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マンモスの帰還:北極に甦る古代の巨獣たち

以前に、マンモス復活を目指すベンチャー「コロッセオ」について紹介しました。

ざっくり言えば、
遺伝子編集技術CRISPR-Cas9とiPS細胞を駆使して、保存状態の良いマンモスのDNAから復活を目指している、
という話です。

最近、その進捗に触れた記事を見つけました。

まず大きなところでは、3種類の絶滅種を復活させようとしています。下記に並べておきます。

ドードー
タスマニアタイガー(別名:フクロオオカミ)
ケナガマンモス

絶滅回復(De-Extinct)が彼らの野望です。彼らの公式HPによると、平均して年間 1000 種(6時間に1種)が絶滅に追いやられています。海洋哺乳類全体で3分の1が絶滅の危機にあるそうです。この辺りは、どこかでもう少し解像度を上げて調べてみたいと思います。

マンモスについては派生的な効果として、気候変動対策もにらんでいます。過去記事でも触れましたが、マンモスがシベリアのツンドラ地帯を闊歩したことで苔の繁殖を防ぎ、それを天敵とする草原の繁殖に貢献したそうです。(あとは排泄物が栄養源にもなっていたようです)

今回の記事では、ツンドラでなく北極地域に大量に復活させることで、太陽反射率を高めて気候温暖化を防ごう、という目的にも言及しています。

これだけを書くと、素晴らしい、と手放しで絶賛したいところですが、それに対して反対の声もあります。

ようは、復活させることで現在の生態系を壊しかねない、という不安です。

ドードーの絶滅は400年前、タスマニアタイガーはまだ100年も経ってませんが、マンモスは数千年前には絶滅しており、生態系はその不在ありきで適応してきました。

余談ですが、マンモスの最後の種はシベリア大陸の北東にあるウランゲリ島で生息していたことが分かっています。

従来の説は、隔離された状態のため、近親交配による遺伝子エラーによって絶滅したと考えられていました。ただ、今年発表されたゲノム解析の結果から、それがほぼ否定されました。つまり、改めてマンモス絶滅ミステリーが復活しています。(今回は孤島での事件ですね)

話を戻します。

確かに数千年の空白で再現することで新たな不均衡が生じるという理屈は分かります。

実は、これにはもう少し話が続きます。

絶滅復活、と過激な書き方をしていますが、現在の計画では完全に元のマンモスDNAを表現することは難しく、部分的には類似の現生物もDNAに組み込む計画です。

具体的には、ゾウとマンモスのハイブリッドな胚(赤ちゃん細胞)をつくり、それをアジアゾウまたはアフリカゾウに移植して自然出産してもらう段取りです。(いわゆる代理母です)

だからと言って現生態系の破壊は杞憂だ、という二択ではありません。
ただ、いずれにせよ一気に大量出産させるわけでもないため、まずは少数かつ閉鎖空間からその影響を見定めて進めるのかもしれません。

記事によれば、最短で2028年にマンモスそっくりの子牛の出産を目指しているそうです。表面的に聞くと合成生物キメラを連想してしまいますが、まずは正しくその背景にある科学技術を理解するところからでしょうか。

情緒でなく合理的な議論をするためにも、科学リテラシー向上はさらに重要性を増すのだろうと感じます。

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