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『泣ける?』…疑問と違和感を感じる137分…「そして、バトンは渡された」【映画レビュー】

評価:★☆☆☆☆(1/5)

映画『そして、バトンは渡された』

2021年11月7日

新宿ピカデリーにて観賞してきましたので
まとめていきます。


この記事はネタバレを含みます。
本編を観賞していない方はご了承ください。


■1. 映画の詳細情報

●タイトル:『そして、バトンは渡された』
●公開:2021年10月29日
●監督:前田哲
●脚本:橋本裕志
●音楽:富貴晴美
●出演:
 ・優子役:永野芽郁
 ・森宮役:田中圭
 ・早瀬役:岡田健史
 ・梨花役:石原さとみ
 ・泉ヶ原役:市村正親
 ・水戸役:大森南朋
 ・みぃたん役:稲垣来泉
  他


●公式サイト:

●原作者:瀬尾まいこ
●原作小説:『そして、バトンは渡された』
●原作小説リンク:



■2. あらすじ


みんなに好かれようと一生懸命になるあまり
愛想笑いばかりしてしまう女子高生
優子。


彼女は今まで名字が4回も変わった経歴を持つ。


実の母親は小さい頃、
交通事故で亡くなった。


そこから自分の親になる人物が
次々と変わっていった。



現在は、
歳が17歳しか離れていない3人目の父親と
暮らしている。


複雑な家庭環境ながらも
優しく素直に育った優子。


●大学への進学
●高校のクラスにうまく馴染めない雰囲気
●3人目の父親との関係


高校卒業を目前に控え、
人生の岐路に立った彼女は
様々な葛藤を抱えながら
選択をしていく。


■3. 勝手解説

2019年の本屋大賞
『そして、バトンを渡された』を映画化。


複雑な家庭環境にありながらも
優しく素直に成長した優子という女の子が
色々な葛藤を抱えながら
人生の選択をしてく姿を描いている。


優子を取り巻く家族の人間関係は、
一言で説明するには難しすぎるものです。


これまで親になった人たちは、
何度かの結婚と離婚を繰り返し、

今まで「自分の親」となった人たちは
●母親は2人
●父親は3人


という数になっています。


それに関連して名字も4回変わっていきます。


1回目が『水戸』優子
2回目が『田中』優子
3回目が『泉ヶ原』優子
4回目が『森宮』優子


ここまで名字は変わっていくという経験は
なかなかないでしょう。


そうした複雑な家庭環境の中で成長した優子は
どのような選択をしてくのか?


