夏でもクリスマスソングを聴いて思い出に浸る女子中学生の話。【シナリオ】
ー登場人物ー
亜冬なずな…中学3年生。ミュージカルスタジオ生。黒髪ロングポニーテール。ゆうりとは学校も一緒。少しねじが外れているところがある。
白川ゆうり…中学3年生。ミュージカルスタジオ生。茶髪ショートカット。男勝りで大雑把だが、面倒見は良い。
ーー
マックで勉強をしているなずなとゆうり。
ずっとイヤホンで音楽を聴いているなずな。
勉強の集中が切れ、なずなの方をチラチラとみているゆうり。
気付いてもらおうとするが、なずなは全く気付かない。
時刻は午後14時過ぎ。
我慢ができなくなったゆうりは、なずなのイヤホンを耳から取り、自分の耳にさす。
なずな「わ!ちょっと!」
ゆうり「は!?クリスマスソング!?!?」
蝉の声が鳴り響く。
ゆうり「なんちゅうもん聴いてんだよ、季節外れにもほどがあるだろ。」
なずな「いやぁ、私クリスマスソング大好きでよく聴いちゃうんだよね。しかもなぜか、夏に聴きたくなっちゃうの。」
ゆうり「なぜ。」
なずな「しかも冬には夏を彷彿とさせるBGM聴きたくなっちゃうんだよね~。ほら、ディズニーのマーメイドラグーンのBGMとか。」
ゆうり「どっかの感覚バグってんのか。」
なずな「あはは、かもしんない。」
なずな、ゆうりからイヤホンを返してもらい、音楽を止める。
なずな「ゆうりはない?そういうの。」
ゆうり「ねーよ。ちゃんと夏には夏の、冬には冬の曲を聴くわ。」
なずな「そうか…私がおかしいのかな…。」
ゆうり「かもしれないな。」
なずな「でもたぶん、明確な理由かはわからないんだけど、これが原因で聴いちゃうんじゃないかなぁってのはあって。」
ゆうり「お、聞かせてもらおうか。」
なずな「私、曲に思い出フィルターをかけるんだよね。」
ゆうり「思い出フィルター?」
なずな「私、冬に初めてステージの上に立ったでしょ?スタジオの公演で。」
ゆうり「あぁ、確かそうだったな。」
なずな「私、その日のことを未だに思い出して、懐かしくなりたいというか、思い出に浸りたくなる日っていうのがあるのね。そういう時に聴くことが多いかも、クリスマスソング。」
ゆうり「あーなるほど、聴くと思いだす、みたいな。」
なずな「そうそう。冬は、私の人生において大事だった出来事が、たくさん詰まってるんだ。初舞台の他にもね、初めてミュージカルをお客さんとして観たのも、冬だったんだよ!」
ゆうり「へー。」
なずな「あと、誕生日も冬だし、友達とディズニーに初めて行ったのも冬だし。あ、あと、小さい頃におばあちゃんと初めて見にいったいるイルミネーションのことも思い出すなぁ。」
ゆうり「相当好きなんだな、冬のこと。」
なずな「うん、大好きなんだと思う!思い返せば、春も秋も、懐かしくなりたくなったらクリスマスソングを聴いてるかも。」
ゆうり「じゃあ夏の曲にも思い出があるのか?冬には夏の曲を聴くって、さっき言ってたよな?」
なずな「いや、冬は至る所で勝手に流してくれるじゃんクリスマスソング。だからバランスとるためっていうか。そんな毎日思い出に浸ってたら、前進めないじゃん?」
ゆうり「前進むための夏ソングだったのか。」
なずな「そうそう。ゆうりはないの?曲で何かを思い出したり。」
なずな、机の上にあったマックシェイクを飲む。
ゆうり「私は…まぁ曲も分かるけど、それよりも、…匂い、かも。」
なずな「匂い?」
ゆうり「春の匂い、とか、夏が始まる匂い、とか、なずなは感じたことない?」
なずな「あー!!なんとなくわかるかも!」
ゆうり「そう。匂い嗅ぐと、それに関連した記憶が、私はよみがえりやすいかも。」
なずな「雨が降る前の匂いとかね!」
ゆうり「降った後の匂いもな。」
なずな「あと、教科書の匂いとか、ダンスシューズの匂いとか、」
ゆうり「ランドセルの匂いとか、おばあちゃんちの匂いとか、」
なずな「わかるー!あとさ、友達の匂いとかもない?」
ゆうり「あるある。友達の家に行くと、その友達の匂いでいっぱいでなんか、こう、言葉に表せないけど、なんか、」
なずな「わかる、わかるよ」
ゆうり「な、」
なずな「その友達でいっぱいになる感覚っていうのかな、」
ゆうり「そう、そんな感じ!」
なずな「私の家に初めて来たときもそう思った?」
ゆうり「そりゃまぁもちろん。」
なずな「いいなー、私もゆうりんち、」
ゆうり「ダメだ。」
なずな「ちぇ、ほんとガード固いんだから。」
なずな、ゆうりのポテトを取ろうとする。
ゆうり、なずなの手を払う。
なずな、しょんぼりする。
ゆうり「このマックの匂いもさ、」
なずな「ん?」
ゆうり「なずなとの思い出をよみがえらせる材料になんのかな。」
なずな「ふふ、確かに。じゃあ私は、ポテトのあの音かな。」
ゆうり「あの音…あぁ!」
二人「「テレレ、テレレ」」
ふたり、顔を見合わせる
二人「「ぷっ、あはははは!」」
なずな「なるね、思い出!w」
ゆうり「うん、絶対なるw」
なずなのお腹の音が鳴る。
ゆうり「どんだけでっかい腹の虫飼ってんだよ。」
なずな「うるさいなー、育成してんの。」
ゆうり「もう14時か。今日は何バーガーにする?」
なずな「あの辛いのにしない?」
ゆうり「おひとりでどうぞ。」
なずな「うわ!逃げた!チキン!意気地なし!でべそ!」
ゆうり「なんとでも言え。」
なずな「ねぇ一緒に食べようよぉゆぅりぃ~」
二人、携帯と財布を持ち席を立ち、レジに並び始める。
おしまい。
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