後編:地方とベンチャーとエコシステム(新潟を題材にしたギャングモデル)
札幌BIラボの講演を終えて
さて、先日、ご参加してくださった方はありがとうございました。
大久保さんの知見を引き出しつつ、準備したスライドを解説させていただきつつ、僕自身楽しんだのはもちろんなのですが。
今までの、どの講演でも話されなかった内容を視聴者に共有できたんじゃないかなと自負しております(ex、マフィアシステムの仕組みや、VC界の書かれざるルールなどについて)。
好評だったこともあり、次回以降も、この2人でできるかもしれないとのことで。その際には、予告させていただいた通り、よりIT分野とヘルスケア分野とのベンチャーの違いを説明させていただきましたら(少し難易度高めの話かもですが、大事な話をお伝えさせていただくつもりです)。
さて、今回は、講演当日にもお話させていただいた、マフィアモデル、ギャングモデルを例に地方でベンチャーを盛り上げるための一考察を共有させていただきます。
ベンチャーエコシステムの本質であるマフィアの存在
まず、これは、企業であれ、霞が関の人であれ、ベンチャーキャピタルであれ、皆様口を揃えて仰ること。それは、エコシステムの重要性です。
この言葉を聞いて、皆様、何となくそりゃそうだろうなーと思うものの。でも、よくよく考えてみたらエコシステムって何だろう? と不思議に思われるのではないでしょうか。
そこで、このスライドを引用し、エコシステムについて説明させていただきます。端的にお伝えすれば、エコシステムとは、「エコひいきシステム」のことです。すなわち、勝った者が勝ち続ける、部外者には冷たく感じる、マフィアが牛耳る世界観になります。
これは、どういうことか。具体例を文章化して記載するとこういうことです。
例えば、深津が投資をした案件であるX社が成功し、IPOないしM&AでEXITしたとしましょう。この時、幸運なことにX社の経営陣が、深津をVCとして高く評価してくれていた。
そうすると、X社の経営陣としては、次のように考えるでしょう。
次にもう一度起業をする際には、まずは旧知の仲である深津のところへ相談しに行こう。もしくは、友人・知人で起業を考えている人には、まずは深津のところへ行けとアドバイスしよう!!
こうして、深津のところへはX社に関連するY社やZ社の相談が持ち込まれることになります。成功企業であるX社の相談であるが故、これらの案件は当然成功確率が高い、優良案件であることがほとんどなわけですね。これらベンチャーのうち、またいくつかに深津が投資をして、また成功をして。。。。
こうやってグルグル回るのがエコシステムならぬ、エコヒイキシステムなわけです(このシステムにいるうちに、深津もいつのまにかマフィアへと変貌していくことになるのでしょう)。
こうして書いてみると、部外者に一見冷たいようにも映ると思います。このマフィアエコシステムに入り込めなければ、優良案件とも認められにくいし、優良案件と認められる可能性も低くなってしまうわけですから。
現に、ある有名VCに投資方針を伺ったことがあるのですけれども。その有名VCは、約9割が紹介案件に投資をしている一方、飛び込み案件やそれに類する案件への投資は1割程度だとか。これくらいにマフィアエコシステムはいたるところで機能しております。
マフィアが介在するエコシステムのメリット(大きく2つ)
こういったエコシステムに入り込めるかどうかも実力のうちといえばそれまでなのですが。このエコシステムにはメリットが大きく2点あります。
1. どこが成功の道かわかりやすく、大企業など新参者がかえって参加し やすくなる
2. 新しい領域を、投資家サイドで盛り上げていきやすくなる
まず、1点目です。簡単にまとめると、成功の道筋を創るということです。これは、ベンチャーに関わりたいと思っている大企業側の立場に立ってみると分かりやすいでしょう。ベンチャーに関わりたいと思っていたとしても、大企業側としては、どこが成功の道か分からないが故、怖くて踏み出せないわけですね。そんな時、LP出資(ベンチャーキャピタルファンドに出資すること)や各種提携契約(業務委託契約等)などを通してマフィアVCを用心棒のようにして雇うことを通して、
ここが、(獣道に見えますが)比較的安全な道(投資先)です
と、シェルパのように生態系を案内してくれる。これにより新参者も参加がしやすくなるという仕組みです。エコシステムには、こういう効用があります。
2点目は、VCがトレンドを創り上げることができるということですね。これは、よく、外部講演なんかの際に、僕は、アイドルプロモーターの例を使って説明することが多いです。
例えば、AKBや各種坂道グループをプロデュースしている秋本康さん。
彼は、恐らく、AKBが売れていた際に、
・各種地域ごとにグループが作れるんじゃないか?