ということを描いているのが本作です。


家族愛をテーマとして
血がつながっていなくとも
娘を思いやる親たちの心情や
それを感じた優子の気持ちを描きます。


キャッチコピーは
『もう一度見て、もっと泣く』
ですからね。


言うなれば、
『家族愛をテーマにした泣ける感動映画』
といった作品です。






■4. 原作と違う点


映画は小説のストーリーをベースとして
一部の設定が異なります。

今回は、
登場人物の設定の違い
についてまとめました。

『原作小説にはあって
 映画にはないシーン』
またその逆


などもありますが、
そうしたシーンや場所の違いについては
細かく言及していません。




【違い1】「みぃたん」という呼び名は、映画のみ



映画では、
・女子高生の「優子」
・小学生の「みぃたん」
という2人の登場人物が
主人公であるように話が進行します。

しかし、
映画の中盤で優子と「みぃたん」は同じ人物であり、
「みぃたん」は優子の幼いころの呼び名であることがわかります。

原作小説では、
「みぃたん」という呼び名は存在せず、
優子を単一の人物として成長を描いています。



【違い2】浜坂君は映画に登場しない


原作小説には球技大会のシーンがある。
そこで登場する浜坂君は映画に登場しません。


【違い3】優子の友達関係が良好になる瞬間

原作小説では、
高校における優子の人間関係は

「浜坂君に萌絵ちゃんが好意を寄せていることを
 伝え損ねる」

ということをキッカケにして崩れてしまいます。


そして、
その後は何か「仲直りのキッカケ」となるような
特別な描写もなく、
あるとき突然また仲良くなります。


映画版では、
優子は最初からクラスの雰囲気に馴染めず、
愛想笑いを繰り返しています。

しかし、
優子の家庭環境を知った萌絵ちゃんと史奈ちゃんが
急に同情してきて一気に関係が良好になります。


【違い4】いじめっ子の女子2人が登場しない

原作小説では
墨田さん
矢橋さん
という
スクールカーストの上位にいる女子2人が
優子のことをイジメてきます。


一方、
映画版ではこの2人は登場しません。

その代わり、
後々仲良くなる萌絵ちゃんと史奈ちゃんが
優子のことをイジメてきます。

しかし、最終的にはこの2人と仲良くなります。




【違い5】大家さんが登場しない


水戸さん(1番目のお父さん)
と離婚した梨花さんは、
優子を連れてアパートに引っ越します。


このシーンは原作小説にも映画版にもありますが、

映画版では
このアパートの大家さんが登場しません。


原作小説では、
優子のことを気に入って
世話をしてくれる存在です。


【違い6】実のお父さんが現在住む家に訪問しない



原作小説では、
物語の終盤に
優子の実の父親である水戸さんから
結婚のお祝いメッセージが届きます。

そして、優子はそのメッセージに対して
感謝の感情を抱いくというだけです。


一方、
映画版では、
「今までの親たちに挨拶まわりする」
というシーンがあります。

このシーンでは、
今まで優子の親となった人たち全員に
直接あって結婚の報告をして回ります。


このとき、
優子の実の父親である水戸さんに会い、
結婚の報告をするシーンがあります。


【違い7】実のお父さんと手紙の内容について話すシーンがない

原作小説では、【違い6】にあるように
実の父親である水戸さんのところへ訪問しません。
したがって、大きくなってからの優子は
直接実の父親に会おうとはしません。


一方、
映画版では
水戸さんの実家に訪問し、
その際にお互いが書いた手紙の内容について
気持ちを伝え合うシーンがあります。


【違い8】水戸さんの再婚相手との間にできた子供が登場しない

原作小説では、【違い6】にあるように
実の父親である水戸さんのところへ訪問しません。
したがって、大きくなってからの優子は
直接実の父親に会おうとはしません。


映画版では水戸さんの家に訪問した際、
感情が溢れた優子は泣いてしまいます。

その姿を見て
水戸さんの再婚相手との子供が
ハンカチを貸してくれるシーンがあります。


【違い9】優子は脇田君と付き合う

原作小説では、脇田君という男の子が登場します。

彼は、高校在学中に優子と付き合います。
そして、優子が短大に進学すると別れてしまいます。


一方、
映画版では脇田君は全く登場しません。


【違い10】ショッピングモールに一緒に行く人が違う

原作小説では、
優子と脇田君がデートでショッピングモールに行きます。

そのとき、
ピアノを演奏している早瀬君のことを目撃します。


一方、
映画版では
優子は森宮さんとショッピングモールに行きます。

そこでお互いのプレゼントを買います。


【違い11】梨花さんは死なない

原作小説では、
梨花さんは病気ではあるものの
最後まで生きています。

そのため、
最後の結婚式にも来ています。


一方、
映画版では
梨花さんは病気で亡くなってしまい、
優子の結婚式には来れなかった
という設定に変更されています。


■5. レビュー 『一体誰に感情移入していいのかわからない…』


映画を鑑賞後、原作小説も読みました。

どちらの作品も『泣ける!』と評判でしたが、
全く泣けませんでした。



正直、映画に関しては
今年観た映画の中で
一番つまらなかったです。



原作小説についても
「これが本屋大賞?」
と疑うほど
読み終わった後に何の感情も残りませんでした。


その理由をまとめていきます。


■ 疑問1 誰に感情移入していいのかわからない



登場人物一人ひとりに対する
考えや気持ちの深堀りがほとんどなく
『一体誰に感情移入していいのか』
わからないのです。


映画についても原作小説についても
登場人物達の動きを見ていて感じる印象は、

『自分勝手な大人たちが
 小さな女の子を振り回しているだけ』

です。


周囲の大人たちは、
●仕事の都合
●自分自身の勝手な結婚への憧れ
●親という存在に対する固定概念
などなど、


それぞれの人の自分勝手な都合で
主人公の優子を振り回し続けます。


そうした大人たちを見ていると

『全く子供のことを考えていない…』
『本当にこんな親がいるのか…?』

という気持ちになります。


そんな中でも優子は
素直で明るい子に育ちます。


…って
あまりにもご都合主義が過ぎませんか?


原作小説も映画も
フィクションのストーリーであることは
知っていて観賞しています。


とはいえ、
『こんなにも
 子供に対する接し方がおかしい大人たち
 ばかりがいる』
というのは、現実世界においてありえるでしょうか?


確かにそれぞれの登場人物達は優子に対して
無償の愛を与えてくれています。

しかし、
その愛の与え方が
与える側の一方的な視点でしかありません。


そんな自分勝手な登場人物達のうち
一体誰に感情移入すればいいのでしょうか?


優子の親になる人達の行動は、
疑問ばかりです。


■ 疑問2 映画版で、梨花は病気が悪化していないように見える


映画版のラストは、

『実は梨花さんは難病を抱えていて
 その病気が原因で最近亡くなった。

 もう少し早ければ、
 最後に梨花さんに会って結婚報告ができたかもしれない。』

という事実が優子に告げられます。


それを知った優子は、
泉ヶ原さんの家にある
梨花さんの遺影の前で号泣します。


そのとき、
病気で息を引き取る前の梨花さんの映像が流れます。


実は陰ながら優子のことを思っていた
という感動シーンです。


しかし!

