東保光Hikaru Toho

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マガジン

  • 昭和時代の国産量産型コントラバスについて

    昭和時代の国産量産楽器は楽器を弾く数えきれない多くの人々がお世話になってきたものです。ビギナーや学生が触れる事の多かった国産楽器のエントリーモデルは昭和時代の音楽文化の下支えであったと言えるでしょう。コントラバスを調べているのは、たまたま私がこの楽器を弾いているからです。昭和時代のコントラバスメーカーのほとんどが現在は存在していません。かつて日本では庶民のためにどんな低価格帯の楽器がつくらてきたのか。いまに残された昭和時代の量産楽器を現代の演奏家視点で記録/記述する個人的な試みです。

最近の記事

《オリエンテ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#9

《オリエンテ》 ・ラベル/Oriente ・工房名/ヒガシ絃楽器製作所(1979〜) ・代表者/東澄雄〜東義教 言わずと知れた現代日本の有名コントラバスメーカー。チャキから独立した東澄雄氏が1979年に創業。 主な型番はBO、 HO、HBと時代により変化している。ラベルには製作年が記されている。ガンバ、ヴァイオリンタイプの他に近年はブゼットタイプのものもあり、コントラバスの他にガンバも製作している。 現在オリエンテはオール合板製は製造していないようなので、昭和時代のBO1

    • 《クレモナ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#8

      《クレモナ》 ・ラベル/Cremona ・工房名/クレモナ弦楽器製作所 ・創業者/坂本虎次郎 坂本虎次郎氏がコントラバス製作者として有名なため、メーカーとしての印象はやや薄いのかもしれないが、クレモナは、スズキ、チャキ、オリエンテと並び長年に渡り低価格帯の合板製楽器を製造している。現在も中古品が数多く出回っている。 数多くの型番が存在するが、型番は異なれど何処が違うのか判別出来ないものも多い。単板タイプは国産では珍しいフラットバックを採用しているものがある。 ラベルは、装飾

      • 《チャキ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#7

        《チャキ》 ・ラベル/Chaki ・社名/茶木絃楽器製作所(1947〜2017) ・代表者/茶木純啓〜加藤良直 チャキはピックギターの愛好家が多い印象があるが、国産コントラバスメーカーで最もポピュラーだったのではないだろうか。ネット上で確認できる過去約10年間の中古市場でも名古屋スズキ、クレモナと並んで常に数多くの中古品を確認できる。生産数も相当多かったのだろう。 初期のものは型番がなくシリアル(のようなもの)のみが記されているものが多い。おそらく60年代半ば頃からf字孔

        • 《キソスズキ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#6

          《キソ(木曽)スズキ》 ・ラベル/Kiso Suzuki Violin Co.ltd ・鈴木バイオリン産業株式会社(1948〜1950)  有限会社 スズキバイオリン社(1951〜1985) キソ(木曽)スズキの詳細についてはWikipediaの「スズキバイオリン製造」の記述のなかの「有限会社 スズキバイオリン社」の項に詳しく記されている。 鈴木ファミリー関連のメーカーという事もあり、広く知られているメーカーである。しかし、ネット上での中古の個体確認頻度はそれ程高くはない印

        《オリエンテ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#9

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        • 昭和時代の国産量産型コントラバスについて
          49本

        記事

          《コイン》昭和時代の国産コントラバスメーカー#5

          《コイン》 ・社名/コイン・ベース社 詳細不明。コインは50〜60年代頃に出回っていたのではないかと推察している。中古市場でよく見かけるのでかなり流通していたのだろう。 ラベルには製作年は記されていない。 社名表記は「コイン・ベース社」「CO I N BASS.CO.LTD」「KO I N BASS.CO.LTD」など複数パターンある。記されている番号はシリアルではなく型番だろう。稀に「No.B」「A」「W」と別のナンバー枠も確認される。 コインの特徴は、ヘッド裏の溝がない

          《コイン》昭和時代の国産コントラバスメーカー#5

          《INA JAPAN KYOMEISHA(KYOMEI BASS)》昭和時代の国産コントラバスメーカー#4

          《INA JAPAN KYOMEISHA(KYOMEI BASS)》 ・ラベル/INA JAPAN KYOMEISHA     / KYOMEI BASS ・社名/KYOMEISHA GENKEN CO.,LTD. 詳細不明。中古市場で偶に見かける程度。 “詳細不明”としてオークションに出品されたものがこのメーカーであるのを偶に見かける。 名称から長野県伊那地方に存在したメーカーなのだろうか。1950年代から60年代頃と推察しているが、もしかしたら40年代くらいからあるの

          《INA JAPAN KYOMEISHA(KYOMEI BASS)》昭和時代の国産コントラバスメーカー#4

          《キソニチゲン》昭和時代の国産コントラバスメーカー#3

          《キソニチゲン》 ・ラベル/ KisoNichigen Contra-Bass 極希少。詳細不明。マリオナガタと並んで現在では目にする事は滅多にないメーカー。未だに資料購入は出来ていない。 おそらくピックギター製作で知られている長野県木曽郡木曽町福島に存在したメーカー「Nichigen」のことだろう。 ラベルの下部には「japan string musical instruments enterprise association 、kiso fukushima-machi

          《キソニチゲン》昭和時代の国産コントラバスメーカー#3

          《マリオ・ナガタ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#2

          《マリオ・ナガタ》 ・ラベル/VIOLIN MAKER MARIO.NAGATA 詳細不明。極希少。オール単板タイプのみ確認。国産では珍しいフラットバック。表板上部の縁どりが特徴的なものがある。ラベルには製作年、型番(シリアル(?))が記される。 マシンヘッドの板に「NGS mario nagata TOKYO JAPAN」と記された個体があるのを見ると東京にあった工房なのだろう。 コントラバスの他、バイオリン、チェロも製作していたようだ。 購入した資料はバイオリンシェ

