《チャキ》昭和時代の国産コントラバスメーカー#7
《チャキ》
・ラベル/Chaki
・社名/茶木絃楽器製作所(1947〜2017)
・代表者/茶木純啓〜加藤良直
チャキはピックギターの愛好家が多い印象があるが、国産コントラバスメーカーで最もポピュラーだったのではないだろうか。ネット上で確認できる過去約10年間の中古市場でも名古屋スズキ、クレモナと並んで常に数多くの中古品を確認できる。生産数も相当多かったのだろう。
初期のものは型番がなくシリアル(のようなもの)のみが記されているものが多い。おそらく60年代半ば頃からf字孔の大きいB、Cシリーズが登場したのではないかと推察している。
B〜 Fまでの型番は製作年代に順があるようにもみえる。しかし、60年代にDシリーズ、Eシリーズ、70年代にはFシリーズがあるので、時代的には広く被っているようだ。晩年は専らFシリーズが製造されていた。
チャキにはラベルに「Salvatore」と記されたものがある。70年代半ば頃から輸出用の製品は「Salvatore」ブランドとしていたようだ。ギターにもSalvatore機種が存在する。
又、チャキは長い歴史の中で1990年頃「JK Chaki」という別ブランドに分かれていた時期があったようだ。「JK Chaki」の製品は見た事がない。詳しい事は分からない。
チャキの音はどの個体を弾いても独特のチャキの世界感が伝わり個性豊かだ。鼻をつまんだような暗めのトーンは特徴的で、特にハイポジションでは手元の弦鳴りが心地よく響く。その響きは楽器自体にホールリバーブを求めたような感じで、弾いていて面白い。低スペックでも個体によっては柔らかい低音が出るものもあり、独特のバランス感覚でメーカー独自の音を確立している。個性溢れる魅力的なメーカーだ。
しかしチャキには全体の出来というところで、個体毎のムラがあったのではないか、と感じることがある。まるで昭和期の家具のようにしっかり作られているものもあれば、いささか堅牢性に欠ける印象を持つものもあり、量産品といえども個体による当たり外れの幅が大きい様な気がする。長い歴史の中で数多くの職人さんが関わってきたに違いないし、時代によるつくりの傾向も様々なのだろう。
初期のものは全合板しか確認できていない。合板製品の印象が強いチャキだが、Eシリーズ、Fシリーズの上位機種に単板使用タイプも多くあり、オール単板タイプもつくられている。
長きに渡り庶民に向けて大量の低価格帯コントラバスを造り続けたチャキ。オリエンテ(1978〜)と松永弦楽器工房(1995〜)の創業者はチャキの元職人という事もあり、継承の側面でも楽器製作文化に大きく貢献している。ギター製作も含めて多くの職人さんたちがチャキから輩出されたことだろう。チャキの廃業が惜しまれる。かつて日本にこのメーカーがあった事を忘れないで欲しい。
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