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陣中に生きる—9

九月十一日 曇り ③

自分も、面会人などはあるまい、あってもどうにもなるまいと、あきらめていたところだった。
四人は、弟の場合をふくめて、重ね重ねの天恵によって、一目会えたことが有難く、しばらくはその話ばかりで笑いあった。

相互に心の中では、<幸先よし!>と、喜んでいるに違いなかった。
話たいことは山々あっても、こんな時こんな所では、しかも大の男ばかりでは、とても存分に話し会えるものではなかった。
そこは相互の推察にまかすことにして、ついに別れることになった。
よそ目には、淡々たる別れに見えたかも知れない。

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