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短文学集

25
筋も思想も体系も、全部気にせず楽しむことを短文学と称して日々の感傷を綴る。
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#森

年輪

年輪

 口の中に血の味が広がる。
 左腕を伝う血液を舌で受け、肘の辺りから自分の腕を見上げた。青白い、死んだ魚の腹のような色をした細長い腕。その、手首より少し下の裂け目から、この赤い水は湧き出している。それが幾筋かに分かれながら、ちろちろと流れ落ちている。

 流れる途中で、いくつもの傷痕をまたいでくる。小さく隆起したそれが連なる様は、地層の断面を見ているようで私は気に入っていた。小さな赤い流れはこの隆

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忍び泣き

忍び泣き

 その日は大きめの低気圧がやって来ていて、予報通り空は一日中暗い雲に覆われていた。数時間に一度、雨風が窓を強く揺らしては去っていくのを、私はずっと布団の中で聞いていた。
 昔から空模様と体調が比例してしまう体質で、せっかくの休日に何も出来ないまま。それもあと四時間ほどで終わってしまう、という頃になってようやく布団から抜け出し、せめて空っぽの冷蔵庫をどうにかしなければ、と遅めの買い出しに出かけること

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底徊

底徊

 どこやらで烏が鳴いた。頭上を黒い影が幾つか、西を目指して行くのが見えた。その後を追う温度の無い風の背を捕まえて、枯葉や蛾などが逃れるように西へ流れていく。
 空が、呑まれていく。あれほど天を焦がしていた夕日の、その下に瓦を輝かせていた人家の、休耕田の僭主たる叢たちの、その全ての色彩を抜き去るほどの暗い夜がやってくるのが見える。
 随分待ったものだ。空の果てに、その影を見つけた時からもう数時間が経

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