何を今さら痛い治療を怖がるの?/車椅子の息子
「怖い」
「やりたくない、、、」
先日、息子の右手の人差し指に小さなイボができていたので、何のイボなのかを確かめるために皮膚科へ行ってきました。
すると、皮膚科の医師からは、
「このイボは液体窒素の凍結療法で取りましょう」
と言われて、すぐさま別室の治療室で治療することになったんですよね。
で、最初は。
私も息子も「凍結療法」の意味が分からなかったので、看護師さんに言われるがまま素直に治療室の椅子に座り、素直にイボが出ている右手を差し出したのですが。
医師が、液体窒素のついた綿棒みたいなものを手に取って、息子の手のイボに付けようとした瞬間。
息子は、これは何か痛い治療のやつだと察知したのか。
さっと、手を引っ込めたんですよね。
その後は、予防接種を嫌がる3歳児かのように、イボのある手を体で隠して、治療を全力で拒否していました。
まあ、子供だと、痛そうな治療を拒否することはよくあることなので。
どこにでもある光景だとは思うのですが。
でも、車椅子の息子は、今までの10年間の人生のなかで。
すでに十数回も手術でメスで体や頭部を切られて。
入院中は毎日のように採血の針を刺されて。
点滴をしていた期間を集計すると年単位。
3才までは経管栄養のために、医療素人の母によって鼻から喉までチューブを差されていたのに。
何を今さら、一瞬の痛みがある凍結治療が怖いのでしょうか。
「怖い」
「やりたくない」
と言いながら、車椅子のうえで手を隠し治療を拒否する息子を見て。
でもまあ、やっと治療が怖くなったのか。
と思うことにしました。
我が家の息子は、脊髄髄膜瘤という病気で生まれたので。
生後1日目で手術をして。
そこから手術は十数回も繰り返し、点滴、採血、CTなどの医療が日常の世界にどっぷりと住むことになりました。
で、生まれから、手術や検査などの医療が日常の世界に住んでいると、子供はどうなるかというと。
採血をするために医師が針を持っていても、検査は当たり前だから、されるがままなんですよね。
まさに動物園から逃げない動物のように、されるがままなんですよね。
「これから痛いことが始まる」
と子供ながらに分かっていても、逃げないんです。
針を刺された前後は、怖さや痛みや不快感で泣いてしまうのですが。
検査自体を嫌だと言ったり、暴れたり、逃げたりしないんです。
CTを撮るときも、
「暗いよー」
「怖いよー」
と言ったことは一度もなくて。
当たり前のようにCTを撮られていました。
今思うと、大人でもちょっと怖いCT室で、よくもまあ泣かなかったなと感心します。
(ちなみに母は、人間ドックオプションのCT検査を受けたものの怖くて半泣き。その後はC T検査のオプションをつけていない)
でも、私は、息子が一人目の子供なので、他の子供が病院でどのような反応をするのか見たこともなかったので。
子供は全員、病院での治療や検査の時は、大人のいうことを聞くものだ、と思っていたのですが。
息子が3才のときに娘が生まれて。
娘が生後半年くらいに予防接種が始まり、最寄りの小児科へ行ったのですが。
その時に、最寄りの小児科へ行って、びっくりするような光景を見たんですよね。
最寄りの小児科では、予防接種は、風邪などの子供との接触を避けるために。火曜日の14時から16時は予防接種のみというふうに、日時が決まっていたので。
予防接種の日時に行くと、予防接種を受けに来た乳幼児だけがいるのですが。
小児科の待合室では、当時の息子と同じ年くらいの3〜4才の特に男の子が、大暴れして、注射を嫌がっていたんですよね。
それはもう、注射を嫌がるというレベルではなくて。
娘と待合室で待ってるじゃないですか。
そうしたら、とある男の子が全身全霊で、
「嫌だーーーーー!!!」
と泣き叫び暴れていたんですよね。
なんかもうずーっと泣き叫び暴れ回っているので、子供ってすごい体力だな、と感心するしかないくらいに。
でも、待合室で他の子の様子を見ていると。
ここまで泣き叫びはしなくても、ほぼ全員が注射を嫌がって。
注射を当たり前のように受け入れる子供というのは、見当たらなかったですね。
ほぼ全員の子供たちが、親に引っ張られて、イヤイヤ診察室に連れて行かれてました。
で、私は娘の予防接種で、初めて注射を嫌がる子供達というのを見たので。
そうか、これが健常児の反応だったのか。
とがく然としまして。
注射などの治療を当たり前のように受け入れている、車椅子の息子の方が変だったんだな。
病気で長期治療をしている子供の反応だったんだなと理解しました。
そこから時が流れて、現在、息子は10才になりまして。
小学校に入った7歳ごろからは、注射をすることは、年に1回のインフルエンザの予防接種のみになり。
定期的な検査も、年に一回のMRI検査のみ。
毎日採血されるこはなく。
鼻にチューブをさされることもなくなりました。
その代わりに、車椅子の息子は、治療を怖がるふつーの子供に戻ってしまったようなんですね。
というわけで、先日、右手の人差し指にイボができた息子は、皮膚科での凍結治療のために液体窒素をイボのところにつけてもらう予定でしたが。
「一瞬で終わるからね」
「よし頑張ろう」
と声かけする看護師さんの言葉を一切無視して。
「怖い」
「やりたくない」
と注射を怖がる3歳児のように駄々をこねて。
車椅子の上でアルマジロみたいに丸くなっていました。
まあ、子供が病院での痛そうな治療を拒否することはよくあることなので。
どこにでもある光景だとは思うのですが。
車椅子の息子は、今までの10年間の人生のなかで。
すでに十数回も手術でメスで体や頭部を切られて。
入院中は毎日のように採血の針を刺されて。
点滴をしていた期間を集計すると年単位。
3才までは経管栄養のために、医療素人の母によって鼻から喉までチューブを差されていたんですよね。
親としては、何を今さら治療を嫌がるの?
と思うのですが。
でも、皮膚科で治療を嫌がる息子の姿を見ていると。
生後1日で手術をして、そこから手術は十数回も繰り返し、点滴、採血、CTなどの医療が日常だった世界は。
息子にとっては、ずっとずっとずっと過去のことで。
今は治療が怖がる、ふつーの子供になったようです。
ちなみに皮膚科の治療なのですが。
結局、息子の拒否する意思が固かったので、凍結治療はできず。代わりに薬を塗ってもらいました。
ただし、薬での治療だと、イボが取れたかどうかの結果が出るのが2時間ほど時間がかかるので、2時間後に再び皮膚科へ行くことになりました。
液体窒素を付けるだけの凍結治療なら、一瞬で終わってそのまま帰れたのに!
(追伸)
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