難病を抱えている梨花さんは
まったく病気が進行しているように見えません。


元気なときと病気のときの外見の違いがまったくありません。


しかも、
小学生のときに優子の前から姿を消し、
優子が社会人になった後になくなっています。


梨花さんが亡くなる直前の映像が流れますが、
全く歳を取っていません。


優子とあったのは小学生のときが最後。
そこから10年ほどは経過しているはずです。


しかし、
外見は全く変わらずキレイなまま。

また、難病が進行してやせ細っているようにも見えません。


見ていて感じるのは、

『え?元気そうじゃね?笑』

という感想だけです。


母親が段々と弱って行き、
その最中でも娘である優子のことを思って
様々なイベントを影で支えていた。


だからこそ、
そんな苦しい身体にムチを打って
懸命に娘を思う母親の姿が
泣けるポイントなのではないでしょうか?


死ぬ直前までいつまでも
若くてキレイな梨花というキャラクターには
違和感しかありませんでした。


■ 疑問3 なぜ大切なことほど周りの人達に相談しないのか理解できない


前述にもあるように
優子の親となる人達は、
自分勝手な都合で行動しています。


その中で、
重要なことを全く周りの人に伝えようとしません。


●母親は病気のことを娘に伝えず
●最初の父親はブラジルへ移住することを妻と娘に伝えず

こんなことありますか?


なぜ普段の生活の中でも
当然のようにしている意見交換や相談というものを
この世界の大人たちはしようとしないのでしょうか???


すべて事後報告。

そして事実を告げて驚く相手に向かって
自分の勝手な都合を説明し続ける。


こんな人ばかりの映画で
一体どうやって泣いたらいいのか???

全く共感できませんでした。


一番の違和感だったのは、

●娘が父親に宛てた手紙
●父親が娘に宛てた手紙
を双方に渡すことなく
保管し続けていた梨花さんです。


そんな母親いますか?


そして、
その母親に対して優子は恨み一つない様子です。


そんなことありますか???笑


この映画に登場する人物は
怒りの向け先が異常です。


こうした異常行動を繰り返す人には全く怒りません。


そうした人間関係を描いて
「優しい人達」を表現できるのでしょうか?

疑問が止まりません。


●6.まとめ 全く泣けない。感動はない。共感ゼロ。泣けなかった自分の感性を疑う日々。


登場人物たちの行動がナゾすぎて
最初から最後まで疑問が絶えない映画でした。


とはいっても、
映画紹介サイトでは高評価です。


また、劇場に見に来ていた方の多くは、
泣いていました。


そうした状況を見ていると
『多分、自分の感性が人とは違っているんだな』
と感じました。


正直、私には全くハマらなかった作品です。


映画を見終わってからも
登場人物の誰かに感情移入することはできず、
一体誰の心に共感して泣いたらいいのか?
という疑問が残りました。


登場人物達一人ひとりの心理的深堀りもほぼありません。


優子を取り巻く人間関係が
急に良くなったり悪くなったりしますが、
その際の人それぞれの心境の変化などは
ノータッチで物語が進行していきます。


『この世界にいる人達はみんなサイコパスなのか?笑』


と思わされるくらい
すべての人間関係がアッサリとしすぎています。


したがって、
『とても薄っぺらい
 表面上の付き合いをしている人たち』

としか見えないのです。


これは、映画版も原作小説も同じです。


『異常なほど自分勝手で
 相手の気持ちを察することのできない大人たち
 に囲まれて、

 主人公の優子は素直で良い子に育ちました!
 そして、愛する人と結婚しました!


 はい、めでたしめでたし!』


とはならないでしょう!笑


ご都合主義が過ぎます。

あまりにもリアルな世界とは
かけ離れ過ぎていて違和感しかないです。


家族愛をテーマとした
『無償の愛を与える心優しい人達の物語』
を描きたいのはよくわかります。


そして、
それで観客を泣かせよう、感動させよう
としていることも痛いほどわかります。


しかし、
その描き方では全く感動なんてできません。


登場人物達の誰にも感情移入できません。


ですが…
前述に書いたくらいの酷評をしている私
とは対象的に
多くの観客の方が涙を流していました。


映画紹介サイトの評価が高いのも事実。


そうした周りのとの印象の差を知って、
自分の感性を疑うばかりです。


今年観た映画の中では
ダントツでつまらない映画No.1ですね。


と散々酷評したところで
筆を擱きます。


酷評ばかりですみません。

共感できないという方は、
こうした感想も一個人の勝手な見解だと思って
忘れてください。


ではまた!:D

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