25年越しの科学の「意識」的な賭けがついに決着する
いくつかホットな科学分野がありますが、神経科学はその1つです。
その領域にかかわるとある賭けが6月23日に決着した、という記事がNature誌で流れています。
ようは、
意識のメカニズムが解明されるかどうか、という25年前の賭けで、解明されないほうにかけた側が勝利を収めた、
という話です。
今回の賭けの対象者は、下記の二人です。
解明される:神経科学者のクリストフ・コッホ
解明されない:哲学者のデヴィッド・チャーマーズ
いずれも著名な方です。
コッホと聞くと、細菌のパイオニアと勘違いされそうですが、別人です。元々人工知能の研究者でしたが、その過程で意識を神経科学で探求可能であるという立場をとり、上記の賭けに至ったようです。
コッホが当時期待していたのは、当時登場したfMRI(磁気共鳴機能画像法)でした。
確かに、今でもこの装置によってほぼリアルタイムで脳内のニューロンの動きがより精密にわかり、光遺伝子の技術も組み合わせることでピンポイントで挙動をつかんで検証することが可能になりました。
念のため光遺伝子技術については過去の投稿を引用して説明を割愛しておきます。
期待していたのは、その実測技術だけでなく、意識を説明する理論が育ち始めていたからでもありました。
冒頭記事でその進捗を紹介していたのは、下記2つの理論です。
・統合情報理論 (IIT)
・グローバル ネットワーク ワークスペース理論 (GNWT)
やや似ている箇所はありますが、ざっくり説明します。
IITは、意識は特定タイプの神経接続によって形成される脳内の「構造」であり、画像を見るなど特定の経験が行われている間アクティブであるという仮説です。
GNWTは、相互接続されたネットワークを通じて情報が脳の各領域にブロードキャストされるときに意識が生じる、という仮説です。
いずれも「情報量」という形式で定量化を試みていますが、公開情報を見る限りは現時点でもなかなか定式化までには至っていないようです。(ただプレレビュー論文では野心的な方程式は提示されているかもしれません。)
コッホは、負けを認めたがらなかったようですが、一応約束を守って「高級ポルトガルワインを1ケース購入」して進呈したようです。
コッホは、懲りずにまた賭けはしたいともふれています。
ただ、また25年後だと自身が亡くなってるかもしれないので、もっと早い期間を希望しています。
やはり一線の科学者のエネルギーは無尽蔵ですね。
「賭け」と書くと少々不謹慎に感じますが、実は過去にも科学論争とそれを話題にした有名な賭けはいくつかあり、結果として科学の底上げにもつながりました。
ぜひ聞いたらほっこりするような意識した賭けを行ってほしいです。
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