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セッション定番曲その53:Spain (I Can Recall) by Chick Corea / Al Jarreau

ジャズ/ファンク系セッションでの定番曲。最初は難曲だと思い込みがちですが、実際にやると楽しい曲です。イベントの最後にみんなでやりたいですね。歌いましょう!
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Al Jarreau

歌詞がついているものは「Al Jarreau版」とよく呼ばれますが、既に沢山の人が歌っているので、敢えてそう呼ばなくてもいいんじゃないですかね。

Al Jarreauは甘いバラードからノリのいいダンス曲まで歌いこなす歌手、スキャットも巧みです。「(インスト曲でも)何でも歌っちゃうヒト」にありがちな「歌そのものはイマイチ」ということもなく、ちゃんと声と歌そのもので勝負出来る人。

この「Spain」も彼の歌唱の代表曲のひとつです。
Chick Coreaの起伏の激しいメロディ、郷愁をそそるようなメロディ、に合わせて歌詞を書いて、本来はメロディだけで表現していた情景を言葉にしてしまうという、よく考えると元も子もないことをやっている訳ですが。


ポイント2:どう覚えて、どう歌うか?

私もずっと「こんなのどう歌えるの?」と思っていたひとりです。
メロディに後から歌詞(言葉)を当て込んだものなので、けっこう無理矢理な箇所もあるし、速いテンポ、ラテンのリズム、にちゃんとのって歌わなければならない・・・うわぁ、と。

こういう曲って、ずっと聴いていて、ある日お風呂の中で鼻歌で出てきて、で気が付いたら何となく歌えるようになっていた、というのが私の経験です。耳から入ったものって記憶に残るというか、いつの間にか身体に染み込んでいるという感じです。

もちろん、ちゃんと譜面が読める人は最初から歌う練習をしていって、徐々に表現を磨くというやり方もありますが。

ポイント3:構成をどうするか?

イントロ(後述)、Aメロ、Bメロ、ブリッジ、ソロ回し、というパーツですが、これをどういう順番でどういう構成にするのかは、セッションで合わせる場合には事前に決めておかないと大混乱します。よく演奏されるのは「黄色本(セッション・ハンドブック)」に記載されている構成ですかね。

Aメロ、Bメロ、Aメロ、Bメロ、ブリッジ、Bメロ、でその後ソロ回しして、ブリッジの最後を歌って、Aメロ、Bメロでエンディングはリットして盛り上げて終わり。

ソロ回しの際にいちいちキメ(Bメロ)に行くのか行かないのかも決めておく必要があります。都度行くとメリハリが付いて分かりやくなりますが、ソロ演奏者が多い時にはソロパートの時間がとても長くなってしまう弊害もあります。

そういう共通認識を持った上で、各自のソロを思い切り楽しみましょう。
ソロはブリッジ部分で回しますが、一度ちゃんと聴くとメリハリがついたコード進行で、着地点も分かりやすくなっています。

ポイント4:イントロ(ヴァース)

有名な「アランフェス協奏曲」の一節を使っています。
この導入部だけで「スペイン」についての曲だなというのを感じさせる仕掛けになっています。

歌詞は「セピア色に退色した写真のような過去の思い出」「私たちは再び出会い、愛し合う、そういう時が来た」と綴られています。過去は大事だけど、これからどうするのかがもっと大事だ、と。

ここはルバートで、雰囲気のあるパートですが、すっ飛ばしていきなりカウントでAパートから始める、でも良いと思います。

アランフエス - Wikipedia

ポイント5:Aパート

I can remember the rain in December
The leaves of brown/ on the/ ground/
ここからいきなり高速パートが始まります。
1行目はひとかたまりとしてひと息で、
2行目はリズムに合わせて「/」で区切った感じで歌うと覚えやすいです。

In Spain/ I did love and adore you
The nights filled with joy/ were our yesterdays
And tomorrow will/ bring/ you/ near me/
3行目の「In Spain」のところはドラムと息を合わせたい箇所。
4行目はひとかたまりとしてひと息で、
5行目は「/」で区切って覚えると覚えやすいです。

