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アメリカ大統領選挙の開票報道のひどさ(1)

唖然とした開票報道

 アメリカ大統領選は、選挙好きにとっては、4年に一度の、まさに一大イベントである。

 その開票日(日本時間11月4日)、自分は有休を取って、朝からテレビ各局のワイドショーやニュースなどの開票番組を見ていた(もちろんワイドショーよりニュースの方がいいのだが、日中の民放はワイドショーに占拠されている…。)。

 しかし、そのあまりの不正確さに唖然とした。


 開票が日本時間の4日午前に始まり、午後の時点ではトランプが接戦州(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンなども含む)でも得票数では大きくリードしていた。また、オハイオやフロリダ、テキサスをトランプが獲得したことも報じられていた。

 そうした状況で、番組の中にはトランプ優勢という感じで放送しているものがかなりあった。「バイデンは厳しくなった」などと言っていた司会者やコメンテーターもいた。司会者、コメンテーターの他、ジャーナリスト、アメリカ政治の専門家の中にもトランプの当選確率が高いかのようなコメントをしていた者がかなりいた。


ほとんどの人が知っていたはずの赤い蜃気楼

 しかし、結果は、ご存じの通り、最終的な選挙人獲得数では、バイデンが306、トランプ232でバイデンの勝利である。

 これは、よく知られているように、遅れて開票される郵便投票ではバイデンの得票率がはるかに高いために起きたことである。そして、4日の時点でも番組内では、「赤い蜃気楼」としてこの現象を説明していた。

 であれば、当然、その時のトランプの優勢はほとんど意味のないものであることは、ちょっと考えればすぐにわかるはずである。なのに、その時点での番組の雰囲気は、赤い蜃気楼の解説がなかったかのようにトランプ優勢のような雰囲気であった(ここに、人間の心理が、いかに騙されやすく、その場の雰囲気に流されやすいかを見て取ることができる。ちょっと考えればわかることがわからないのが人間の心理である。)。

トランプが優勢という予想はありえなかった根拠

 自分はこの時点で、トランプの票がその時点では多く、確かにオハイオやフロリダやテキサスはトランプが獲得したが、中西部のペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンなどではバイデンが後で逆転する可能性が高いと思っていた。仮にバイデンが逆転まではしなかったとしても、少なくともかなりの接戦になるだろうと思っていた。

 自分は、大統領選に至るまでのほぼ半年間、各種世論調査の掲載サイト(Real Clear PoliticsやFiveThirtyEight、207toWinなど)を毎日チェックし、それらの各州の世論調査の支持率の数字を把握していた。それらによれば、バイデンは接戦州各州の多くである程度のリードを保っていた。また、4年前にはヒラリー優勢の事前予測を覆してトランプが当選したが、今回は前回の反省を元に世論調査に補正が加えられていることも理由である。また、世論調査の数字では、前回のヒラリーV.S.トランプの時のヒラリーのリードよりも今回のバイデンのリードの方が大きかったこと(特に全米平均)も挙げられる。さらに、投票先未定層の割合が少なく、不確実性が小さかったことも、その時点でも最終的にはバイデンが勝利する可能性が高いと思っていた理由である。それらの情報に基づけば、その時点でも、少なくともトランプが勝利しそうだという分析はありえなかったと自分は思う。

 その時点でいかにトランプがリードしていようが、後で圧倒的にバイデン優勢の郵便投票が集計されていくのだから、その時点でのリードには何の意味もないのは容易に想像がつくわけである(もう一つ付け加えれば、開票作業はトランプの支持の厚い田舎で早く行われ、大都市では時間がかかる傾向がある。これも後でバイデンに票が多く入る理由である。アメリカでは、大都市と地方では、民主・共和両党への投票には圧倒的な差がある)。

 さらに、この時点ではジョージアはトランプがリードしていたものの、ニューヨークタイムズのウェブサイトの勝利予測では、ジョージアでのバイデン勝利の可能性が高いと予測していた(無料でアクセスできるサイトなのだから、日本のメディアもそれくらいチェックしていそうなものだが、そういう情報は自分が聞いていた限り、日本のテレビなどでは流れていなかった。ちなみに、自分は、ニューヨークタイムズの他、CNN、ABC、NBC、CBS、朝日新聞などの開票速報サイトも同時並行でチェックしていた。)。


(2)に続く!


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