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『詩』コスモス

僕が車を走らせると 風が舞って
道端に並んだコスモスが きゃらきゃらと
皆いっせいに騒ぎ立てる
若さに成り立ての少女のように


この町は海抜が高いので
ほんの少し季節が早い
そのせいか そこには僕たちの
あたりまえの暮らしはない その代わり
朝のミルクと チーズとパンと ごく自然に
神様との会話が溢れている
道端のコスモスの群れが点々と
僕を畑へ導いてくれる


コスモスは気位が高いので
大勢集まるとしとやかになる けれど
本当は誰より目立ちたくて 顎を上げ
細い首をいっぱいに伸ばす
風が一層吹き寄せるのはそんなときだ
くすぐったくて きゃらきゃらと
とたんにコスモスは笑い声を上げる


駄目!
化けの皮が剥がれてしまうわ!


  ⎯⎯ 神様と
  昨日どんな話をしたの?
  内緒よ、もちろん
  今日のほうが空が高いから


コスモスは背が高くて繊細なので
そのまま<秘密>によく似ている
でも風に吹かれ続けていると くすぐったくて
黙っていることができなくなって かるやかに
やっぱり笑い出してしまう
きゃらきゃらと
抑えきれないといった感じで


彼女たちから
僕は何を聞き出せたろう?
かわるがわる耳元で
あれこれ話してくれたはずなのに
僕は何一つ覚えていない
だって僕には関わりのない
少女の軽い繰り言だから ただ
ずんずん歩いてゆくと いつの間にか
コスモス畑の花に埋もれて 今度は僕自身が
<秘密>になってしまいそうだ!


長野県黒姫高原にて(タイトル画像も)/撮影takizawa




撮影画像はもう十数年前のものになります。コスモスは茎が長いので、集合写真を撮ったつもりでも花より茎が目立ったりして難しいですね。でも好きな花です。
下から二段目、「かるやか」は、一般的には「かろやか」だとおもいますが、母音 O より U のほうがそれこそ<軽やか>な感じがして、そちらにしました。

辻邦生作品レビューのページです・・・と言いながら、長編を再読し始めてしまうとなかなか進んでいかないので、ほぼ詩作のnoteになりつつあります(汗)

そこで!

毎週月曜日には「花と詩」として、勝手に

#なんの花・詩ですか

を始めようとおもいます。(もちろん #なんのはなしですか  の亜種です)
コニシ木の子さんほど根気はないので、細々と。花の詩やら写真やら、上げていこうとおもいます。なんのはなしですか、と併用して(または別個に)使っていただける方がいらっしゃるならその際は、また考えたいとおもいます。
以上、ちょっとしたお知らせでした。




今回もお読みいただきありがとうございます。
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