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オムニ・スカルプチャーズ:2 /武蔵野美術大学 美術館・図書館

承前

 舟越さんと同じく、木彫にこだわって人物像を制作するのが棚田康司さん。棚田さんといえば昨年の国立新美術館「古典×現代」展での円空とのコラボレーション展示が記憶に新しい。じっさいに円空から直接的に濃い影響を受けたものとあって、会場での両者の共鳴ぶりは他作家と比べても群を抜くものがあった。
 棚田さんは、木のむき出しの素材感を盤石なベースとし、そこにある種の違和感をフックとして付け足していく。出品作では、木彫の一部だけに唐突に金箔や外字新聞の紙面が貼付されていた。素木(しらき)で終わらせない、すんなりとはいかない、引っかかる感じ。木という素材を逆説的に際立たせてもいる。
 木材になる以前に木が宿していた生命力を作品の構成要素として活かすありようは、いうまでもなく円空にとどまらず、古代の仏像にまで結びつく。
 大阪市立美術館の「木×仏像」(2017年)は、木を素材とした仏教彫刻のそのような側面を丹念に紹介する展覧会で、霊木の根をそのまま像にした「立木仏」などが多く出ていた。
 たとえその材が霊木でなくとも、命を宿していたそのときのかたちを色濃くとどめることで、人のかたちをしていながらも、人を超えた大いなる自然の力、聖性のようなものすら帯びるようになる。その効果を最大限に利用する。棚田さんの彫像の後ろに、古代から連綿と続く人物彫刻の歴史が踏まえられているのを感じた。

 須田悦弘さんの作品もあった。いつものごとくさりげなく、物陰にまぎれ、片隅にちょこんと。大物が続くなかでの、一服の清涼剤であった。

 ムサビは交通の便がよいとはいえないが、ときおりこうして楽しい展示をしているので見逃せない。あのデザイン偏重で読みやすさに欠けるリーフレットや図録のレイアウトをどうにかしてほしいものだが……まあそれくらいにしておこう。今回も楽しかった。



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