量子テレポーテーションと意外に難しいランダム発生
量子テレポーテーションは、科学好きの方らなら一度は聞いたことがあると思います。
この言葉は、2022年のノーベル物理学賞の一人が提唱しました。軽く紹介した記事を引用しておきます。
時系列では最後にあたるアントン・ツァイリンガー氏によるものです。
そして2023年5月に、アントン自身が著した量子テレポーテーション本が和訳されました。
量子テレポーテーションに至るまで、ざっくりいえば量子力学の誕生からもつれ現象の謎解明の歴史がつづられています。
やはり歴史を彩った当事者の一人が書くので心がワクワクします。
数式もほぼないのでぜひ興味ある方は除いてもらいたいですが、ここから1つだけ興味深い記述を紹介したいと思います。
これは量子もつれを証明する実験に直結する内容で、「いかにランダムな装置を作るか」です。
量子もつれを立証すべく、過去いろんな方々が、量子もつれ状態にした光を偏光させて相関度合いで検出する、という方法を編み出しました。ノーベル賞受賞者たちもその点は同一です。
ただ、その実験の公平性を担保するには、ランダムに入力させていることが求められます。
偏っていたら量子もつれによるものか別の恣意的なものかが判別できませんよね。
ただ、このランダムに生成する手続きが、結構厄介です。
なんと時系列では3番目にあたるアントン氏は、その入力源に別々の銀河からの信号を採用しました。これはノーベル賞サマリーにも掲載されているので引用しておきます。
ちなみに、今回に限らずノーベル賞サマリーはどれも秀逸です。お手本のような端的でわかりやすい文章で毎回感心させられます。
それはともかく、このスケール、感動しませんか?この話は彼の著書にも記載されているのでぜひのぞいてみてください。それによると、もっともっと離れた場所もやりたかった、ようなことを書いてます。
ちなみに、念のため意図も書いておくと、お互い因果関係がもてない信号源だから、というのが採用理由です。
例えば、同じ実験室ないに置いた別々の信号源では、何か気づかないつながりがあるのかもしれない、ということですね。
興味深かったのが談話レベルで著作にほかのランダム生成方法についても触れており、その1つが「人海戦術」でした。
実はこの実験初期は、二人がお互い情報をやり取りできないようにしてランダムっぽく作業させていました。
新しいアイデアは、10万名をモニター募集してあるアプリをスマホにインストールしてもらいます。
その中で無作為に0か1を選択してもらうことでランダムな数を発生させるということです。
この発想、大好きです。昔地球外生命体探索で個々のPCを集積させるアイデアがあり、それを思い出しました。
このランダム発生実験は下記サイトに紹介されているので、興味ある方は覗いてみて下さい。