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セッション定番曲その102: Tupelo Honey by Van Morrison

歌ものセッション定番曲。単純なコードのループで、ウワモノの歌と演奏が熱く盛り上がります。工夫次第で楽しめる、セッション向きの曲。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Van Morrison

ヴァン・モリソンって日本ではそんなに人気が無かったのかな。英米では非常に評価の高い歌手です。「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー(2008年発表)」ではDavid BowieとMJに挟まれて24位に選ばれていました。(こういうランキングって基準が不明ですが)

全盛期の1960年代末〜1970年代ってもっと派手なアーティストが沢山いたし、ロックならロック、ソウルならソウル、ジャズならジャズ、という明確なイメージが打ち出しにくいミュージシャンは日本では人気が出にくかったのかもしれません。本人も気難しい性格だったようで、プロモーションにも熱心ではなかったせいもあるかも。

米国のテレビドラマ「Friends」のRossがこの曲を含むアルバム「Tupelo Honey(1971年発表)」を「無人島に持っていく一枚」に挙げていた記憶があります。

1970年代の英米に数多くいた所謂「ブルーアイドソウル・シンガー」のひとりですが、北アイルランドのベルファスト出身で音楽的にもその影響は聴き取れます。この「Tupelo Honey」という曲もライブではケルト音楽的なアレンジを加えて演奏されることもありました。渋い歌声は好みの分かれるところかもしれません。

ポイント2:She's as sweet as Tupelo honey

She's as sweet as Tupelo honey
Just like honey, baby, from the bee

「Tupelo」は蜂蜜が採れる花の名前で米国南部では高級な蜂蜜とされているようです。実はエルヴィスが生まれた町の名前もTupeloだったようです。
女性の形容に使われたのがこの歌が初めてだったのか、それとも以前から「Tupelo honeyのように素敵な(甘い)女の子」という表現が米国南部ではあったのか、ちょっと分かりませんが、米国人にはピンとくる例えなのかもしれませんね。

ポイント3:Crazy Love

Van Morrison自身の1970年のヒット曲「Crazy Love」との関連性も指摘されています。こちらは優しい声で歌うラブバラード。確かに出だし部分のメロディは似通っていますが、これは彼のクセのようなものかも。

この曲も数多くカバーされている人気曲です。


ポイント4:詩的で難解な歌詞

(英語に堪能で英詞にも詳しい方にご指摘いただきましたので、この項、加筆修正しました)

You can take all the tea in China
Put it in a big brown bag for me
Sail right around all the seven oceans
Drop it straight into the deep blue sea

中国にあるすべてのお茶を集めて、大きな茶色の(麻)袋に詰めて、
7つの海を航海したら、それを深い海に沈めてくれ

英国人にとって欠かせない紅茶、その原材料の茶葉はかつては中国産のものが極上とされていて高価でした。「all the tea in China」は「とても高価なもの」の例え。それを投げ捨ててもいいよ、というのは「そんなものが自分の欲しいものなのではない」と。

You can't stop us on the road to freedom
You can't keep us 'cause our eyes can see
Men with insight, men in granite
Knights in armor bent on chivalry

「私たち(男たち)」の旅路を邪魔そうとすることは出来ない、
「私たち(男たち)」は騎士道に傾倒する、鎧の騎士たち

「chivalry」は「中世の騎士道精神(忠君や勇気などをモットーとし、婦人を敬い弱きを助ける)」で、現代でも紳士的な振る舞いの形容に使われます。

自分(たち)にとって一番大切なものは精神的な強さであって、それは大切な人を愛す力をくれるのだ、と。

ここでの「You can」「You can't」は具体的な誰かを指しているのではなく、「誰かが」「世界中が」という意図ですね。

ポイント5:カバー

Cassandra Wilson、1993年
ジャズシンガーからより幅広い「黒い音楽」のシンガーに移行し始めた頃。
ぐっとテンポを落として、語りかけるように歌っています。


Dusty Springfield
、1973年録音


アコースティックでのカバー、意外な歌声です。


本人によるバンド編成でのライブ録音


◼️歌詞


You can take all the tea in China
Put it in a big brown bag for me
Sail right around all the seven oceans
Drop it straight into the deep blue sea

She's as sweet as Tupelo honey
She's an angel of the first degree
She's as sweet, she's as sweet as Tupelo honey
Just like honey, baby, from the bee

You can't stop us on the road to freedom
You can't keep us 'cause our eyes can see
Men with insight, men in granite
Knights in armor bent on chivalry

She's as sweet as Tupelo honey
She's an angel of the first degree
She's as sweet, she's as sweet as Tupelo honey
Just like honey, baby, from the bee

Oh, you know she's alright
You know she's alright with me (She's an angel)
Oh, you know, you know, you know she's alright
She's alright with me (She's an angel)
Well, you know, you know, you know, you know, you know she's alright
Right with me (She's an angel)
She's alright, yeah, she's alright, she's alright with me (She's an angel)


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