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セッション定番曲その43:Black Magic Woman by Fleetwood Mac / Santana

夏のビアガーデンのBGM定番曲。ロック系セッションの定番曲でもあります。基本的にはマイナーブルースですが・・・
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Fleetwood Mac

Santanaの大ヒット曲として知られていますが、原曲はPeter GreenのいたFleetwood Mac。そして更に元ネタはOtis Rushの「All Your Love」というマイナーブルースだと言われています。更に更にEric ClaptonがThe Bluesbreakersで「All Your Love」をカバーしており、それにも影響を受けている、と。

いずれもブルースをルーツに、「ギターを泣かせる」ことの出来るギターヒーロー達。一音聴いただけでそれと分かる特徴的なトーンの持ち主で、官能的な演奏をする人達ばかり。

初期のFleetwood Macはざっくりと「ブルースロック」で括られてしまうこともありますが、最初期を除けばかなり早い時期にブルースの縛りを抜け出して、もっと幅広い曲を演奏していました。ずっと在籍していた2人のリズム隊の手堅い演奏力がそれを可能にしていましたね。原曲では不器用にラテンビートを表現しようとしていたのが聴けます。


ポイント2:マイナーブルース

ブルースのテーマって基本的に悲劇的な内容が多くて「女に逃げられた」「金も無い、職も無い」「ここからどこにも行けない」「雨降りが続いて洪水が起きた」という歌ばかり。特にマイナーブルースではそういう面が強調されます。歌も演奏も、聴き手の心に突き刺さる表現。ある意味では古典的です。演歌的とも言えます。

この曲はそれだけでは終わっていないのがポイントです。後述のリズムの工夫や新しい感覚の歌詞などで、一歩先に踏み出して、ちゃんと「ヒットする曲」になっています。

ポイント3:ルンバ

ブルースやジャズのリズムパターンとしてラテンのリズムを使う場合があります。この曲では「ルンバ」っぽいリズムが使われているのが特徴。それが歌詞の妖しさや情熱的な感じの表現を強調しています。

Fleetwood Macのバージョンではかなり強引なドラムとリズムギターで表現されていますが、Santanaの方はパーカッションのメンバーもいて、よりラテン色が強調されたアレンジになっています。

このラテンのリズムの話はとんでもなく奥が深くて、本格的なラテン音楽ファンの方の目も光っているので、迂闊なことは言えないのですが、ブルースやジャズのルーツである米国南部地域にはカリブ海系の移民も多くて、音楽的にはいつも繋がっていて、ふとした拍子に表面化してヒット曲の要素になるというのがずっと続いています。

「夏のビアガーデンのBGM」というイメージから少し深堀りして、演奏したり聴いたりしたいですね。


ポイント4:黒魔術の女

魅力的なタイトルだと思いませんか? Peter Greenのセンスが光りますよね。「魔性の女」は昔からあるブルースのテーマですが、そこを一歩踏み込んで魔術的な力と魅力のある謎の女を主人公にした、と。

Black Sabbathが1970年に黒魔術を前面に出したアルバムを発表する以前、1960年代にも「魔女」やら「黒魔術」をテーマにしたポピュラー音楽はありました。Peter Greenはそれをもっと洗練させて歌詞に取り入れたのです。

Got a black magic woman
Got me so blind I can't see
黒魔術の女だと分かっていても惹かれてしまい、盲目にされてしまう。

she's a black magic woman
She's tryin' to make a devil out of me
自分も(自分の中にあった)悪魔を呼び起こされてしまう。

ポイント5:リズムパターンの変化

後半部でリズムパターンとテンポを変えて速くしていくのは、まさに「All Your Love」のパクリ。Santanaの場合はGabor Szaboの「Gypsy Queen」という別の曲に繋げて、更に盛り上げる構成になっています。

ジャズのセッション(ラテン系のリズムでやる場合)では暗黙の了解でドラムがきっかけを出して「ここからは倍テン」というのはよくあるパターンですが、ブルース~ロック系では事前の打合わせが必要ですね。カッコいいし、聴く側を飽きさせないので、是非チャンレンジしてみましょう。

ポイント6:ギターサウンド

Peter Greenは黒魔術の女の妖しさ艶っぽさをギターのハーモニックスやベンディングで表現。Carlos Santanaは更に官能的な、高揚感まで表現。歌よりも歌うギター。

まさにギターが主役の曲です。音色も工夫して思い切り弾いてみましょう。サスティーンの効かせ方がポイントですね。
ギターが主役の曲がヒットチャートから消えてしまっている現在、こういう曲がまたヒットするといいですよね。

ポイント7:発音のポイント

という訳で歌が主役の曲じゃないのですが、いちおうポイントは押さえておきましょう。

black magic woman
「black」はべっとりした、ちょっといやらしい発音ですwww
magic」は日本語にもなっているので素直に発音すればいいのですが、なぜか「mazic」みたいな音になっているのも聞きます。素直に。
「woman」は発音の難しい単語のひとつ。「w」音の前に思い切って唇を尖らせるといいですね。

Stop messin' 'round with your tricks
「mess around」というのは「ちょっかいを出す/邪魔をする」みたいな感じです。「g」と「a」音が省略されているので、注意。

Got your spell on me baby
この「spell」は「魔術/呪いです。「spell on me」でワンワードみたいな感じで歌いましょう。

■歌詞

Got a black magic woman
Got a black magic woman
I got a black magic woman
Got me so blind I can't see
That she's a black magic woman
She's tryin' to make a devil out of me

Don't turn your back on me baby
Don't turn your back on me baby
Yes, don't turn your back on me baby
Stop messin' 'round with your tricks
Don't turn your back on me baby
You just might pick up my magic sticks

Got your spell on me baby
Got your spell on me baby
Yes, you got your spell on me baby
Turning my heart into stone
I need you so bad, magic woman
I can't leave you alone


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