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ワクチン接種の日に起こったこと

 1.ワクチンを打つまで
 2.ワクチンを打って
 3.次の日


ワクチン接種。

 打つ気なんてさらさらなかった私が、ただ「海外へ行きたい」だけで打つことにした。

 接種日が近づくにつれてナーバスになった。カウントダウンのように
「あさってワクチン打つから。」
「あした、ワクチンだから。」
「きょう、ワクチン。」
と、母に言った。

 そして当日の朝。居ても立ってもいられなくて、山へ登った。ワクチンを打ったら体調を崩すかもしれない。登れなくなる前に登っておかねば。そんな思いからだった。

 台風が過ぎ去ったばかりの空は快晴で、この一年間登って来て一番景色が澄んでいた。そして遠くにあれがあった。

 富士山

 天気が良ければ見えるとは聞いていた。でもどれだけ空が青く広がる日でも、その姿を現わすことのなかった日本一の山が、でん!とはるか遠くに御座おわしました。思わず古語になるほどの神々しさだった。

 距離感がわからなくなるほどに大きくて、どこまでも続く空に負けない存在感があった。

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