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宮城県美術館のコレクション展示:2

承前

 具体美術協会(以下「具体」)の抽象絵画も、宮城県美術館の大きな魅力。
 吉原治良、白髪一雄、元永定正ら具体の作家たちは近年、国際的に高い評価を受けている。とくに「フット・ペインティング」の白髪に対する評価は近現代の日本人作家としてトップクラスで、オークションの高値落札の常連となっている。
 現在、大阪中之島美術館・国立国際美術館の2館共催による大回顧展「すべて未知の世界へ — GUTAI 分化と統合」が開催中。宮城県美術館からは大阪中之島美術館に7点、国立国際美術館に6点が貸し出されている。

 この具体展に関してさほど評判を聞かないのは寂しいかぎりであるが、それは、ここが東日本だからというのも多少はあろう。具体のはじまりは兵庫・芦屋で、活動拠点「グタイピナコテカ」は大阪・中之島——今回の大回顧展の2つの会場から、目と鼻の先の場所にあったのだ。
 具体は、中之島の一棟の石蔵から、世界へ羽ばたいていった。東京を経由することなく……

田中敦子《作品 1963 A》。彼女のこの手の作を観ると、元気が出てくる

 具体の旗印のもとに集った作家たちのプロフィールをみると、京阪神の出身者でことごとく占められているのがわかる。
 そのなかで、かろうじて唯一、東日本出身の作家がいる。仙台市生まれの菅野聖子だ。
 彼女がいたからこそ、宮城県美術館に具体コレクションが築かれた。

菅野聖子《アルファからオメガまで I》

 菅野の作品を特徴づけるキーワードは「音楽」「数学」「物理」。
 製図用具の烏口(からすぐち)を用いて、整然と、一糸乱れず線を引いていく。根気のいる反復作業だ。
 その末にできた秩序ある整列は「理系の絵画」の趣を醸す。規則正しいリズムが心地よい。

部分図。なお「菅野」姓は、福島や宮城にとくに多い。なんとなく親しみがわく


 田中敦子、菅野聖子ときた。具体には、女性作家が多い。
 わたしのイチ押しもやはり女性作家で、山崎つる子という。親しみをこめて「つる子さん」と、個人的には呼ばせてもらっている。

山崎つる子《作品 B》
紅白/白黒の斜めストライプは頻出の要素。この上に、思いつくまま色を塗ったり、線を引いたり、かたちを描いたり

 ご覧のとおり、つる子さんの絵は、すごく明るい。
 きっと、いったん話しはじめたら止まらないような関西のおばちゃんだったのだろうな……そんな想像が、もう絵からできてしまう。お目にかかったことはないけれど、そうに違いないだろうと勝手に思っている。
 つる子さんは2019年に94歳で亡くなるまでご存命で、インタビューなどもたくさん出てくる。これを機に読んでみよう……

このサインがなんともいい。いっさい気取らずに「つる子」

 今回のコレクション展示では、上に写真を載せた田中敦子が1点、吉原治良の円相が1点、つる子さんがこの1点、菅野聖子がもう1点で計2点出品されていた。
 ——5点。たったこれだけといえばこれだけなのに、1回分を費やしてしまった……具体のこととなると、つい熱くなってしまうのだ。
 これもきっと、早いうちに宮城県美術館で具体の洗礼を受けたからだろうか。三つ子の魂百まで、である。(つづく


 ※具体について書いた、過去の投稿



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