・コンセプトを変えて、清楚系の坂道グループが作れるんじゃないか?
と仮説を立て(というか、前々から想定をしていて)、実際に売り出し、見事にAKBを凌ぐ次世代のアイドルを創造することに成功したわけですね。
一方で、これに違ったコンセプトで挑んだのが、JYパクさん。僕の解釈では、オーディションの過程を見せることで、少年ジャンプのような「友情・努力・勝利」のような世界観をアイドルに導入し、NiZiUのようなグループを作った。
このグループがうまくいくかどうかは、まだ未知数ですが、今まで、「一生懸命」が軸だった日本アイドルに、「友情・努力・勝利」の世界観で挑戦したのは、面白いなあと感じておりました。
ざっくり、破壊的イノベーション風に描いてみると次のようになるでしょう。
クリステンセンの破壊的イノベーションではありませんが、このように、既存の産業の枠組みを破壊するような投資をし、新産業を作る過程において、マフィアVCが一定の役割を果たすことは可能だと考えております。
例えば、サイエンスが力を発揮するヘルスケア領域においては、研究室の研究成果をそのままベンチャー化することは、かなり筋が良いとされております。
これを図式化しつつ、個人的な決意を載せますと、次のような感じでしょうか。
長くなりましたが、エコシステムとそこに生息するマフィア、さらにはそのメリットについての解説でした。
地方における、ギャングモデルの提案(notマフィアモデル)
ここまで記載すると、いや、東京では可能かもしれませんが、地方では全然無理です。。。という感想を持たれる方がほとんどでしょう。
例えば、次のような理由で。
はい、故に、僕としては、次のようなギャングモデルを推奨したいと考えてますし、先日もこの資料でプレゼンをさせていただきました。
つまり、まずは、みんなが応援したくなるようなベンチャースターを作り、実際に応援し続けるということです。
実際、このギャングモデルを実践しているのが、僕の第2の故郷である、
司法修習先でもあった新潟県です。
この、フラーという会社は、コロナを機に本社を新潟に移転したことに加え、社長である渋谷さんが、SNSや講演を通じて、積極的に新潟ベンチャーエコシステムを創り上げる活動をしていいます。
そして、それに呼応するかのように、企業や自治体が提携や協力体制を構築し、応援をする。それを見た現地の人たちが、「ベンチャーってかっこいいかも?」と考えだす。こういう好循環が回り始めているように思います。
恐らく、新潟県では、近いうちに、フラーマフィアなるものが誕生することになるでしょう。
ベンチャーに対する忌避感が強い環境での成功モデルは、この新潟県の例がとても参考になると感じております。
北海道での課題は、このフラーに該当する企業がまだいない(もしくは、存在しているけれどもまだメディアに出てきていない)ということでしょう。北海道においては、応援する環境はすでに整っていて。後は、主役になる起業家・ベンチャーの登場を待つばかりだという理解です。
おわりに(このnoteの目的の確認)
さて、今回もマフィアモデルからギャングモデルまで、多岐に渡るテーマを記載させていただきました。
あと10年も経てば、VCやPE業界に関する書籍が多数登場し、このあたりのことも常識になると想像しておりますが。かつての投資銀行・コンサルティングファームのノウハウが世に出ていなかったのと同じように、投資業界の仕組について、言語化してくれる人はまだ少ない状況です。
このnoteの目的は、あまり世に出ていない情報を提供し、VCサイドと起業家再度との情報の非対称性を失くそうということにもあるのですが。それ以上に、このnoteを読んでくださった方々からのフィードバックを受け、さらにより良い仕組みを作るための試行錯誤をすることに一番の目的があります。
というわけで、是非是非、積極的にディスカッションをさせていただけましたら!!
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