第5話:静岡と右膝の等価交換

#ぽブ男日記 を初めて読む方
「第1話:バイト先に取り残される」

前回の記事をまだ読んでいない方
「1日目〜静岡突入編〜」

ママチャリで大阪へ行く②
〜静岡と右膝の等価交換編〜

東京→新大阪ママチャリ旅行
2日目

目を覚ましたのは朝5時。

初日の遅れを取り戻すため
ぽブ男とバラ男は張り切って早起きをした。

昨晩は大学で学んでいる
スポーツトレーナーの知識を活かし

ストレッチやアイシング、
温水と冷水の交代シャワーで血流促進など

完璧なケアを行なったため
疲れも感じず、良い目覚めだった。

注)場所はマンガ喫茶である。

また、心配していたお尻も問題ない

出発前、
諸先輩方にお話を聞いていると

口を揃えて

「ケツがヤバいから!」

と教えていただいた。

しかしながら、

半日以上も自転車を漕ぎ続けた
ぽブ男のおケツには
なんの異変もない。

なぜかって?

ママチャリだからである。

やんちゃな子どもを連れて
頑張るお母さんたちのために設計された
幅広ぷにぷにのサドルが
ぽブ男のおケツを優しく包み込んで
くれている。

さすがである。

皆さんにも遠出の際には
ぜひママチャリをオススメしたい。

そんなこんなで
明け方から国道1号線沿いを
かっ飛ばすぽブ男とバラ男。

天気は快晴。

地図を見ると、かなり海沿いを通っていることがわかる。

これはもしやステキな景色が拝めるのではないか?

やはり旅路の醍醐味といえば景色である。

世界の車窓からというわけにはいかないが
静岡の車上から駿河湾を一望してやろう。

辺りには海産物や運送系のお店が増え、
潮の香りも漂ってきた。

まもなく海岸線と並走する道に入る。

そろそろ目の前が開けるか?

海と空がはるか彼方の地平線で
交わっているのか?

期待に胸を膨らませ、
勢いよく角を曲がったその先は

コンクリートだった。

「太平洋自転車道」という
大層な名前がついた道の左手海側は

ただひたすらに高い
コンクリートの壁だった。

そりゃあそうだよね!

浜風が強いからね!!!

横風は危ないからね!!!

どうでもいい。

そんな配慮はどうでもいいから
海を見せてくれ。

静岡の車上から
「うわぁ、すげぇ…」

と言わせてくれ。。。

結果、
その願いが叶わないまま
お昼前に静岡駅に到着。

ここまでなかなか険しい道のりだった。

「静岡駅ついたぜ!ひゃっほーい!」

と浮かれ気味に
静岡出身の同級生にLINEを送る。

「おー!すごいね!そこでちょうど静岡の半分だから頑張って!」

シズオカノハンブン??

ハンブン??

半分!?!?!?!?!?

衝撃の事実である。

静岡に入ってから2/3くらいは
進んだつもりでいた。

が、まだ半分。

この思いをもう一回
繰り返さなきゃいけないなんて。。

そしてさらなる試練がぽブ男を襲う。

膝の痛みである。

ピキっ

静岡駅を出たくらいから
違和感を覚えた。

いやいや、
このくらい大丈夫っしょ。
いけるっしょ。

と自分に言い聞かせたが
3時間後ついに限界を迎えた。

立ち漕ぎができなくなったのである。

ママチャリで立ち漕ぎができずに
どうやって新大阪までたどり着けというのだ。

さらに隣には、
無傷でクロスバイクに跨る後輩。

立ち漕ぎができないママチャリのぽブ男と
何の問題もないクロスバイクのバラ男

みじめだ。

先輩としての威厳もくそもない。

出発前、
大阪に着くのが先か?
ママチャリが壊れるのが先か?

とかなんとか言っていたが

何よりも先にぶっ壊れたのは
ぽブ男の右膝だった。

みじめだ。

ボロボロのママチャリ以下という
ぽんこつの右膝である。

それでも静岡はまだまだ続く。

ここまできたら進むしかない。

膝の痛みをこらえながら
必死でママチャリを漕ぐぽブ男

静岡もあと1/3くらいだろうか。

掛川あたりの田んぼ道で
ぽつんとたたずむ売店があった。

古びた看板に書いてあった文字に
衝撃を受ける。

「たこ焼きハンバーガーソフトクリーム」

なんだそれは!?!?

一体どんなソフトクリームなんだ??

あったかいものと
あったかいものと
冷たいものを組み合わせて
成立するのか??

それはもはやソフトクリームの形状を成せるのか?

驚きすぎて
一瞬膝の痛みを忘れるほどだった。

「静岡 たこ焼きハンバーガーソフトクリーム」

とGoogleさんに聞いてみるも
答えは返ってこない。

これは辺境の地で
まだ世間に知られていない
世紀の大発見をしてしまった
のではないか??

自分たちがこの衝撃のスイーツの
第一発見者なのではないか??

右手に期待
左手に不安

右膝に爆弾を抱えて
恐る恐る売店に近づいていく

いざ!

正面のディスプレイを覗く

そこには

たこ焼き

ハンバーガー

ソフトクリーム

それぞれ並べてディスプレイされていた。

返せ。

右膝を痛み、疲れ切った心に灯った
わずかなワクワク感を返せ!!

考えてみれば
そりゃあそうだ。

どう考えたってたこ焼きとハンバーガーとソフトクリームは共存できないだろう。

そんな正常な思考もできなくなるほどにぽブ男の心は荒んでいた。

掛川、藤枝を超え
浜名湖が近づいてきた

膝の痛みとたこ焼きハンバーガーソフトクリームのダメージでぽブ男は一言も喋らず無心でママチャリを漕ぎ続けている。

それを見かねたバラ男が

ママチャリとクロスバイク交換しますか?

と提案してきた。

最後までママチャリで完走したいという思いもあったがこれ以上ローペースでバラ男に迷惑をかけるのも申し訳ない。

ぽブ男はママチャリを降りる決意をした。

しかし、なおも運命はぽブ男に試練を与える。

なぜ膝を痛めて立ち漕ぎができなくなったかといえば「膝を伸ばすと痛みが出る」ようになったからだ。

そしてクロスバイクのサドル位置はママチャリのそれよりも高い。

つまり座って漕いでもママチャリより膝が伸びてしまうということだ。

そんなことも考えずクロスバイクに跨ったぽブ男。

漕ぎ出してすぐ

「ん、、あっ、、いっ、、あ、あんっ、、」

なんのプレイだ。

膝の角度が絶妙で漕ぐたびにに痛いところを刺激され声が抑えられない。

後輩に気を遣われ
ママチャリというプライドまで捨てたのに

なぜ喘ぎ声まで後輩にお届けしなければならないのだろう。

もう嫌だ

この辺りでぽブ男の心は完全に折れた。

この日は名古屋駅まで進むつもりだったが
ギリギリ静岡を超えた豊橋でストップした。

なんとか静岡を抜けることはできたが

海の見えない太平洋自転車道
ママチャリ以下の右膝
たこ焼きハンバーガーソフトクリーム
なおも責め立てるクロスバイク

静岡はたくさんのものを
ぽブ男から奪っていった

新大阪まであと200キロ

明日も右膝が同じ状態なら
名古屋駅まで頑張って
そこから電車かヒッチハイクに
切り替えよう…

旅の2日目は絶望のうちに幕を閉じた。

起死回生の3日目。
パラリラパラリラチリンチリン編に続く。

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