Un homme et une femme
わたしの卒業した大学は、半ば不本意で入った大学だったのだけれど、思いもよらない、とても素敵な仲間たちに出会った。
今となっては、その大学に行った結果の邂逅に凄く感謝しているし、いまや、彼ら、彼女らは、わたしの大切な財産となっている。
今日は、わたしが見ていたその中の彼と彼女の二人を、ちょっと回顧、想起、そして起筆したいと思う。
わたしの大学は、ど田舎にあった。
わたしは女子校からやってきた。
そして、たくさんの男友達ができた。
みんなと馬鹿みたいにに遊んだ。いや、本当に、ほぼみんな馬鹿をやっていた。
そして、まずその、大学の男友達(以降野郎ども)の話をちょっとすると、
野郎どもは、そのど田舎の地方のストリップ劇場に行った。
そこでは、凄くご高齢のベテランストリッパーが登場し、
彼らは始め、遠巻きに彼女を観ていたら、
その"お嬢さま"から
「あんた達、もっと近くで観な!」と言われ、
半ば強制的に最前列での鑑賞を余儀なくされたと、
その野郎ども中の"Kくん"って子が困惑気味に言っていて、面白かった。
Kくんは、
わたしの生まれ育ったところでは、東大とか京大とか行くような一番の進学校からやって来ていた。
出会った時、彼は綺麗な金髪にしていた。高校時代からその色だったらしい。
大学受験の時に、黒のスプレーをして、活動していて、スプレー缶がすぐなくなるから大変だったと彼は言っていた。
お洒落で、童顔で、かわいい感じで、背もちょっと低くて、音楽が大好きで、スマートで、いい意味でも悪い意味でも『やんちゃ』で、
どうやら"音楽一家"のハイソなおうちの生まれで、バイオリンが弾けると言われていた。
Kくんは、頭がよくて、常に、ユーモアに溢れていた。
所謂『ワル』なのだけれど、
当時少年ジャンプの
「電影少女」
と双璧をなしていたとわたしは思っていた、
少年マガジンの
「BOYZ BE …」
が大好きだっから、『ピュア』さを持ち合わせた『ワル』だったように思う。というか、ピュア過ぎるゆえにワルになったのだといまは思う。
Kくんのお話はいつもとても面白くって、
ある時、地方に「大人のおもちゃ」なるお店があったらしいのだが、好奇心旺盛なお年頃の彼は、入店し、いろいろ物色して、なにかはわからないが白い粉の入った袋を見つめていたか、手にとっていたかは忘れたが、お店の人に「お前にはまだ早い」と凄味がある感じで言われてビビッたと話してくれた。
当時、野郎どもは、おぼこい(だが処女ではなかったが)わたしを揶揄うのが大好きで、いろいろわたしを「ダシ」にして遊んでいた。
ある夜にKくんから、
「ユニちゃん、俺さあ、今やりたくてやりたくてしょうがなくってさあー、我慢できないんだよね。やらしてくんないかなあー?」
って言う電話が来て、(この時わたしはPHSを所持していたので、自室での会話だった)
「え?え?うん?やりたいの?困ったねえー。
わたしでいいの?でもねえ、ごめんねー。わたし今生理中なんだよねえ・・・」
って本気で言ったら、
仕掛けた本人が、わたしのまさかの"生理中"発言にKくんは、逆に戸惑ってしまって、
「あ、ああ、そこまで言わなくてもただ断わればいいのに…」
ってなって、
後ろでわたしとKくんのやり取りを聞いてた野郎どもが爆笑しちゃって、その声が聞こえてきて、
そこで、やっとKくんと、その他の野郎どもがわたしを揶揄うために電話してきたことにわたしは気がついたのだった。
そんなこんなで、話を戻すと、
Kくんは、大学一可愛いんじゃないかと思われる同学年のAちゃんにもれなく、出会ってから瞬殺で夢中になった。
大学の建物内で、わたし達の溜まり場になっていた、大きな食堂の一角で、毎日のように、必死なぐらいモーションかけているKくんをわたしは見ていた。
引く手数多のAちゃんは、その時彼氏がいた。でも、その彼氏は、Aちゃんの事を蔑ろにしていて、Aちゃんの方が「好き」が二人の中で大きかったみたいだった。彼氏に会った事あるけど、全然かっこよくなかった。
