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アメリカ大統領選挙の開票報道のひどさ(4)


これは(4)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。


おかしな解説 -選挙後の大混乱の予測-

 今回の大統領選の前、様々なニュースなどで、仮にトランプが選挙で負けても、選挙後にトランプは負けを認めず、敗北宣言もせず、負けた場合に訴訟を起こす準備をしており、任期が過ぎても大統領の座を明け渡さないなど、大混乱が心配される、などとまことしやかに解説していた。

 自分はこの解説はちょっとおかしいのではないか、と疑っていた。自分はアメリカ政治の専門家ではないので、知識が十分にあるわけではなかったが、そんな大混乱になる可能性は実際には低いのではないだろうか、と疑っていたのである。

 そして、案の定、多少の混乱はあるが、大混乱は起こっていない。着々とバイデン政権への移行が進んでいる。


 ちょっと詳しく説明していこう。

選挙後の大混乱の予測:敗北宣言

 大混乱になるという予測の一つは、アメリカでは、敗者が負けを認めて敗北宣言をまず行ってから勝者が勝利演説を行う慣例であり、トランプが敗北宣言をしないことには、勝者が決まらない、というような解説であった。

 しかし、自分には、トランプが敗北宣言をしないことがどうして大混乱になったり、勝者が決まらないことになったりするのか、そもそもさっぱりわからなかった。

 トランプのことだから、敗北宣言をしない可能性がそれなりにあることは簡単に想像できる。しかし、だからといって、勝者が決まらないはずはないではないか、と自分は思っていた。各州で勝者が決まり、メディアがそれを報じていけば、勝者がどちらなのかははっきりする。その際に、トランプが負けを認めなくても、客観的には勝者がどちらなのかは自明なのだから、トランプの敗北宣言がないことは黙殺されて事態は進んでいくのではないだろうかと想像したからである。

 これは何も深い知識に基づいた特別な洞察ではなく、極めて常識的な考え方であり、多くの人もそう思ったのではないかと思う。メディアもどちらが勝者かは発表するわけであり、トランプが認めないなら、バイデン側が勝利宣言をすればいいわけで、トランプが身勝手な理由で敗北宣言をしないとしても、バイデン側がトランプの敗北宣言を待つ必然性は全くないだろうと考えるのが普通ではないだろうか。そんなわがままでおかしな人物の敗北宣言を、神から啓示を受ける信徒のようにしめやかに待たなければならない必然性などどこにもない。勝利宣言せずにそれをいつまでも待つなど、常軌を逸するほどのお人好しでもできないことであろう。


 メディアの解説者は、過去の大統領選ではそのような経過を辿っており、それが正当な手順であるかのように説明していた。しかし、過去がどうであろうと、一方が実際に負けているのに負けを認めないといった異常事態では、こんな慣習など何の意味もないことは容易に想像できると思うのだが…。

 過去の大統領選での慣習の知識があるのはけっこうなことだが、それが今後も同じようになりそうかどうかはきちんと可能性を吟味してしかるべきなのに、なぜ、過去の慣習を金科玉条のごとく奉って将来を予想するのだろうか…。



 (5)に続く!


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