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陣中に生きる—37
割引あり
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十月三十日 雨後曇
神戸出帆一箇月目
― 生きるための日誌 ―
零時、雨がしとしとと降っている。
なんとわびしい秋雨だ。
虫さえ声をひそめている。
心痛む雨でもある。
どうせもり出す壕の屋根だ。
それが今か今かと、うす気味わるいことである。
ポロリポロリと落ちてくると、この間の蛇の一件を思い出してゾッとした。
三時半、妙な音にふと目をさます。
壕にかぶせた天幕をうつ雨の音が、前より強くなっていた。
外へ出てみる。
壕内とかわらぬ暗闇で、海底のような感じであり、静けさである。
しかもなお、弓づるをはじくような音をたてて、流弾が時々頭上をかすめた。
耳をすますとずっと遠方から、そろばんを払うような音が、重なり合ってくる。
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