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広報は中小企業にも持てる『貧者の核兵器』

マンションメーカーで広報担当15年、PR会社経営15年のPRプランナーが、地方の中小企業に特化した広報PRのヒントを発信しています。

1.広告は核兵器、広報は細菌兵器

「このご時世に不謹慎な!」と叱られるかも知れませんが、私は以前からたまに、広告宣伝とPRの違いを説明する際に、核兵器と細菌兵器(生物兵器)の例えを用いてきました。

多額の費用を投じてマスコミに露出し続けることで販売増を狙う広告戦略。一方、全くお金を掛けなくてもタイミングや仕掛け方次第で広範囲に大きな影響力を及ぼすことができるPR戦略。そういった違いをイメージしてもらうのに、どちらも大量破壊兵器である核兵器と細菌兵器の例えがイメージしやすかったからです。

原子爆弾などの核兵器を作るには原子炉やプラントなどの大規模な施設と高度な技術を要するため、経済力のある大国しか持てません。一方で細菌兵器や化学兵器は、小さな施設で安価に製造でき、ノウハウさえあれば弱小国でも持てます。

そしてこれを効果的に使えば、大きな殺傷能力を持つことから「貧者の核兵器」とも呼ばれるのです。

2.広告の蟻地獄にはまってしまう中小企業

たとえば売上高3億円程度の食品メーカーA社が、新商品を全国に販路を広げたいと考えました。広告代理店の営業マンにテレビCMの相談をすると、だいたい次のような会話になります。

代理店営業:「全国ネットのCMは月額最低1000万円の予算が必要です。まずは地元TVで月額50万円のスポットから始めてはどうですか」
A社社長:「月額1000万円はとても無理です。月額50万円ならなんとか用意できます」

—―――1年後、地元で少しは知られてきたが、売上に結びつかず、当然県外の認知度はゼロのまま。
代理店営業:「CMは継続してこそ効果が生まれるものです。新聞も加えて1年間、月間100万円でやりましょう」
A社社長:「年間1200万円で本当に売り上げが上がるなら、出しましょう」

—―――さらに1年後、県内の認知度は上がって来たものの、県外の売上は全く伸びない。
A社社長:2年間我慢して広告を続けたがほとんど成果が出ない。もう予算がありません。
代理店営業:「ここでCMを止めたらこれまでの投資が無駄です。広告を作り直してもう1年続けましょう」

――――A社は収益が悪化、完全に広告から撤退し、途方に暮れる。

3.中小企業にはマスコミ広告は分不相応である

マスコミを使う広告はこのように、中小企業にとってかなりリスキーな、金食い虫なのです。莫大な予算を持つ大企業が優れたクリエイティブで大量に露出してこそ売り上げに直結する。まさに大国のみが使える核兵器なのです。

かたや、PR戦略では、自社の新しい取り組みをプレスリリース(以下リリース)にしてマスコミに届けるのが中心です。

リリースは、自分で書きさえすれば、何回発信しても費用は掛かりません。ニュースや新聞記事として報道されると、その事実は作り物の広告と違ってリアルに伝播します。市場からも社会からも注目され、理解され、信頼度を増幅していきます。

インターネットのニュースサイトやSNSで話題になり、さらにマスコミが話題にするという、スパイラル効果が生まれることも珍しくありません。オウンドメディア(Webサイト等)との連動もしやすいです。

たとえば今年4月、ある酒造会社は地元の新聞社やテレビ局に届けたA4用紙たった1枚のリリースがきっかけで、社会現象を起こしました。わずか1か月の間に全国ネットのテレビニュースや情報番組、新聞の全国紙や地方紙に連日大きく報道され、SNSにも飛び火して、製造・出荷が追いつかないオーバーシュート状態になりました。このような例も数多くあります。

しかもリリースは次々と手を変え品を変え、ネタの切り口を変えることによって、何回でもマスコミに発信できます。たまに効果が薄いこともありますが、費用が掛からないので負担にはなりません。

中小企業の経営者の方には、多額の予算がかかる広告戦略よりも、費用を掛けずに何度でも繰り返せて、人を介して伝播していく、まさに「貧者の核兵器」。PR戦略をお勧めする理由がご理解いただけたでしょうか。

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