなった。

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とにかく笑える場面が多く、満席の劇場ではマスクから漏れる笑い声があり、コロナや就活でストレスが溜まっていた自分の心を軽くさせてくれた。

登場人物それぞれに、うちに秘めた思いや悩みがあって、様々な生き方や個性を肯定してくれていて、明るい気持ちで東京から帰ることができた。

ドライブインシアター(熊本県阿蘇)

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これは卒論のために現地調査として訪れ、設営も手伝わせていただいた、熊本県阿蘇で定期的に行われているドライブインシアターで、地震の復興活動として始まった。家族連れやカップル、友人同士などでも賑わっている。阿蘇の標高が高い場所で行われていたこともある。スクリーンのバックに見える夜景も相まって幻想的な雰囲気になり、車を持っていたら何度も通いたくなるような経験だった。阿蘇をドライブして最後に車の中から大スクリーンで映画を観るという日は、想像するだけでも映画のような一日になりそうだ。

今はできる範囲で…

地方の気になるミニシアターにたくさん行きたいが、今は東京で仕事をしているため、気軽に他県に行くことはできなくなってしまった。でも東京には本当に多くの映画館があって、九州にいるときから本で様々なミニシアターをチェックしていた。

週末はどこかの映画館に行くことが息抜きになっていて、自分だけの大切な時間だ。

今やほとんどの休み日が、コーヒーを飲んで映画を観て、銭湯でゆっくりして、かえってパンフレットなどを読みながらお酒を呑むという流れになっていて、毎週末の楽しみだ。

次の休みはどこで何をみようか、いつもそのことばかり考えている。



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