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セッション定番曲その57:Born To Be Wild by Steppenwolf

ロックセッションでの定番曲。すべてのパーツが完璧に組み合わされている名曲で、原曲をよく聴き込んでいないとアノ雰囲気は出せませんね。ドラムがカギを握っています。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:素晴らしき「一発屋」

Steppenwolfは別に一発屋じゃなくて他にもヒット曲があったのですが、何といってもこの曲でみんなの記憶に残っています。1968年のデビューアルバムに収録されていたので、この曲はバンドとしてごく初期の作品。

一発屋」って結構バカにされることも多いですが、一発当てるだけでもスゴイこと。バンド名やミュージシャン名は知らなくても、曲を聴いただけで「コレ!」と分かる曲を残したというのは凄いことですよね。

「Born To Be Wild」はドラムのヒット1発からギターリフで始まり、特徴的なベースラインを合図に歌に入り、オルガンとギターが絡んでいくという出だし。ブレイクからドラムロール、短いけど効果的なオルガンソロ、ドラムブレイクを経て歌に戻って、ギターのオブリが増えていく、という構成。全ての楽器や歌がパーツとして完璧に組み合わされて、弛緩する場面が全くない3分半。これをバンドの初期に録音出来たというのは奇跡かもしれません。

どうしてもギターと歌だけが前面に出てしまうロック曲が多い中で、この曲がセッションイベントで人気がある理由は「みんなが主役」になれるというところかもしれませんね。

セッションイベントでやる時には、基本構成は原曲に合わせて、ソロを長め、エンディングはちゃんとキメる、という感じ。オルガンが無いとやっぱり感じが出ない曲ではあります。ジョン・ケイの歌声は適度に荒れていて、ハードな曲調に合いますね。後に挙げている様々なカバー版ではみんな少しテンポを上げている感じ。

現代の感覚では確かに曲も歌詞もダサいですが「ダサいくらい何だよ、我慢しろよ!(by あまちゃん)」ということで、そのダサさの先にあるものを目指しましょう!

ポイント2:Easy Rider

翌年1969年にこの曲は「Easy Rider」という映画の冒頭のバイク(ハーレーダビッドソン)の疾走シーンで使われて、イメージを確立しました。もともと歌詞もバイク走行をイメージさせるものだったのでピッタリだったんですね。速過ぎない曲のテンポも広い草原を走るシーンにちょうどハマる感じ。この映画のポスターやシーンの写真、そしてこの曲などは、まさに「アイコン」化していますね。映画やドラマでも主人公の部屋にこのポスターが飾られていたり、重要なシーンで「Born To Be Wild」がBGMで流れたり。

Steppenwolf - Born To Be Wild (Easy Rider) (1969)

この頃の所謂「アメリカン・ニューシネマ」って名作も多いのですが、今ではあまり顧みられる機会が減っていて、観たことの無い人も多いかもしれません。映画作法的に筋が混乱していたり、意図的に画像が乱れてたり、アンチヒーロー、アンハッピーエンドな作品も多くて、また時代背景を理解していないと意図が分からなかったりもします。

「Easy Rider」もそんな映画のひとつ。ネタバレは避けますが、爽快感だけの作品ではありません。若者はいつも体制に反発して自由を求めて闘いますが・・・

ポイント3:Heavy metal thunder

実際にはこの箇所はバイクの振動や轟音について歌っているもので、音楽そのものの描写ではないのですが、この「Heavy Metal」は後にハードなロックの代名詞として使われるようになり「ヘビメタ」として一般の人にも認識される言葉となりました。

「ロック」というのは柔軟性の高いジャンルだったのですが、そのくらいのタイミングから「ロック内の分野細分化」が進んだ気がします。

ポイント4:最初はバラードだった?

この曲の作者は、録音時には既に脱退していたメンバー(ギタリスト)で、どうも最初はバラードとして書かれていたらしいです。その頃の音源は残っていないのでイメージが湧きませんが、歌詞の内容にはあまり合っていない気もしますね。「Born To Be Wild」と歌い上げる、と・・・。

ポイント5:発音のポイントなど

Head out on the highway
原曲では「Head-out-on」と歌っているように聞こえますね。

In whatever comes our way
whatever」は単体で語気強く使うと「何でもいいよ!」「クソくらえだよ!」というニュアンスの捨てセリフになります。ここでは前後の流れの中で使われていますが、吐き捨てるように歌ってよいと思います。

Take the world in a love embrace
「世界を愛で抱きしめようぜ」という壮大なメッセージ。「embrace」は大事な単語です。身体的接触をあまり好まない日本人からするとピンと来ないかもしれませんが、親しい間柄なら直ぐに抱きしめてしまう米国人には違和感ないのでしょうね。「b」音と「r」音が連続して出てくるので気を付けましょう。

Fire all of your guns at once
And explode into space
ここでの銃は敵に向かって撃つというよりも「無駄に弾を使ってしまおう(銃暴力を止めよう)」「その勢いで宇宙までぶっ飛んでいこう」という意図ですかね。
「at once」は「(ありったけの銃を)一斉に」という意味。
「explode」はちょっと発音が難しいので注意しましょう。「p」音「L」音をしっかり出しましょう。

ポイント6:Born to be wild

これを「ワイルドでいこう」と訳した人はすごいですね。
Baseball→野球 という名訳を思い出します。

I was born to be wild
俺は生まれつきワイルド(野性的、荒くれ者)だぜ、ルールになんて縛られないんだ、という叫び。
それを邦題では「みんなも俺に付いて来いよ」という呼び掛けに変えています。

まさに古典的な「ロック」のイメージそのものだし、この1960年代後半の若者の信条を表現していますね。泥沼のベトナム戦争、為政者への不信感、反戦運動、ドラッグとセックスへの逃避、戦場を彷彿とさせるギターの歪んだ爆音。ああ、懐かしのロック!

ポイント7:様々なカバー例

有名なのはBlue Oyster Cultのコレ。ちょっとボーカルが弱いですが、疾走感倍増しで演奏しています。
Born to Be Wild (Live 1974)

ACCEPTのUdo Dirkschneiderが歌う、完全なメタル・バージョン。良い子は真似しないように。
Born to Be Wild (feat. Udo Dirkschneider)

メタルファンの心の拠り所、Riotによるカバー。自分達のものにしている印象。
Riot - Born To Be Wild

このボーカルの感じ、好きだな。B級映画風のMVも良い。
Hinder - Born To Be Wild

Wilson Pickettが歌い、Duane Allmanがギターを弾く
Born To Be Wild

カントリーにしてみたやつ
Born To Be Wild

スカパラ!
Born To Be Wild

■歌詞


Get your motor runnin'
Head out on the highway
Looking for adventure
In whatever comes our way

Yeah, darlin', go and make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space

I like smoke and lightnin'
Heavy metal thunder
Racing with the wind
And the feeling that I'm under

Yeah, darlin', go and make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space

Like a true nature's child
We were born, born to be wild
We can climb so high
I never wanna die
Born to be wild, Born to be wild

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