カンバン11

《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.11

課題2:人と人との絆を伝えるコピー
・人が多いだけでは、ひとりのままだ。

今回から、人と人の絆について考える、課題2に入っていきます。そこで、課題2の募集意図が公開されているので、改めて確認してみましょう。

最近、まわりとの人間関係が希薄になっていませんか。「あいさつを交わす」「感謝する」ちょっとしたコミュニケーションが足りていないようです。私たちの未来に欠かせない、人と人との「絆」の大切さを伝えるコピーを募集します。
※出典:第10回SCCしずおかコピー大賞HP 「第10回課題」より
https://shizuokacc.com/award/vol10/

『絆』というと解釈の幅が広くなりすぎるように思うのだが、その中でも身近な会話レベルでコミュニケーションを促すコピーを開発し、人間関係に横たわる問題を解決することが課題の狙いと読み取れる。ただし、「おおらかさ」のあるしずおかコピー大賞は、出題者の狙いを超えるアイデアもOK。マクロにもミクロにも、個性あるコピーを求めている。

『未来に欠かせない』という言い回しは、妙に意味深ではあるが、これは無視できる。コトバで発せられることでモノゴトに作用するコピーは、特性上、過去の事実に直接働きかけることはできないし変えられない。あくまでも未来志向だから、未来形のコトバ遣いににならなくても、『絆』の大切さを伝えきれたなら問題ない。

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ゴロリと重さを感じさせる壮大なコトバだ。『人』と『ひとり』をかけている。かけることで印象や記憶に残りやすい工夫が施されている。一行の佇まいはコピーとして申し分ない。そして、奇をてらわず、難しいコトバも使わずモノゴトの真理を説く。好きか嫌いかと問われれば、これも好きな書き方だ。

でも、読み返すたびに気になるのは、だからなに?! という訝しさ。そう、壮大な真理を真顔で言っているところに、距離を感じてしまうのだ。

人と人が繋がることでコミュニティーはできる。その状態を支えるのがコミュニケーション。だから、個々でいるのではなく繋がっていきましょう。というような意味だと思う。これは正しい理屈だ。だが、どんなに正しくても、理屈を振りかざされたときの気分はどうだろう。偉そうな物言いに居心地の悪さを感じる人は少なくないはずだ。

ここはまさに理屈ではなく、表現に相手に寄り添う情緒が不足していたからかもしれない。理屈はどうしても本音や実感として伝わりにくい。コピーに使われているコトバにより、コピーと受け手との間に距離を作ってしまい、すんなり受け入れられず、他人事のように聞こえてしまう感じがするのだ。

このコピーは、キャッチフレーズとしては問題ないと思う。でも、壮大に表現された理屈の受け入れにくさから、補うためのボディコピーやビジュアルが欲しくなる。『絆』を問う課題であれば尚更、ファイナリストの先に進めなかった意義のように思う。

たった一行のコピーで納得させるためには、課題に合わせた表現はもとより、発言者の立ち位置を明確にすることやユーモアを味方にするなど、まだまだ改善の余地がある。その意味においてこのコピーは、コトバによる受け手との最適な距離感づくりについて問いかけるコピーと言えます。

※コピーの版権・著作権等の使用に関する権利は、静岡コピーライターズクラブに帰属します。
https://shizuokacc.com/award/

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