          《マリオ・ナガタ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#2

          《スズキ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#1

          《スズキ》 ・ラベル/Suzuki Violin Co.ltd ・社名/鈴木バイオリン製造株式会社 ・創業者/鈴木政吉 昭和時代に量産型コントラバスを製造していたメーカーのなかでスズキは比較的情報が手に入れやすい。メーカー自体が現存しており、ホームページで過去の製品価格表を閲覧する事ができる。(ホームページの製品情報の最下段から製品価格表にアクセスできる。) 日本を代表する楽器メーカーであるので、メーカーについてはホームページやWikipediaを参照して頂ければ良いと思う

          《スズキ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#1

          《昭和時代の国産コントラバスメーカー》概要④

          昭和時代の国産量産型コントラバスを記録/記述するプロジェクト。資料の記録作業は継続中だが、ひとまずの目標数の大部分が終わって残り僅かとなってきた。ソロ演奏を集中的にやり過ぎて少々疲れてしまったので、作業を一旦休止し、少し期間を空けてから再開しようと考えている。 《昭和時代の国産コントラバスメーカー》概要④ これからアップする幾つかの記事では、昭和時代に量産コントラバスを製造した国内メーカーを個別に紹介をする。 私が実際にあたった資料数はごく僅かなので、見当違いな事もあるかも

          《昭和時代の国産コントラバスメーカー》概要④

          《Kiso Suzuki No.4(1964) 》 資料[5-4]

          Kiso Suzuki No.4(1964) 資料[5-4] キソスズキのNo.4はオール合板製のタイプを前述したが[資料1-14]こちらはスペックの高いオール単板製。材は余り良くない印象だ。日本規準の3/4(世界規準の1/2程)サイズで、ボディはとても薄く小さい。 サンバーストの塗装はこの頃の流行りなのだろう。近年では見かけることはない。 キソスズキ製品はコントラバスとは思えない脆弱で柔らかな音が特徴的だが、オール単板ともなれば、なんとか通常のコントラバスの音となる。テンシ

          《Kiso Suzuki No.4(1964) 》 資料[5-4]

          《INA JAPAN KYOMEISHA(full scale) 》資料[5-2]

          INA JAPAN KYOMEISHA(full scale) 資料[5-2] ノーラベルだがボディの形状やつくり等からINA JAPAN KYOMEISHA(KYOMEI BASS)と判断できる。表裏の板、および側板は単板が使用されている。興味深いことに、表板、裏板、側板に全て同じ材が使われているように見える。通常弦楽器に使われるスプルース、メイプル等ではなく、何か違う材のようだ。 表板はE線側が落ち気味で、下部もよく見るとグニャグニャと歪みが出ている。おそらく材が柔らか過

          《INA JAPAN KYOMEISHA(full scale) 》資料[5-2]

          《Chaki F-20》資料[4B-2]

          Chaki F-20 資料[4B-2] 表板と裏板が単板、側板が合板。このラベルのデザインは80年代辺りのものだろう。F-20は近年のものはオール合板製のものをよく見かけるが、この頃のチャキはスペックが高いものをよく見かける。 チャキは他メーカーと比べると全般的に重い楽器が多いが、この個体もずっしりと重く、みるからに堅牢につくられている印象だ。表板に装飾が施され、ヘッドのペグにも糸巻きの装飾がつけられている。指板は縞黒檀だろうか。肩が張っていてボディが厚いので大きな印象がある

          《Chaki F-20》資料[4B-2]

          《Suzuki No.90(1970)》資料[4A-5]

          Suzuki No.90(1970)資料[4A-5] No.90の3/4サイズは1955年から1972年まで製造されていた。同時期に製造されていた同じ3/4のバイオリンシェイプNo.80よりも良質な材でつくられている。グレードがワンランク上で、表裏の板もNo.80よりも厚く全体の重量もある。価格は2万円程高く設定されている。 この個体の指板は黒檀が使用されているが、オリジナルがどうかは疑わしい。ボディは薄く、運搬に重宝しそうだが、少し薄すぎる感があり、これは音にも影響している

          《Suzuki No.90(1970)》資料[4A-5]

          《Suzuki No.80(1962)》資料[4A-2]

          Suzuki No.80(1962)資料[4A-2] No.80、1962年製。前述の1959年製[資料4A-1]からボディシェイプが変化している。バランスは良くなったように見える。美しいバイオリンシェイプだ。 No.80(国産3/4サイズ)は1954年から1974年までの20年間製造されていた。当時のスズキ製コントラバスのなかでは一番低い価格がつけられている。興味深いことに、同時期に製造されていたオール合板製のNo.81(国産4/4サイズ)よりも安い価格だ。No.80は表板

          《Suzuki No.80(1962)》資料[4A-2]

          《Coin (no label)》資料[1-2]

          Coin (no label)資料[1-2] ネックが極端に細く、ナット側が3.7cmしかない。ノーラベルだがヘッド裏の処理などからコイン製品で間違いないだろう。ネック付け根のボディとの距離が狭く、指板の角度が垂直に近い。オールドの楽器などに見られる傾向だ。この点は今回の他のコイン資料とは異なっており、比較的古い製品例としてみている。 ボディの合板材の劣化は著しく、朽ち果てる寸前といった雰囲気を漂わせている。 なんとなくガッド弦も合いそうな雰囲気だったので、ガッド弦を中心に記

          《Coin (no label)》資料[1-2]