Bパートの後にもう一度出てくるAパートの歌詞も基本的に同じ感じで歌えます。

個々の単語の発音に気を付けるというよりも、いかに歯切れよく違和感無くひと息で発音出来るかが大事ですね。

ポイント6:Bパート

フラメンコのようにメリハリが付いたメロディで、基本的には「歌う」ことを前提に書かれていないはずなので難所です。

I/ can/ recall my de/sire
Ev/ery/ reve/rie is on/ fire
大体のニュアンスはこんな感じで、手拍子を打ちながら歌うと分かりやすいです。

And I/ get a /picture of /all our yesterdays
Yes /today, /I can say
"I get a /kick every /time they play that /'Spain' again"
こっちも大体のニュアンスです。実際にはうまくリズムに乗せて歯切れよく言葉を突っ込まなければならないんで、単語の途中にアクセントが来たり、シンコペートしたりします。

前述のようにまずは鼻歌で歌えるように慣れていくのがよいと思います。

「reverie」は「目覚めている時に見る夢」「幻想」という意味で、響きからもフランス語由来なのが分かりますね。さすがにお洒落な単語を歌詞に使っていますね。

ポイント7:ブリッジ

歌い始めのタイミングが微妙なので、練習しましょう。
他のパートに比べて、美メロで自然に歌いやすい箇所だと思います。

I see moments of history
Your eyes meet mine/ and they dance to the melody/
And we live again/ as if dreaming
メロディーにのせるとこんな感じの区切りになります。

The sound of our hearts beat like castanets
And forever we'll know their meaning
心の音がカスタネットのように響く、と歌っているのでそういうニュアンス(どういう?)を出してみましょうか。

こうして見ていくと、全編を通して使われている単語は平易なものが多く、意味が分かりやすい歌、と言えます。

ポイント8:どんな時にリクエストするか?

いちおう「定番曲」ですが、ドラマーさん、ギタリスト(の誰かひとり)などが曲を知っていないと、いきなり合わせるのは難しいので、事前に周囲に探りを入れてみましょう。

あとは、どうしても長くなりがちなので、セッションイベントによっては「敬遠する曲リスト」に載っている場合もあります。イベント主催者に確認してみましょう。またイベントによっては「イベントの最後にみんなでやる曲」に設定されている場合もあります。

「じゃあ、とりあえずSpainで」という感じで始まってしまうこともあるので、セッション参加者次第ではありますが。

私は以前、某駅前でサックスとベースの2人組がストリート演奏しているのに出くわして、飛び入りで歌ったことがあります。楽しかった。

■歌詞


Yesterday, Just a photograph of yesterday, And all its edges folded
And the corners faded sepia brown,
And yet it's all I have of our past love, A postscript to its ending
Brighter days, I can see such brighter days
When every song we sang is sung again
And now we know, We know this time it's for good
And we're lovers once again, And you're near me

I can remember the rain in December
The leaves of brown on the ground
In Spain I did love and adore you
The nights filled with joy were our yesterdays
And tomorrow will bring you near me

I can recall my desire
Every reverie is on fire
And I get a picture of all our yesterdays
Yes today, I can say
"I get a kick every time they play that 'Spain' again"

I can remember the rain in December
The leaves of brown on the ground
Our love was a Spanish fiesta
The bright lights and sounds were our joy each day
And the nights were the heat of yearning

I can recall my desire
Every reverie is on fire
And I get a picture of all our yesterdays
Yes today, I can say
"I get a kick every time I see you gaze at me"

I see moments of history
Your eyes meet mine and they dance to the melody
And we live again as if dreaming
The sound of our hearts beat like castanets
And forever we'll know their meaning

I can recall my desire
Every reverie is on fire
And I get a picture of all our yesterdays
Yes, today, I can say
"I get a kick every time I see you gaze at me"

(solo)

The sound of our hearts beat like castanets
And forever we'll know their meaning

I can remember the rain in December
The leaves of brown on the ground
In Spain I did love and adore you
The nights filled with joy were our yesterdays
And tomorrow will bring you near me

I can recall my desire
Every reverie is on fire
And I get a picture of all our yesterdays
Yes today, I can say
"I get a kick every time they play that 'Spain' again"



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