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片想いの人に『可愛いは最強論』を力説した、中学のあの日の話。【シナリオ】

カッコイイじゃ、ダメなの。
可愛いじゃなきゃ、ずっと好きではいられない。 
どこぞの、君のことをかっこいいって騒いでる女子とは違う。
私は君のことをだいすきで、本当に可愛いって思ってるんだよ。

ー登場人物ー
星野まち…中学2年生。ミュージカルスタジオ生。お嬢様気質。好きな物には一直線。美少女で、よくヒロインを任される。
三浦咲…中学3年生。ミュージカルスタジオ生。母子家庭で、母親を守るため、強い男の子のようになりたくて、一人称は「僕」、ベリーショートで生活している女の子。本当は可愛いものに憧れを抱いている。


ーー

ある秋の日の夜20時過ぎ。
スタジオのレッスンを終えたまちと咲は、駅に向かって歩いている。

咲「・・・・みたいな感じで、今日もクラスの子達に「かっこいいから」って理由で告白されて。…嬉しいけど、なんか複雑なんだよね。」
まち「そっかー、咲ちゃんは、カッコイイより、可愛いって言われる方が好きなんだもんね。」
咲「そうだね、どっちも好きだけど、…うん、可愛い、の方が。」
まち「…ふふ、だよね。」
咲「なんでよ、まちなら、そんなこと知ってるでしょ?」
まち「うん、知ってる。咲ちゃんは、本当に可愛い!」
咲「あはは、ありがとう。まちぐらいだよ、僕に可愛いって言ってくれるの。」

まち、咲の顔を覗き込む。

まち「…咲ちゃん、私の言葉信じてる?」
咲「え?」
まち「わたし、咲ちゃんの事、本当に可愛いって、思ってるんだよ!」
咲「お、おん…」
まち「だから信じて、胸張ってね!!」
咲「あ、ありがとう。」

まち「…引いた?」
咲「え?」
まち「引いたよね?」
咲「い、いやぁ…」
まち「絶対引いた、絶対引いたじゃん!」
咲「そ、そんなことないよ!いつもありがとうまち、可愛いって言ってくれて。僕も本当に、嬉しいって思ってるよ。」
まち「…はぁ。伝わってない。」
咲「え、伝わってるよ。」
まち「ううん、ぜんっぜん伝わってない!そんな気するもん!そんな気しかしないもん。」
咲「ちょっとまち、落ち着いて、」
まち「落ち着いていらんないもん!わかってほしいもんこの気持ち、私が咲ちゃんを可愛いって思ってる気持ち。良い?咲ちゃん、”可愛い”って、最強なんだよ!?」
咲「は、はい。」
まち「きっと説明が足りないんだな…。」

まち、近くのベンチにまで駆け、座り、空いている隣の席を手でたたき、
咲に座るように、訴える。
咲も渋々席につく。

まち「あのね咲ちゃん、よく、聞いてね。」
咲「うん。」
まち「今から、『可愛いは最強論』というのを咲ちゃんに教えるね。」
咲「可愛いは、最強論?」
まち「うん。要するに、可愛いはカッコいいに勝るっていう話なんだけど、咲ちゃんはいつも、みんなに『カッコいい』って言われるでしょ?」
咲「まぁ、ありがたいことに。」
まち「私ももちろん、咲ちゃんのことカッコいいって思う事沢山ある。王子様の役とか、悪役とかも、ほんとにピッタリで、カッコイイなっていっつも思ってる。」
咲「あ、ありがとうね。僕もまちのヒロイン役、いつも可愛いなって思って見てるよ。」
まち「(悶える)そういうとこ…!」
咲「え?」
まち「そういうとこ反則!」
咲「え、あ、ごめん。」
まち「コホン。話を戻すよ。」
咲「はい。」
まち「でもね、かっこいいの認識で人を見ていると、その人のカッコ悪い瞬間を見た時に、急に冷めちゃうんだよね。」
咲「ん、というと?」
まち「例えば、咲ちゃんはカッコいいって思う人とかいる?」
咲「うーんそうだな…あ、そういえば学校に顔が整ってて、スタイルの良い、かっこいいって思う先生がいるかも。」
まち「え!?好きなの!?」
咲「違うよ、ただカッコいいって思ってるだけ。例えなんでしょ?」
まち「あ、うん、そうそう。じゃあその先生が例えば、とっても字が汚かったらどうする?」
咲「それはカッコ悪いね。」
まち「でしょ!カッコ悪いでしょ!スーツにクリーニングのタグがついてたら?」
咲「それもかっこ悪いね。」
まち「喋り方がオタクみたいだったら?」
咲「カッコ悪いね。」
まち「そういうことなんだよ…。」

咲「え、ごめん、全然分からなかったんだけど。」
まち「ええ!?だから、かっこいい人を一度かっこ悪いと思ってしまったら、もうかっこよくは見えないってこと。もう愛想尽きちゃうってこと!」
咲「あー、確かに。」
まち「ここで出てきます。可愛いは最強論!」
咲「は、はい。」
まち「咲ちゃん、今度は可愛いと思うものをあげてみて。」
咲「可愛い、そうだな、うーん…」
まち(私って言え…!!)
咲「あ!犬、ってあり??」
まち「咲ちゃんってホント…(愕然)」
咲「え、あ、ダメだった?」
まち「ア、ウウン、イヌ、イイトオモウ。」
咲「そう?」
まち「じゃあさ、その犬がめっちゃ走るの遅かったらどう思う?」
咲「えー、モタモタしてて可愛いって思う☺️」
まち「食べ方汚かったら?」
咲「手のかかる子だなぁって、逆に可愛いって思うかも。」
まち「おじさんみたいなクシャミしたら?」 
咲「ウケる😂面白くて多分笑っちゃう(笑)」
まち「でも、可愛くないとはならないでしょ?」
咲「確かに、ならないかも!」
まち「そう。可愛いは最強なの。カッコイイは、カッコ悪い瞬間を見た時に、幻滅をして最悪嫌いになってしまうけど、可愛いは、どんな瞬間を見ても、可愛いに繋げられてしまうの!好きじゃなくなることは絶対にないの!」
咲「確かに!可愛い最強!」
まち「うん!!伝わった?」
咲「うん!伝わった!」
まち「じゃあ、私が咲ちゃんのこと可愛いって言ってる意味は、伝わった?」
咲「あ、あー。」

まち、咲の両手をとり、目を見る。

 咲「?」
まち「咲ちゃん、私は咲ちゃんがどんなことをしても、幻滅したりしないし、引いたりしない。だって咲ちゃんのことほんとに大好きで、可愛いって思ってるから。男の子の役やってる咲ちゃんも、やってなくてもイケメンな咲ちゃんも、乙女な咲ちゃんも、ほんとに全部全部、可愛いって思ってるんだよ。」
咲「…/////」
まち「だから自信もって?」
咲「…うん、ありがとう。嬉しい!」
まち「よかった!」

 咲、ベンチから立ち上がる。

咲「まちは優しいね。僕を元気づけるために。」
まち「え?」
咲「うん。僕もう、かっこいいとか、カッコ悪いなんて言われてもしょげたりしない!まちがそう思ってくれてるって思えば、頑張れる!ありがとう、まち😊」
まち「う、うん、、」
咲「さ!帰ろ帰ろ、お母さん心配しちゃうよ!」

咲、先を歩き始める。

まち「咲ちゃん、いつになったら私の気持ち気づくんだろう。。」ボソッ
咲「(遠くから叫ぶ)まーちー?」
まち「はーい!」

まち、咲の元へ駆け寄る。
2人、並んで駅へ歩きはじめる。

おしまい。

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