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難しい人ほど営業しやすい

リクルートで営業マンとして働いていた頃、何度も難しいお客さんにぶつかりました。気難しく頑固で、ろくに話もしてくれない。話を途中で遮って席を立ってしまったり、会っている間中、会社の文句を言ってばかりだったり。挙句の果てには「もう来なくていい」と言い放たれて途方に暮れたり。経験の浅い頃はこういうお客さんがものすごく苦手で、自分の担当顧客なのにほとんど訪問せず放置してさらに距離が出来て余計に行きにくくなったり、ほとほと手を焼くことが多くありました。

ところがある大手企業子会社の部長さんに当時の上司を連れていった時のことです。この部長さんも難しいお客さんの一人で毎回ろくに話を聞いてもらえず苦労していたのですが、ご挨拶と称して支社長を同行してみたところ、いかにも嬉しそうに支社長と話しをし、帰り際に「坂尾君、支社長なんて偉い人を連れて来てくれてありがとう」と言ってくれたのです。

これをきっかけに「もしかするとこの人は社内で評価されずに腐っているが、プライドが高く『本当は自分は偉い人に訪問してもらえるくらいの人間なんだ』と思いたいのではないか?」と気づきました。実際その後色々と話しをするようになり身の上話を聞けたのですが、取締役待遇で親会社から天下ってきたつもりが部長止まりの扱いで非常に不本意に思っているということが分かりました。その不満を社内でも前面に出していたため周囲から疎まれ、さらに気難しく扱いづらい存在となっていたのです。

そう思うと、他の難しいお客さんも実際には、僕ではなく社内に不満がありその不満を僕にぶつけているだけなのではないか、理解してくれる人が欲しいと本当は思っているのではないかと考えるようになりました。試しに他にもいた難しいお客さんに対して距離感を縮める努力、理解者であると分かってもらえる努力をしてみたところ、大きな成果があったのです。

結局のところ難しいお客さんというのは社内でも疎まれ、嫌われて孤立していることが多いと思います。中には根っから性格が良くない人もいるかもしれませんが、多くの場合は何かのきっかけで歯車がずれてしまい、本心では理解されたがっている善良な人も多いのです。難しいお客さんのところには他社の営業マンも敬遠して訪問していないことが多いはずです。だからこそ、いったん距離を縮めて仲良くなることが出来れば独占的な地位を獲得出来ることを学びました。

今の時代はコロナの影響もありリモートでの営業の方が主流になっているかもしれません。それでも人間対人間という本質には変わらない面があるはずです。難しいお客さんこそ、いったん関係構築できれば非常にありがたいお客さんになるのです。

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