世界が誇る天文台にサイバー攻撃!?
天文観測の中で最大級の国際プロジェクトといえば、「アルマ」と呼ばれる電波望遠鏡です。
南米チリの高地にあるのですが、10/29にサイバー攻撃を受けており、一か月たった11/24時点でも観測ができないという異常事態が起こっています。
アルマ望遠鏡は、欧州南天天文台(ESO)、国立天文台(NAOJ)、米国国立電波天文台(NRAO)で主に運営されており、それらサイバーセキュリティ担当者が観測再開に向けて対応中とのことです。
現時点での報道を見る限り、どこから攻撃されたのかは公表されていません。ただ、実はちょうど先日、こんな事件も起こっています。
現在進行形で起こっている国際紛争自体について触れるのはセンシティブなので、これ以上の憶測は控えておきます。
代わりに、国家レベルでの手段として大規模にサイバー攻撃を行った歴史的なケースについて紹介してみようと思います。
主に下記の書籍を参考にしましたので、より詳細を知りたい方は購入をお勧めします。
時代は2007年にさかのぼります。
当時の国際問題といえば、イランが核施設を建設中という極めて危険な状況でした。イランの敵対国はイスラエルで、米国はイスラエル支持です。
そしてこの核施設建設を食い止める手段として、CIAとイスラエル軍(あとは欧州系)とで、核施設で重要な役割を占める遠心分離機へコンピュータウイルスを仕込んで不具合を起こすという計画が立案されました。
具体的には、遠心分離機の動きを制御するPLC(Programmable Logic Controller)を乗っ取って回転異常を引き起こすことで核兵器の開発を遅らせようとしました。
実は、今でもどのようにそのコンピュータウイルスを施設内に忍ばせたのかは公開されていません。現時点では、2039年にCIA機密文書として公開する予定です。
ただここで、少なくとも米国政府にとっては誤算が生じてしまいます。
対象となる核施設以外のPLCにそのウイルスが広がってしまいました。
誤算と書きましたが、漏洩した原因はわかっていません。(上記書籍では、イスラエルによる故意(米国をたきつけるため)か施設内作業員がUSBか何かでたまたま持ち出したことによると推測)
米国政府がこの漏洩を公表するわけがなく、米国・欧州のセキュリティ専門家がこの拡散されたウイルスの調査を開始します。
苦闘の末、そのうちの一人ラルフ・ラングナーがついにウイルスの解析に成功します。
ラングナーは、ウイルスに感染している集中地域がイランであることは分かったのですが、それ以上の解析に苦しむ中で、プログラムコードに「164」という数字が頻出することに気づきます。
当時はイランの核施設疑惑は知られていたので、核施設に詳しい専門家の意見も聞き、ついにこれが「某施設での遠心分離機で「164基」を1まとめにしたPLCだけを狙うことを意図したウイルス」であることを突き止めます。
個人的には、突き止めるまでの過程にはぞくっとさせられました。
実はこの顛末は、上記書籍内でも、ラングナーがTEDに登壇したときのエピソードとして紹介されています。日本語字幕もあるのでぜひ視聴をお勧めします。
最後にラングナーが警告しているとおり、これは特殊ではなく汎用的なウイルスであり、いつまた起こるかもしれないということです。
この計画にGOを出した大統領はブッシュJrですが、作戦が実行されたのは次のオバマ大統領に政権が代わっており、時の副大統領はバイデンです。
今は現職大統領として、頻発しているサイバー攻撃に対して、その怖さは理解していると思います。
我々一般人がこういった大規模組織によるサイバー攻撃に対して防御出来ることがあるのかは正直分かりません。
ただ、上記の書籍や動画を見るだけでもその脅威は感じられます。
冒頭の記事のように、政治的に中立と思われる科学施設ですら狙われてきており(繰り返しですが犯人は不明)、そのリスクの大きさだけは知っておいてもよいかなと思います。
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