KくんはAちゃんの気を引きたくて、そしてやりたくてしょうがないように見えていた。
そんなある日、
Kくんの夢が叶ったと、噂で聞いた。
Kくんよかったねー。
と思っていたけれど、
よくよく内容を聞いてみると、
二人っきりでいけない粉を吸ったかなにかして、楽しくなった勢いで…との事だった。
Aちゃんはけっして、Kくんが"好き"で行為に及んだ訳ではなかったらしい。
Aちゃんは、とてもチャーミングで性格も優しくて、すごく良くて、男は勿論、同性の女からも好かれるような子だった。
高校の時なんか、「いじめられっ子と一緒にいてあげていた。」とAちゃんの高校の同級生は言っていた。
とにかく評価は最高の子だった。
コケティッシュで、ちょっとHな女の子。
高校生の時には、スカートの下に下着を履いていなかったと、本人から聞いた。
「アレが来たときは、ちょっと困ったけどね!」
なんて、お茶目に言っていた。
真冬に真っ白い雪が吹き荒れる中、
ノースリーブ姿で、向こうから歩いてくるAちゃんを見た時、唯ならぬオーラを感じたのを覚えている。
まるで、往年の海外の"女優"のようだった。
そのとても人間離れした妖艶さを身に纏っていた彼女にわたしはこころをもって行かれた。
ただ、Aちゃんは、彼氏と別れ、吹っ切れてから、誰にも縛られる事のない自由な子になった。
気に入った男と、気安く、いとも簡単に「寝る」ようになった。
Aちゃんの魅力に取り憑かれた男たちは、まるで女郎蜘蛛の巣にかかった羽虫を連想させた。
Jリーガーとも関係したという噂を聞いた。
一時期は、是非Aちゃんのヌーディーな(というかヌード)写真を撮りたいという、プロの写真家と付き合っていた。
夜のお水のバイトもしていた。
あまりにも奔放すぎるAちゃんに、
夢が叶ったはずのKくんは、
いままで自分で抱いていた純真無垢なAちゃんという理想像とはかなりかけ離れていたAちゃんの本性を目の当たりにして、
愕然とし、夢砕かれ、傷ついて、凄く悲しんだんだと思う。
わたしに、
「あの女、かなりやべえよ」
って漏らしていたけれど、
そんな状態だったKくんを知らなかったわたしは
「?」
「どうしたんだろう」
「Aちゃんと何かあったのかな?」
ぐらいにしかその時は思わなかった。
その後、Aちゃんは、"彫り師"の元で修行中で、彼女の背中全面には、その師が彫った鮮やかな刺青があるとかないとか聞いた。
Aちゃんの肌はとても白くて絹のように滑らかなものだったので、谷崎潤一郎の「刺青」みたいだなあって思ったっけ。
Aちゃん本人の腕もいいらしく、素敵な彫りができる、見込みがあるって聞いたけれど、結局彫り師にはならなかった。
Kくんは大好きな音楽に携わる事を仕事にした。
最後にKくんと会ったのは、野郎どもの一人の結婚式で、
彼は、だいぶ遅れてきてやってきたが、なんだか、覇気がなく、痩せていて、
「俺なんかがいちゃいけない場所なんだ」
って言ってて、なんかわたしは、晴の舞台に参加しているのに、彼の言葉を聞いて、せつなくなっていた。
みんなKくんとの再会がとても嬉しくて、
みんなでKくんに、
「二次会行くでしょ?」
って聞いたら
「仕事があって、どうしてもすぐ帰らなくちゃいけないんだ。」
って言って譲らず、
本当にそのまま姿をいつのまにか消してしまった。
それから、5年くらい経った時、
上京し、音楽業界の人と知り合ったわたしは、
彼から、「Kくんを知っている、知り合いだ」
「一緒に仕事をした事がある」
と、Kくんが元気に音楽関係の仕事を続けている事を知り、とても嬉しかった。
いま、Aちゃんは何をしているのかは知らない。
もう、あんまりAちゃんには個人的に興味がないかな。
一時期仲良し3人組で、もう一人の子と3人で遊んでいたけれど。
Kくんは、今の彼を他の野郎どもに聞いてみてもいいかなとも思う。…ちょっと怖いけれど。
多感な時期に交差した二人。
いま彼と彼女はどんな
【男と女】
なんだろう。
了
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